【レポート】

Googleから提供してもらうモノは検索結果の一部だけ - ヤフー 井上社長

ヤフー 代表取締役社長 井上雅博氏

ヤフーが、そしてYahoo! JAPANが日本のマーケットで成長していくために、今、どの検索エンジンを選べばよいか、その最善の答えがGoogleだった - ヤフー 代表取締役社長 井上雅博氏は、8月2日、東京・六本木にある本社にて開催されたラウンドテーブルにてこう発言した。7月27日に発表されたGoogleとの提携、すなわちYahoo! JAPANのサービス用にGoogleから検索エンジンと検索連動型広告配信システムの提供を受けるというニュースは、業界関係者だけでなく、一般ユーザやAdWords/スポンサードサーチの広告主からも少なからぬ衝撃をもって迎えられた。そういった反響の大きさに対し、井上社長は「ずいぶんと誤解されている部分が多い。実際には表側から見える部分はほとんど何も変わらないといっていい」と言い切る。

以下、井上社長の発言をベースに、今回の提携についてのヤフー側の姿勢を簡単に分析してみたいと思う。

Googleを選んだ理由は?

まず前提条件として重要なポイントなのだが、ヤフーは米Yahoo!と異なり自前で検索エンジンをもたない会社だということだ。実際、ヤフーが他社から検索エンジン技術の提供を受けるのはこれが初めてではない。1998年5月から2001年3月まではgooから、2001年4月から2004年5月まではGoogleから、それぞれ提供を受けていた。現在は検索エンジンとしてYahoo!のYST(Yahoo Search Technology)、検索連動型広告システムとしてYSM(Yahoo Search Market/旧オーバチュア)を採用している。

では今回、なぜあらためてYahoo!からGoogleに変更するのか、というと答えはごくシンプルだ。Yahoo!がYSTおよびYSMの開発を中止し、MicrosoftのBingに移行すると発表したのが1年前だが、それはつまりYST/YSMの技術的向上が図られないということを指す。「ITはつねに動いているべきもの。開発中止が決まった技術をいつまでも日本のユーザに提供し続けることはできない。さまざまな候補を検討した結果、Googleの技術が今のYahoo! JAPANにとって、さらには将来に向けての展開も含めて、いちばん良い選択肢だと判断した」(井上社長)

なお、Googleへの切り替えの時期はまだ決まっていないという。

Microsoftとの提携を進めているYahoo!から横やりは入らなかったのか?

井上社長によれば、今回の提携については当然ながら、事前に米国のYahoo!と十分に話し合いを重ねたという。その結果、「日本のマーケットでYahoo! JAPANが成長していくためには(Googleとの提携が)いちばん良い方法」とYahoo!サイドも十分に納得しているとのこと。資本提携などについても何ら変更されるところはない。

Microsoftが今回の提携に不満を示しているが?

米国でのBingを巡るYahoo!とMicrosoftの提携は、Yahoo! JAPANには直接影響を及ぼさない。つまりヤフーは米国の両社の契約に縛られることなく、Yahoo! JAPANで採用する検索エンジンを選ぶことができる。だが、Microsoftにとって今回の提携が歓迎せざるものであることは十分に予想できる。

Microsoftは27日の発表を受け、すぐにこの提携に関して不満を表明している。同社は「両社の提携により、国内の検索市場におけるGoogle率が9割を超える」とし、公正取引委員会に対して"証拠"を提出する構えを見せている。

これに対し井上社長は「まだ実際にサービス提供を行っていないのに、どんな証拠があるのだろうか」と困惑の表情を見せながらも、「公取委に対してはGoogleからもヤフーからも今回の提携に関しての説明をすでに行っており、問題なしとの回答を得ている」としている。

「Microsoftの技術を選ばなかったのは、MSのどこどこが悪かったからとか嫌いだから、ということでは決してない。最初に言ったとおり、いろいろな方向から複数社を総合的に検討した結果、今回はGoogleに落ち着いたというだけの話だ」と井上社長。「ITの世界はいろんなことが起こる」と続けたが、それはGoogleとの提携も永続的ではないことを暗に強調しているかのようだ(今回の提携は2年契約)。

日本市場の検索エンジンが"Google率9割"となることをどう思う?

「検索エンジンでも、また検索連動型広告システムにおいても、Google率9割という認識はまったくの間違い」と井上社長。

今一度確認しておきたいのは、今回の契約の対象はYahoo! JAPANにおける「ウェブ、画像、動画、モバイルの4領域における、検索エンジンおよび検索連動型広告配信システムのサービス提供」に限るということだ。

まずは検索エンジンについて。単純にGoogleユーザとヤフーユーザを足せばたしかに9割を超えるが、「その足し算に意味はない」という。検索エンジンの提供を受けた後も、GoogleとYahoo! JAPANから得られるユーザエクスペリエンスはまったく別物であることをヤフーサイドは強く主張する。インタフェースも変わらないし、同じエンジンを使っているからといって、検索サービスまでが同じになるわけではないという。

「Yahoo! JAPANの検索結果に表示される情報は、検索エンジンによるものだけではない。また、一般のユーザは、どこからどこまでが検索エンジンの結果なのかをほとんど意識していない」(井上社長)

たとえばYahoo! JAPAN上の検索窓にて"六本木 ラーメン"と入力したとする。その際、右側には検索連動型広告(スポンサードサーチ)が表示され、左側にはYahoo!地図によるコンテンツ、Web検索、さらにYahoo!知恵袋検索、スポンサードサーチ、とつづく。そして今回の提携で影響を受けるのは、Web検索結果の表示に必要な検索エンジン部分と検索連動型広告の表示に必要な配信システム部分のみであることを強調する。

検索連動型広告についても、AdWordsと統合されることはないと断言する。「そもそも配信システムはサービスの一要素に過ぎない。裏側で動いているシステムが変わるだけで、ユーザから見える部分は何も変わらず、またAdWordsとスポンサードサーチが独立したブランドであることに何ら変わりない」(井上社長)

AdWordsとスポンサードサーチでは、それぞれのポリシーや提供するサービスの内容はまったく異なる。たとえばスポンサードサーチは広告主の事前審査を行うが、Googleは基本的に行わず、クレームが付いた時点で取り消しを検討するという方針でいる。これはどちらが良い/悪いではなく、広告主がどちらのポリシーを好むかで決めればよいことである。そしてGoogleの技術提供を受けても、スポンサードサーチのサービスがAdWordsと同じになることはあり得ないし、AdWordsとスポンサードサーチの間で顧客の情報などを共有するようなことは「絶対にない」としている。

AdWordsとスポンサードサーチはまったく別物であり、AdWordsに掲載したければGoogleに、スポンサードサーチに掲載したければヤフーに、という図式は変わらず、逆にAdWordsに出稿したからといって、スポンサードサーチに同時に掲載されることはない。広告主はこれまでと変わらず、別々に出稿する必要があるのだ。

インタレストマッチやディスプレイ広告はどうなるの?

この両サービスは今回の提携でまったく影響を受けない。従来通り、Yahoo! JAPANの配信システムを使って提供される。

オーバーチュアの機能はなくなってしまうの?

実はこの点はまだ検討中らしい。「オーバーチュアの機能をすべて捨て去ってしまうかどうかはまだ決めていない。残せる部分もあるかもしれないが、まだ未定だ」と井上社長。オーバーチュアからGoogleへの変更について、技術的な難易度はたしかに否めないという。ただしGoogleは日本語サービスの実績が豊富であり、その面では、日本語の実績がまったくなかった「Panama」に比べると楽な部分ではあるそうだ。もっとも「簡単な仕事ではないと認識している」と今後のサービスインに向けて、いくつか難題が残っていることを覗かせた。

***

Yahoo! JAPANとGoogleが同じ市場における競合関係にあることは何も変わらない - 何度か繰り返されたこのフレーズに象徴されるように、どうもヤフーが今回の提携で強調したいのは、この"変わらない"ことのようだ。Yahoo! JAPANは自他共に認める日本最大のインターネットポータルであり、検索広告市場においても大きなシェアをもつ。それだけにその巨大サービスを支える技術がGoogleによって提供されるとなると、競合は独占を恐れ、ユーザは使い勝手が変わってしまうことを恐れるのは当然といえば当然だろう。この不安をサービスインするまでに、もしくはしたあとに、どこまで払拭できるのか。ヤフーはGoogleとの違いを、これまで以上に外に向かって鮮明に打ち出していく必要が生じたといえそうだ。

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