100万円の懸賞金をかけた宝探しイベントが神奈川・城ヶ島で開催されたのは2010年の春。そして、そんな夢のような企画を実施したのは、日本で唯一"宝探し専門"を謳う会社・ラッシュジャパンだ。"宝探し専門"って一体? 果たして儲かるのか!? 謎に包まれたこの会社。 "赤い鳥海賊団 船長 海賊王のタカシ"を名乗る、同社代表取締役・齋藤多可志氏が、その全貌を明かしてくれた。

ラッシュジャパン代表取締役・齋藤多可志氏。同社の名刺裏には、"海賊"としての肩書が書かれており、遊び心満載。齋藤社長の肩書は"赤い鳥海賊団 船長 海賊王のタカシ"

宝探しビジネスってなんだ?

4月24日、神奈川県三浦半島の南端に位置する城ヶ島を舞台に行われた、100万円の懸賞金をかけた宝探しイベント「タカラッシュ! GP(グランプリ)」。これは、暗号だらけの宝の地図を手がかりに、実際に島中を廻って隠された宝物を探し出すというもので、参加者の中で一番早く宝を見つけると、賞金100万円が手に入る。

1969年福岡県出身。1993年、上智大学文学部卒業後、旅行会社JTBに入社。トップセールスマンを経験する。2001年にJTBを退社し、「赤い鳥プロジェクト」を発足。宝探し事業を開始した。その後、2003年にラッシュジャパンを設立し、現在に至る

そんな、おいしいイベントをプロデュースしたのが、件の会社・ラッシュジャパンだ。「合コンで、宝探しの会社やってます、なんて言うと、多分、『この人頭大丈夫かな?』って表情されちゃいますよね(笑)。徳川埋蔵金を探しているのか、とか……イメージがわきにくいみたいで、いつも説明を理解してもらうのに、30分くらい掛かるんですよ」。そう苦笑しながら、齋藤社長は「私たちは、宝ものを探すのではなく、隠す方。私たちが隠した宝物をお客様に探していただいて、楽しんでいただく。そんな、リアル宝探しイベントのプログラムを自治体や企業に提供するのが、ウチの仕事なんです」と、同社について説明してくれた。

――「タカラッシュ! GP」のような、宝探しイベントを専門にしたビジネスをやろうと思ったのはどういう経緯があったのですか?

齋藤社長「子どもの頃、宝探し遊びをしていたという事もあるのですが、前職(大手旅行会社に勤務)でやったのがウケたことが動機のひとつですね。ビジネスをスタートさせた10年前は、(宝探しは)誰もやったことがない業界でしたから、これはめちゃくちゃ儲かるぞ、と(笑)。夢に乗っかって、サークルみたいなノリで始めた面もありますね。今入ってきている新入社員たちも、自分を試せそう、といった思いで入ってきてくれている人が多いようです」。

――ビジネスはすぐに軌道にのったんですか?

齋藤社長「それが、(宝探しイベントの)商品認知もないものですから、当初はなかなか興味を持ってくれるところもなく、うまくはいきませんでした(苦笑)。この10年じっくり地道にやってきて、団体にも世間的にも、今やっと認知されつつある状況につながったと思っています。宝探しの認知を高めるために、(同社の宝探し情報サイトの)会員を増やして地盤固めをして、多くのみなさんに長く楽しんでいってもらいたいと考えています」。

ラッシュジャパンのオフィスに入ると、入口近くには大小様々な宝箱を所狭しと飾ったコーナーが。まさに"宝探し専門会社"に相応しい雰囲気だ

――なるほど。ところで、一体、どういうビジネスモデルになっているのだろうというのが大きな疑問なのですが。

齋藤社長「『タカラッシュ! GP』から考えると分かりにくいかもしれませんね。実はあれは、宝探しイベントの認知度向上のためにプロモーション目的で行ったという側面が大きく、まだビジネスとしては成り立っていないんです。タカラッシュ! GP以外に、たとえば2009年には35カ所ほどで宝探しイベントを行っていますが、現時点ではB to Bのビジネスになっていて、多くの場合、全国の地域の自治体と組んで企画し、お金を出していただいています。また、お客様に500円~1,000円程度の参加費をいただいているイベントもあります。イベントに参加して宝探しの面白さを知っていただいた人が、"もっと他にも何かないの?"と、あちこちのイベントに足を運んでくれるようになる。そんな人が増えると、イベントを行う地域では、多くの人が訪れることに喜んでくれて、"宝探し"というイベントの需要が日本中で高まってくる。そうすると、私たちは商売になる。それから、次のステップとしては、"宝探し"という遊びに高いお金を払ってでも参加したいという人に訴求する、B to Cのビジネスを展開していきたいと考えています。それが、このビジネスの全体としての構想ですね。これらを実現するためには、もっと広く認知してもらわなければと考えています。ビジネスとしては、まさにこれから、というところですね」。

愛知・犬山村の明治村で現在実施中(7月25日まで)の謎解き宝探し『明治探検隊』など、全国各地で宝探しイベントを実施。最近では、企業の労働組合の運動会の代わりに宝探しイベントを行う、といった需要もあるのだとか

城ヶ島で行われた「第1回 タカラッシュ! GP」の様子。同企画によるプロモーションの甲斐あって、同社の宝探し情報サイトタカラッシュ!の会員登録数は、イベント後8万人を突破したという

――新たなステップへ進むには、まだまだ認知が必要なのですね。

齋藤社長「そうです。宝探しという遊びは、子どもの遊び、あるいは徳川埋蔵金とか、SFに近いイメージだったり、大人が本気で関わるものじゃない、という認識が一般的だと思うんです。しかし、私たちが手がけていきたいのは、"大人が本気で楽しめる宝探し"。子どもの遊びというイメージから脱却して、"宝探し"という遊びが、映画を見たり、旅行へ行ったり、そういった娯楽の選択肢の1つになっていってほしい。『~で宝探しやってるらしいから、ちょっと行ってみる?』みたいな……。また、大人の方に楽しんでいただきたいということで、18才未満だけの参加はNGという形でイベントを組ませていただいています」……続きを読む。