ダイキン工業は7月14日、同社が開発したストリーマ放電技術が、レジオネラ属菌などの水中に存在する菌に対して、除菌効果があると発表した。水中のレジオネラ属菌を24時間で99.99%以上、分解/除去することを実証。ぬめりや臭いの素となる水中の大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌に対しても除菌効果があるという。

ストリーマ放電技術は、2000年から研究に着手、2004年に実用化に成功した技術。一般的なグロー放電と比べて、同じ電力あたりの酸化分解力が1,000倍以上という高い高速電子を、安定的かつ広範囲に発生させることで、空気を清浄することができる。除菌効果のほか、花粉やダニなどのアレル物質分解効果、アンモニアやホルムアルデヒドなどの脱臭/有害ガス分解効果があり、2004年以降、同社の空気清浄機の基幹技術として搭載されている。2009年には、世界で初めて、強毒性ヒト由来鳥インフルエンザウイルスA型H5N1および新型インフルエンザウイルスA型H1N1への100%分解、除去効果を実証し、話題を集めた。

ストリーマ放電技術とその他の放電技術の違い

高速電子が空気中の酸素や窒素と衝突すると、強力な酸化分解力をもつ"活性種"になる

水中の菌の除菌には、塩素剤などの投入のほか、加熱や紫外線での除菌、水が入った容器の樹脂に銀などの薬剤を練り込むことなどで対応することが一般的だったが、薬剤の残留や、除菌効果が限定的という課題があった。

今回、ストリーマ放電で生成した活性種を水中に送り込むことで、水中の菌の除菌や、水のぬめりや臭いの発生源となる菌の発生を抑えることができる効果が示されたという。

ストリーマ放電技術による水の除菌は、他の方法に比べても安全で効果が高いと言われている

実験では、臨床検体からレジオネラ属菌を分離、培養。ストリーマで生成した活性種を空気ポンプで、レジオネラ属菌を入れた容器に1時間から24時間照射。照射後のレジオネラ属菌と未照射のレジオネラ属菌を48時間培養。培養後にコロニー数を計測し、ストリーマ放電の効果を検証した。

照射前には棒状だったレジオネラ属菌が、照射1時間後には細胞の表面が酸化分解されはじめ、照射24時間後には、水中では球状に変化し、完全に酸化分解され、菌の繁殖性を抑えたとしている。

同社では、空気中に放出されたストリーマ活性種が、水面に付着し水中に浸透。水中に溶解したストリーマ活性種が水中の菌表面に付着することで、細胞を酸化分解し、菌の繁殖性が失われているものと考えているという。この際、ストリーマ活性種は、安全な酸素、水分子に戻るという。

実験の概要。菌を入れた液体にストリーマ放電し、除菌レベルを測定した

実験に使われた装置

照射前と照射後のレジオネラ属菌の変化。棒状の菌がまるくなっている!

実験結果に対するダイキンの推定

水中のレジオネラ属菌に対しては99.999%以上の分解/除去効果が!

レジオネラ属菌だけじゃなく、大腸菌や黄色ブドウ球菌にも効果あり!

実験を行った東京慈恵会医科大学 医学部 医学科 臨床検査医学講座准教授、総合医科学研究センター臨床医学研究所副所長の保科定頼氏は、「24時間経過した時点でコロニーがゼロになった状態にはさすがに驚いた。慌ててすぐに携帯電話で連絡したほど。化学物質による除菌では残留問題などがあるのだが、残留がない活性種を活用することで、殺菌、滅菌が図られる。厚生労働省の認可を受ければ、病院内での清掃などにも活用でき、院内感染を抑えるといったことができるだろう。そこまでいけると期待している」とした。

また、ダイキン工業 空調生産本部 先行要素技術グループ主任技師の岡本誉士夫氏は、「ストリーマ放電技術が、空気だけでなく、水にも適用できる可能性が広がったことで、より幅広い生活空間での応用が期待できる。実用化に向けてさらなる研究開発を進める」としている。

同社では、具体的な商品への展開などについては、現時点では明らかにしていないが、今後、商品への適用を検討していくことになるという。

「当社が持つ加湿機能付空気清浄機や給湯器などへの搭載のほか、用途を広げて搭載を考えていきたい。家庭用から業務用までを視野に入れて、展開できる技術だと考えている」(岡本氏)とした。

東京慈恵会医科大学 医学部 医学科 臨床検査医学講座准教授、総合医科学研究センター臨床医学研究所副所長 保科定頼氏

ダイキン工業 空調生産本部 先行要素技術グループ主任技師 岡本誉士夫氏

また、ダイキンでは、外部の協力機関、有識者とともに、ストリーマ放電技術の進化や効果の実証、活用領域の検証などを追求する場として、「ダイキン・ストリーマ技術・ソリューション・フォーラム」を発足。ダイキンからは、環境技術研究所の稲塚徹所長など3人が参加。外部からは東京慈恵会医科大学 医学部 医学科臨床検査医学講座 保科定頼准教授、聖徳大学大学院 人間栄養学研究科 加納和孝教授など、7人が参加するという。