【レポート】

MediaTekとNTTドコモ、LTEに関するライセンス締結を発表

既報の通り7月27日、台湾MediaTekは都内で記者発表会を開き、同社がNTTドコモからLTE-PFのライセンスを受けたことを発表した。

Photo01:MediaTek会長兼CEOの蔡明介氏。元々同社はCD-ROMドライブのコントローラチップの製造を手がけていたが、そこから様々な民生機器向けのコントローラを手がけるようになり、デジタル家電向けの大手コントローラベンダになっている

まず挨拶に立った蔡明介(Ming-Kai Tsai)会長が簡単に同社の生い立ちや方向性を紹介した。同社はもともと民生機器向けデジタル家電に強いベンダであり、特に昨今のデジタルTVやその前のDVDプレーヤ/レコーダでは圧倒的なシェアを持っている。またAnalog Devices(ADI)の携帯電話チップセットの製品ライン買収後は、同分野でも非常に強いポジションに居る(Photo02)。

同社の場合、中国の携帯電話機メーカーとの関係を強化しており、この中国の携帯電話機メーカーが世界中で製品を売り始めたことで、自動的にMediaTekの製品も世界中で使われることになった、という訳だ。もっとも日本マーケットでは、デジタル家電向け製品は多く利用されているが、携帯電話向け製品は殆ど採用例が無い(Photo04)。

Photo02:こうした製品ポートフォリオの大半はM&Aによって多くの企業を買収することで実現したものでもある

Photo03:中国のメーカーはアフリカや南アメリカなどの地域で圧倒的に強いが、そうした地域ではまだ3Gより2Gが主流ということもあり、必然的に2Gのマーケットシェアは業界トップとなっている。3Gに関しては比較的先進国が多い関係もあり、現状ではQualcommがトップ、MediaTekが2番手という位置にある

Photo04:日本では新横浜に営業所、秋葉原にR&Dセンターがあるが、R&Dセンターの方は同社が過去に買収したNuCore Technologyのものを引き継いだ形だ

さて、今回の発表はこのMediaTekがNTTドコモよりLTE-PF(LTEプラットフォーム)のライセンスを受けたというものだ(Photo05)。これを受けて次にNTTドコモの三木俊雄氏が登壇、簡単にLTE-PFについて紹介を行った(Photo06)。元々LTE-PFは同社と富士通、NEC(現NECカシオモバイルコミュニケーションズ)、PMC(パナソニックモバイルコミュニケーションズ)の4社で共同開発を行ってきたもので、2009年10月にはエンジニアリングサンプルの開発が完了したことがアナウンスされている。LTE-PFは既存の携帯電話をベースに、LTE拡張部だけを追加したような構造になっており、この部分を今回MediaTekにライセンス供与する形となっている。もっとも両社共に、今回の提携をベースに、さらに関係を深めたいとしていた(Photo08)。

Photo05:これについては「現状はまだライセンス締結を終わったばかりの段階で、具体的な製品のロードマップはこれからであり、現状ではお話できるレベルにない」と質疑応答の中で蔡明介氏より説明があった

Photo06:NTTドコモ 移動機開発部長の三木俊雄氏

Photo07:LTEそのものは最大で300Mbps程度までを視野に入れており、NTTドコモはこれをベースに100Mbps程度までのサービスを行う形

Photo08:IOTは相互運用性試験(InterOperability Test)の略

Photo09:MediaTek副社長のCheng-Te Chuang氏

最後にMediaTek副社長のCheng-Te Chuang氏が登壇、MediaTek側からの見方をもう少し説明した。まずLTEパートナーとしてNTTドコモを選んだ理由としては、日本で最大のキャリアであり、かつLTEのマーケットでも第一集団に居ること、また技術的な蓄積や投資が大きいことを挙げた(Photo10)。MediaTek自身は上でも簡単に紹介した通り、ADIのチップセットをベースに2G/3G向けの製品ポートフォリオは充実しており、ここにLTE-PFベースのLTEを実装することで、3.9G~4Gに向けた製品展開を強化してゆくとの事であった(Photo11)

Photo10:2007年からLTEの実証実験をスタート、今年6月からは試験運用を開始しており、年内に商用サービスを開始するといった形で、第一集団に居ることは間違いない

Photo11:WCDMAとかGSM/GPRS/EDGEなどはADI時代のポートフォリオがメインだが、その上のHSPA/HSPA+といった3.5Gに関してはMediaTek買収後に追加された部分となる。またConnectivityやPeripheral、MCUなどは同社が手厚い製品ポートフォリオを有している部分でもある

MediaTek、NTTドコモそれぞれのメリット

というあたりが発表会で説明のあったほぼ全てであり、ここからもう少し分析をしてみたいと思う。まず今回のMediaTek側のメリットは比較的判りやすい。同社はファブレス半導体企業として世界第4位、携帯電話向けチップセットとしては世界第2位の会社であり、相応のR&D投資も行っているが、いかんせん製品ポートフォリオもかなり膨らんでいるから、1分野あたりのR&D金額をそう多くすることは出来ない。しかもライバルであるQualcommはすでにこの分野に向けてかなりのR&D投資を行っており、これにまともに対抗するには時間もコストも掛かりすぎる。NTTドコモからLTE-PFのライセンスをうけることで、少なくとも時間に関しては大幅に節約できることになる。

またMediaTekは上にも書いたとおり、日本の携帯電話向けには殆どプレセンスが無い。最大の理由は、チップセットまで手がけるメーカーが日本には多数あり、しかも各社は自社製造のチップセットを使って携帯電話を作っていたから、参入の余地が無かったわけだ。ところが昨今は、たとえばHTCがAndroid携帯を供給するといった具合に参入の余地が多少生まれてきており、しかも今回のLTE-PFのライセンスを皮切りに、将来IOT活動への参加などが実現するとすれば、LTE向け端末チップセットとしてNTTドコモのお墨付きがついた形で参入する余地が生まれることになる。こうした形でもしLTEチップセットを国内の端末メーカーに供給するような契約が締結できれば、そこから今度は3G向けの低価格チップセットの採用なども実現する可能性がある。こうした部分も魅力であろう。

一方のNTTドコモは?というと、まず短期的なメリットは(質疑応答の中で三木氏も認めていたが)ライセンス収入であろう。LTE-PFの開発に関する詳細は明らかにされていないが、NTTドコモがそれなりに各社の開発費を負担しているはずで、こうした出費のいくらかを賄えるのはありがたいことだろう。ただしそれよりもむしろ長期的なメリットとして、MediaTekが世界中で端末を売っている経験を生かせる可能性が重要視されたのではないか、と筆者は考える。昨今ではガラケー扱いされる日本の携帯電話だが、それを一番痛感しているのは他でもなくNTTドコモを始めとするキャリアである。NTTドコモ自身も国外展開を早くからチャレンジしているし、ドコモと付き合う携帯電話メーカーも同じである。MediaTekのチップセットを使う事で、世界中で売りやすい製品が出来るとすれば、これは非常に大きなメリットといえるだろう。

もっとも、こうした動きは当面は出てこないだろう。蔡明介会長が強調する通り、現状はまだライセンス提携を結んだばかりである。これに基づきMediaTekに技術供与が行われ、これをMediaTekが評価して対応チップセットを作るまで早くて1年、実際には1年半位の期間は必要だろう。これを端末メーカーが入手して評価、製品にするにはさらに1年程度を要すると思われる。そう考えると、実際にMediaTekのチップセットを搭載する製品が出てくるのは早くて2012年、実際には2013年あたりではないかと思われる。

もっとも現状LTEを必要とするユーザーは極めて限られるだろう。要するに今のHSPAとかあるいはWiMAXよりも早い帯域を必要とするユーザーにしか意味が無いわけで、そうなると携帯というよりはUSBドングルあるいはポータブルWi-Fiルータの様な形のニーズの方が高そうだ。それにLTE-PFの策定を行った富士通/NECカシオ/PMCの各社も当然LTE-PF対応チップセットを作っていると考えるべきであり、2010年~2012年あたりまではこちらのメーカーが提供するチップセットで国内需要は足りるだろう(恐らく当初はハイエンド機種のみがLTE対応となる思われる)。MediaTekのチップセット必要となってくるのは、普及帯向けにもLTEが入る時期とか、国外展開の動きが出てくるあたりであろう、と思われる。そうした長期的展開が興味深くなる発表であった。

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