たとえるなら、ファッション。1960年代にマンチェスター・ユナイテッドの英雄ことジョージ・ベストは、夜遊び疲れで練習をサボるたびに逃げこんでいたのがファッション・デザイナー、ポール・スミスの部屋だった。あるいは音楽。かつてエルトン・ジョンはイングランドのワトフォードFC等、複数のチームオーナーを務め、オアシスのギャラガー兄弟がマンチェスター・シティFCの買収計画を企てていたことはあまりにも有名な話。

ならば映画や映像はどうなのか。むろん、フットボールの魅力に取り憑かれるのは映画監督も一緒。フットボールをモチーフにした映画、シンボリックに描いた映画、あるいはメタファーとして利用する映画……etc、映画とフットボールの蜜月な関係を作品の中で見つけることも少なくない。

ワールドカップ 南アフリカ大会もいよいよ閉幕を迎えようとしているいま、4年後まで待てない! と心の片隅でうっすら考えているあなたへ贈る本企画。ということで、フットボールの虜になった監督たちが映像で奏でた協奏曲の数々を、番外編も含めて紹介してみよう。

「映画の中のフットボール」目次

1ページ目 【本格、珠玉のフットボール映像】
2ページ目 【あの監督もフットボール狂!?】
3ページ目 【あの名プレイヤーが出演!】
4ページ目 【風変わりなフットボール映画!?】
5ページ目 【やっぱりマラドーナ!】



『NIKE Airport '98』(1998)

まずは、1998年に日本でも放映されたNIKEのプロモーション映像から。監督は『男たちの挽歌』(1986)や『レッドクリフ』(2008)を撮った、フットボール狂のジョン・ウー。フランスワールドカップ時のブラジル代表面々が、Tamba Trioの「Mas Que Nada」をバックに空港で軽快にボール遊び……。機内で見きれる元フランス代表のエリック・カントナの姿など、見所の多い作品。



『NIKE Write The Future』(2010)

もうひとつNIKEのプロモーション映像から。『アモーレス・ペロス』(2000)や『バベル』(2006)のメキシコ人監督、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥによるもの。ルーニー、クリスチアーノ・ロナウド、フランク・リベリといった南アフリカ大会のワールドカップにも参加したプレイヤーのほか、フェデラーやコービー・ブライアント、アニメのシンプソンズまでさまざまな登場人物に注目。ストーリー展開も秀逸。



『GiNGA The soul of brasilian football』(2005)

複数監督によるオムニバス映画。元はNIKEのプロモーション作品として制作されたが後に日本では映画として公開。製作は『シティ・オブ・ゴッド』(2002)や『ナイロビの蜂』(2005)のフェルナンド・メイレレス。10人の若者による、十人十色のフットボール人生を描き出している。現ブラジル代表のロビーニョと、フットサルの神様と呼ばれているファルカンが勝負する"フットサル対決"は圧巻の一言。ブラジルのグラフィティアーティスト、オス・ジェメオスによるヴィジュアルも見所。



『サッカー小僧』(1974)

6歳の天才サッカー少年がスウェーデン代表をワールドカップに出場させる、奇想天外なストーリー。製作は『ロッタちゃんはじめてのおつかい』(1993)、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)のワルデマル・ベンゲンダール。しかしこの少年、サッカーが上手い! しかも、監督役には元イングランド代表監督も務めたエリクソンが出演。選手役は1974年ワールドカップ西ドイツ大会でヨハン・クライフと死闘を演じた当時のスウェーデン代表選手が勢揃い。ビル・エヴァンスともアルバムを共作しているスウェーデンの歌姫モニカ・ゼタールンドが教師役としてちょいと出演。



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