【インタビュー】
統計学はシステムトレードにどう有効なのかー。このテーマに関し、トレードシステムを開発するインディ・パ 代表取締役の本郷喜千氏と、統計学を使ったトレードシステムの選び方についての著書のある山本克二氏に対談してもらった。3回にわたり、その内容をお届けする。
まず簡単に、両氏のプロフィールを紹介したい。本郷氏は、マーケットの統計解析と確率論を元にトレードを行うインディ・パ代表。システムトレードに関するセミナー、シグナルプロバイダー養成スクール運営、ソフトウェア開発、シグナル配信、ファンド運用を行っている。Twitterアカウントは、「yoshiyuki_hongo」。
一方、山本氏は、システム開発、統計解析の専門家で、FXや先物など、さまざまな投資対象についてシステムトレードという切り口で研究している。FXブログ「システムトレード研究室」を運営。著書に『使える売買システム判別法 確率統計で考えるシステムトレード入門』(パンローリング)、『らくらく儲ける! しっかり儲ける! FX自動売買入門』(あさ出版)などがある。
以下では、本郷氏と山本氏に、まずシステムトレードの潮流やシステムトレードに関わるに至った経緯などについて話を聞いた。
――お二人はすでに数回お会いになられているとのことですが、お知り合いになった経緯を教えてください。
山本 私の著書である「使える売買システム判別法 確率統計で考えるシステムトレード入門」に載せるキャプチャー画像の掲載許可を、ある海外企業にお願いしたのですが、その時本郷さんがその企業の日本での代理店をなさっているということで、それが縁で初めてお会いしました。
そこで、インディ・パさんが実は、確率・統計をベースにしたシステムトレードに関して研究されているとお聞きし、お互いの関心が近いことが分かり、それからもう何度もお会いしています。
本郷 山本さんが確率・統計をベースにお仕事されている方なので、非常に刺激になります。当社は確率・統計に基づいてシステムを作る側なんですけど、山本さんはシステムを評価する側なので、評価される側からすると、評価する側はどういう視点なのかな、と非常に面白いんですよね。
――なるほど。確率・統計を通じて意気投合されたわけですね。お二人とも、システムトレードに深く関わっているわけですが、システムトレードの発展の歴史というのは、どのようなものだったのでしょうか。
山本 システムトレードにはすでに何十年という歴史があり、それは主に米国の先物市場においてです。ヘッジファンドの運営のためにコンピューターを利用して、より精密な資金運用をしていくというような流れの中で発展してきました。
資金の運用は、人間の感情というか、集団心理的なものとかによって影響されるものですが、それを逆手にとって、コンピューターがシステマティックにやることで、そういうもの(感情や集団心理)の引き起こすリスクを回避することを目的に、システムトレードが行われるようになりました。
20年ほど前から、特に欧米において、研究が盛んになってきました。
――発展の歴史は、長いんですね。
山本 それに対し、システムトレードという言葉が日本で一般的に聞かれるようになったのはほんの数年前のことです。欧米とのタイムラグが生じた理由は、いろいろありますけれども、主に法的な面で、証券会社とか、FX会社とかが、とりいれられなかったことがあると思います。
私も裁量トレードをやっていたのですが、限界を感じて、コンピューターを使うようになり、売買のシグナルを出すようなものを作りながら、過去の研究者が研究してきたものを勉強したくなりました。その勉強をしながら、勝てるシステムを作ることに熱中していったのです。
ですが、自分自身で作っても、トレードの基本は分散投資ですから、自分で作った物だけでは足りないんですね。世の中には非常に優れたシステムはいっぱいあるので、「いいものを選ぶ目」があれば勝てる、その選ぶという分野に自分の立ち位置を移して、集中して研究を始めました。
――本郷さんが、システムトレードに関わるようになったのは、どんな経緯だったのでしょうか?
本郷 私はもともと、ファンドを運用する会社にいましたので、そのノウハウを使って独立したんですよね。それ以降、ファンドを組成したり、運用したりするという仕事をやってきたのですが、次に何をしようかなと思ったところで、システムトレーダーの人と会って話を聞くうちに、これは面白いなぁと。
自分でも研究するようになって、ソフトやシグナルを出していくうちに、システムトレードのプラットフォームを提供する海外の企業から声がかかって、日本でプラットフォームを広めてくれないかと依頼があったので、お受けしました。
――さきほどもお話に出た著書(「使える売買システム判別法 確率統計で考えるシステムトレード入門」)に関する取材の中で、山本さんは日本のシステムトレードは、ようやく"黎明期"を迎えているとおっしゃっていました。
山本 黎明期を迎えたと言ったのは、やっとここで本格的なシステムトレードができるような環境が整ってきたという意味です。黎明期の後は成長期が来ると思いますが、現在は、いよいよ成長期の入口にさしかかっているという感覚を持っています。
そういう意味では、世界レベルのシステムプロバイダーが日本にも出てきたところで、これからどんどん増えてくると思います。
本郷 私も、日本ではこれからだと思っています。8月からレバレッジ規制も始まり、裁量でやってても資金効率がどうしても落ちますので。人間がPCの前に張り付いているには、体力的、精神的に限界があり、それを補う意味もあって、24時間疲れ知らずで動くシステムが必要なわけです。
チャンスを逃さず、24時間見ていられるのは機械しかないので、必然的にそういったところ(システムトレード)に目を向ける層が増えるのではないかと思います。
――レバレッジ規制が、システムトレードに追い風になるということですか?
本郷 "超追い風"ですね。ビッグ・ウェーブというか。
――資金効率という点からなのでしょうか。
本郷 会社勤めの人が仕事後に1時間しかトレードできないとします。例えばこの人がレバレッジ240倍で1日1時間トレードをやっているとすると、システムトレードだと24時間見ていられますから、単純化すると、レバレッジは10倍でもいけるはずです。
もう一つの理由は、人間は感情があるので、どうしてもロスカットできない。1回の失敗で退場する人もいる一方、オーバーポジションでやる人もいる。機械にはこうしたことがありません、知らないうちにロスカットしてくれるわけですから。口座資金が全額減るリスクに気付いた人から、徐々にシステムに移行していくのではないでしょうか。
システムトレードの意義について熱く語ってくれた本郷氏と山本氏。次回の「中編」ではいよいよ、統計学とシステムトレードの関係について、話していただいた内容を紹介する。
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