2010年7月28日から30日までの3日間、東京ビッグサイトにてマイクロナノ(マイクロマシン/MEMS関連)分野の産業交流を効果的に推進するための見本市と各カンファレンス「マイクロナノ 2010」が開催されている。同イベントは、国際マイクロマシン・ナノテクシンポジウムなど複数のカンファレンスと「第21回 マイクロマシン/MEMS展」「ROBOTECH 次世代ロボット製造技術展」の2つの見本市によって構成されている。また、両展示会と併催の形でめっき・塗装・熱処理などの表面処理技術の展示会「SURTECH2010」も開催されている。今回は、「第21回 マイクロマシン/MEMS展」と「ROBOTECH 次世代ロボット製造技術展」で興味を惹いた展示物などをレポートしたい。

会場風景

3つのサービスを展開するDNP

大日本印刷(DNP)のブースでは、同社が提供する「ファウンドリサービス」「MEMSパッケージサービス」「TSV」の3つの技術サービスの紹介が行われている。

同社のMEMSファウンドリサービスは150mmもしくは200mmウェハ1枚からでも対応するというもの。試作から開発、量産までのサポートをうたっており、フォトマスクも内製のため、機密の確保が容易となっている。2001年からの加工実績を有しており、その数は国内外100社以上に達するという。

今回は、新たなサービスとしてモールド受託加工サービスの紹介やマイクロ流路チップ受託加工サービスの紹介も行われていた。モールド受託加工サービスは、同社のナノインプリント技術で培った高精細モールド、もしくはフォトマスク製造で培った高精細かつ高アスペクト比のモールドを提供するというもの。一方のマイクロ流路チップの方は、「ガラス/Si/ガラス」の3層流路チップを提供するというものだが、Si/ガラス、Si/樹脂などの異種材料の組み合わせなども可能となっているほか、開発中の技術として、将来的には流路内への電極や配線配置も可能になる予定とのこと。

ワイヤボンディングに代わる技術として期待され、各所で開発が進められているTSV(Through-Silicon Via)だが、同社が紹介していたのは、同社の標準デザインを活用し、TSV評価のための必要な機能をすべて含んだTEGや、WOWアライアンスでの共同開発成果を活用したTSV付き配線基板。TEGの方は150mmおよび200mmウェハを用意。現在、ダマシンプロセスを活用することで、微細配線を実現した標準TEGの開発を進めているという。また、配線基板の方は、接着加工、穴開け加工、めっき加工技術を融合させた薄化ビアラスト加工フロー(ガラスサポート)を開発しているほか、やはりダマシンプロセスを活用したCu狭ピッチ再配線、両面バンプ、薄膜受動部品(IPD)なども開発を行っており、こちらはWOWアライアンスにおいて今期中に開発のめどをつける計画としている。

150mm(左)と200mm(右)のTSV付き配線基板ウェハ

300mmウェハのTSV基板

200mmウェハによるメモリスタック3D積層基板

1枚ではなく1チップでも対応するアルバック

アルバックブースではDNPブース同様、MEMSファウンドリサービスの紹介などが行われている。同社は、2009年に本社茅ヶ崎工場に新設した新C棟と呼ばれる工場にMEMSファウンドリラインを新規に敷設、サービスの強化を図っている。同社のMEMSファウンドリサービスはユニークで、ウェハは50mm~200mm、200□mmと幅広く、かつ1枚から対応することはもちろん、なんと1チップからでも膜を形成することが可能だという。

そのため、主に量産向け活用というよりも、試作や開発、基礎研究などでの活用も行われており、「よそで断られたカスタマが最後に駆け込んでくる」(説明員)ということも多いという。これは、同社が製造装置メーカーで、自社でスパッタリングやドライエッチング、PE-CVDなどのMEMS対応装置を提供し、そうした各種工程に精通していることも、そういったカスタマの要望に応えられる要因になっていることが背景にあるためと見受けられる。アルバックでは、「こうしたよそにできないことでも我々ならできるかもしれない」(同)とアピールしており、「もちろん出来ないこともあるが、困ったときには何でも相談してもらえれば、最善の努力で応えたい」(同)とMEMS開発の駆け込み寺的な役割を担えればとしている。

アルバックが紹介している自社のMEMSファウンドリサービスを活用したデモウェハ

ダイヤモンドで新たな活用方法を模索

オリンパスブースでは、自社の測定装置のほか、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)用カンチレバーの紹介などが行われている。

カンチレバーは半導体プロセスを用いて、Siを材料に作られるのが一般的で、同社ブースでも新標準シリコンカンチレバー「OMCL-AC160TS-R3」が展示されているが、同様にTipView構造を採用したカーボンナノファイバ(CNF)製探針「OMCL-AC160FS-B2」や研究開発中としてダイヤモンドの単結晶を用いたシリコンカンチレバーの紹介が行われている。

すでに、一部の大学や研究機関などには有償でサンプル提供を行っているというが、ここで注目なのは、これまでもDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)を用いたカンチレバーはあったが、単結晶で形成したカンチレバーはなかったということ。DLCは表面がDLC化されていただけで使用していれば、それが剥げ落ちることとなる。単結晶のダイヤモンドであれば、削れてもダイヤモンドのままであり、さまざまな用途で活用することが可能となる。

カンチレバーは、一般的にアスペクト比の高い、つまり探針が長い方が正確なトポログラフィが得られるが、このダイヤモンド探針は先端の直径が10~20nmと従来のμmオーダーよりも桁違いで細いにも関わらず、探針の長さはSi製に比べて6倍程度長いという特徴を有しており、カンチレバーとしての活用のほか、「"ナノインデンテーション(硬度測定)"などの分野で大きな変革が訪れる可能性がある」(説明員)とのことで、物理加工分野でも活用が期待されるとしており、同社としても新たな使い方をしたいという声があれば、ぜひ相談してもらいたいとしていた。

左の写真が実際のカンチレバー(左からSi製、CNF製、そしてダイヤモンド製)。右はパネルだが、それぞれのカンチレバーの尖端形状の様子が見て取れる