いま、国産家具メーカーの「カリモク」がおもしろい。新ブランドとして発表された「KARIMOKU NEW STANDARD」が2009年の100% Design TokyoにてGrand Awardを受賞、2010年のミラノ・サローネにおいてはインスタレーション形式による展示を試み、好評を博した。

2010年のミラノ・サローネにおいて行われたインスタレーションの様子 photo:Takumi Ota

その背後に見え隠れしているのはブランド名にも冠される「スタンダード」というコトバ。創業から培われたカリモクのスタンダードとニュースタンダードの位置関係は、なにやらカリモクの価値観と深くかかわっているとのこと。いま、カリモクに何が起こっているのか。2回に分けてお送りする本レポート、前編は副社長である加藤氏と、外部から迎えたクリエイティブ・ディレクターの柳原照弘氏に伺ったKARIMOKU NEW STANDARDについてのインタビューをお届けする。

加藤洋 Kato Hiroshi

1966年、愛知県生まれ。京都大学農学部卒業後、ジョージワシントン大学にてMBA取得。三菱商事株式会社勤務を経て、刈谷木材工業(現カリモク家具)株式会社入社。現在、カリモク家具株式会社副社長。
http://www.karimoku.co.jp



人の手が生むカリモクの「信頼」

創業以来、木製家具にこだわりを持ち続けてきカリモクにとって、KARIMOKU NEW STANDARDは、ひとつのトライアルであり、自然な帰着点でもあった。デザイナー兼クリエイティブ・ディレクターに柳原照弘氏(ISOLATION UNIT/)を社外より迎え入れ、国内外のデザイナーによる作品をカリモクの新ブランドとして発信する。それは、カリモクが培った経験を、社会や未来に繋げていくための「架け橋」として位置づけられている。

「カリモクは創業から木製の家具を作ってきたメーカーです。それゆえ、環境も鑑み、社会貢献を含めたモノづくりを実現したいという想いがありました。ライフスタイルも多様化し、カリモクも新たな一歩を踏み出さなければならない。そこがKARIMOKU NEW STANDARDのスタートラインです」(加藤)

江戸時代から続く木材屋を継いだ加藤氏の祖父が、1940年に愛知県刈谷市に木工所を創業。ミシン台から鉄砲の柄といった木製部品製造を請け負いながら、アメリカ向けの家具部品の受注製造を経て、60年代に国内向けの家具生産を開始する。現在は、国内の生産と職人の手作業にこだわりながら、木製家具のトップメーカーとして家具を生産し続けている。

ひとつひとつ人の手を介して丁寧に生産されるカリモクの家具

「作業工程において任せられる部分には機械を使います。とはいえ、やはり人の手がなければ成立しません。家具は日常の生活にダイレクトに関わるものであり、『信頼』は人の手によって創られていくものです。社内では『ハイテク&ハイタッチ』と呼んでいますが、あくまでも"人"を中心に据え、質を保ちながらいかに効率を上げていけるのか。そこは常に意識しているところです」(加藤)