三洋電機は6月30日、同社のバイオメディカル事業に関する事業説明を行い、同事業における2015年度の事業規模として500億円を目指すことを明らかにした。

三洋電機は、1966年から薬用保冷庫の製品化を皮切りに、バイオメディカル事業に参入。バイオメディカルフリーザー、超低温フリーザー、CO2インキュベーターなどの研究支援機器および調剤機器事業で実績を持つ。

2015年度には500億円の売上をめざす

バイオメディカル事業の国内売上構成比

群馬県の三洋東京マニュファクチュアリングをマザー工場として、同工場のほかに、海外拠点でも生産を行っている。また、国内では三洋電機サービスによる24時間365日のサービスネットワーク体制を敷いている。

2000年には、日本初の細胞調製加工施設(セルプロセッシングセンター)を東京大学に納入。これにより、細胞治療分野における取り組みを強化。過去10年間の実績をベースに、2010年4月には、京都大学iPS細胞研究所に世界最先端となる細胞調製施設を納入した。

これまでに細胞治療分野においては、CPC(セルプロセッサシングセンター)で100施設、セルプロセッシングアイソレータで50台の納入実績を持ち、2009年度の事業規模は約14億円となっている。

京都大学iPS細胞研究所に納入した細胞調製施設「FiT」は、閉鎖系環境のアイソレータによる高度無菌環境の実現、細胞培養工程管理システムなどによる高度品質管理の実現、水蓄熱式空調機の採用などによる省エネ/ランニングコストの低減、見学通路を広くとるなど教育ニーズに応じた見学できる施設の4点を特徴としており、ハードとソフトのトータルソリューションによって実現したものだとしている。

京都大学iPS細胞研究所

細胞調整施設の様子

細胞調整施設内の概要

同社では、今後の細胞治療分野における事業強化として、自動細胞培養装置などのハードウェアの開発とともに、ソフトビジネスにも本格的に踏み出す考えを示す。具体的な取り組みのひとつとして、2009年10月から自動細胞培養装置の共同開発を進めている東京大学医科学研究所発のベンチャー企業のテラ株式会社との協業を拡大させ、GMP(Good Manufacturing Practice)運用管理コンサルティング事業や消耗品器材の商品開発といったソフトビジネス領域にも広げる。

三洋電機 コマーシャルカンパニーバイオメディカ事業部 事業部長 加藤隆一氏

三洋電機 コマーシャルカンパニーバイオメディカ事業部 加藤隆一事業部長は、「当社のバイオメディカル事業の2009年度売上高は211億円。国内売り上げ構成比は60%となっている。薬用保冷庫では68%のシェアを持ち、細胞治療分野機器では60%のシェアを獲得。バイオメディカフリーザー、CO2インキュベータ、超低温フリーザーでもトップシェアを持っている。今後は、研究支援機器事業、調剤機器事業に加えて、細胞治療分野を第3の柱に育て上げたい」としている。

2015年度における同事業の売り上げ目標とする500億円の内訳は、研究支援機器事業が300億円、調剤機器事業が100億円、細胞治療分野で100億円。海外売上高比率を55%にまで引き上げる。

「省エネ商品への切り替え需要、ES細胞、iPS細胞への予算強化、医療過誤への関心の高まり、中国における病院インフラ整備といったフォローの風がある一方で、競合他社の省エネ攻勢、新興国における価格競争といったアゲンストの風もある。ソリューションビジネスへの広がりを視野に入れた細胞治療事業の強化や、商品競争力の強化、海外調剤機器市場の開拓、海外現地生産による地産地消型の体制づくりになどに取り組む」とした。

3つの重点施策として、「細胞治療分野への取り組み」「新商品開発」「グローバルでのシェアアップ」を掲げ、「細胞治療分野への取り組み」としては、商品開発とソリューション営業の強化、協業によるソフトビジネスへの事業展開を行い、「新商品開発」では業界初となる商品の開発促進、省エネ商品の開発推進に取り組む。また、「グローバルでのシェアアップ」では、調剤機器の海外販売の拡大、海外生産体制の強化として、中国・大連および広州、台湾のほか、2010年9月には米国において、冷蔵庫の生産拠点を活用した現地生産を開始する予定だという。

三洋電機の国内市場占有率

国内外における生産拠点

なお、パナソニックとのシナジー効果については、「ヘルスケア分野においては、三洋電機とパナソニックは事業が競合するところがない。お互いの販売網を活用したクロスセルや、技術的な連携強化を図っていきたい」とした。

三洋電機のバイオメディカル事業を支える製品のひとつ「セルプロセッシングアイソレーター」は、過酸化水素による滅菌で無菌を担保、人間とアイソレーター内の空間を完全に遮断し、無菌閉鎖系の細胞調整を可能にする