【レポート】
「Autodesk Presents Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010+After NAB 2010」にて、ライトストーム・エンターテインメント(Lightstorm Entertainment)のノーラン・マーサ氏による「傑作に至るまでの道程」と題した講演が行われた。
ノーラン氏は2004年からプレビジュアライゼーションに携わり、VFXシークエンスなど、映画の制作工程に関わってきた。2005年からは極秘プロジェクト『880』に参加。このプロジェクト『880』はジェームズ・キャメロン監督が招集したもので、ビデオゲームのテクノロジーを用いて、映像をバーチャル制作するという画期的なもの。そのベーステクノロジーとして採用されたのがオートデスクの「MotionBuilder」だったそうだ。MotionBuilder採用の要因となったのは、「デジタルで作成されたキャラクターやセットの取り扱いをポストプロダクションの段階まで待つのではなく、パイプラインに取り込んでMotionBuilderのなかで完結させてしまう」という部分。視覚効果やその他のVFX効果がMotionBuilderで完結することによって、監督のイメージをより具体化し、制作の効率化が図れるという。
講演では、実際にノーラン氏らが行ったバーチャル映像制作の作業工程がまとられたビデオクリップが上映された。映画『アバター』のためにジェームズ・キャメロン監督が描いたイメージをMotionBuilder等のツールを駆使し再現、バーチャルカメラなどの技術を用いてカメラアングルを決めていく。このような一連の流れが映像で紹介された。
ビデオクリップ上映後、ノーラン氏からどのようなプロセス、どのようなシステムを構築してバーチャル制作が行われたのか解説があった。氏はバーチャル制作を行うに当たり、同じアセットに対して複数の解像度のバージョンのデータを用意しておくという基本原則を策定したという。カメラアングルによって遠方に映るキャラクターは低解像度、逆にクローズアップされたシーンでは高解像度のものを使用するなど、解像度の異なる映像を使い分けて制作を進めたそうだ。また、もうひとつの基本原則としてすべてのアセットに対して様々な制作者間で相互利用ができるようにスケルトンやポジションのマトリクス等の情報を持たせたという。それによって、低解像度のアセットからスケルトンのデータを参照し、高解像度の映像を作り込んでいくという具合で作業効率の向上が図られた。MotionBuilderを中核に、確固としたデータを有したアセットを、実際にMotionBuilder内で動かし、確認しながらシーンファイルを形成していくといったプロセスを経て『アバター』は完成した。この手法に従って制作を進めたことで、優れた柔軟性を実現しながら各種のシーンを作成できたとノーラン氏は語る。
「シーン制作に関して、キャラクターについては各種アセットに含まれたスケルトンの情報を、地形の起伏はジオメトリー情報を、そしてジェームズ・キャメロン監督の意思が込められたカメラファイルはデータの改変を行わない」というノーラン氏の言葉から、あくまでも、監督のイメージをより具体化するという制作思想が貫かれた制作スタイルであるということが窺えた。システム面についても制作期間中にブラッシュアップが図られ、非常にパワフルなものになったとノーラン氏。最終的にはMotionBuilder内で上映用と同じ映像クオリティで操作することができるようにまでなっていたそうだ。
また氏は、『アバター』制作段階の映像からピックアップしつつ、精度の高いMotionBuilderのテンプレート、バーチャルファイルを用いて映像制作を行っていということをレクチャー。なかでも印象的だったのは、「ホームツリー倒壊」のシーン。レンダリング、ステレオスコピックに関してもMotionBuilderで作業されていると語り、ホームツリーが倒れる速度やパンドラの住人が逃げまどうシーンを試行錯誤し最終的に調整していったという。以前であれば監督がVFXスーパーバイザーを招集し、「こんなバトルシーンを」、「こういった演出で」と説明し制作に入るといった制作プロセスが、MotionBuilderにより効率化されている。監督のイメージをMotionBuilderで具現化し、それを参照しながらVFXスーパーバイザーに「ここではこういった爆発を」、「カメラアングルはこちらから」などと的確に指示することが可能になった。
このようなMotionBuilderによる映像制作のプロセスは、ジェームズ・キャメロン監督のみならず、ピーター・ジャクソン監督やスティーブン・スピルバーグ監督も興味を示し、実際に来年公開予定の映画制作の現場に取り入れているという。それらのことからも、オートデスクが果たしてきた映像制作での役割、そのポジションは非常に重要なものであり、これからの映像制作では欠かすことのできないシステムとして更なる技術的飛躍が望めるのは言うまでもないことだろう。
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