【インタビュー】
――そもそもコンサルタントという職業は、どんなメモをとっているのでしょうか
コンサルタントは基本的に自分の思考に役立つようなメモを書いています。単に与えられた情報を書きとめるのではなく、自分の思考を発展させたりまとめたりするためにかんたんな図をよく使います。
また、コミュニケーションをスムーズにはかるためにメモを使うこともあります。大きなノートや紙をクライアントの目の前に出し、相手がかかえる問題を書きとめ、一緒に分析する。「これでいこう」という前向きなムード作りにメモを使うのです。
コンサルタントのメモは、「思考をまとめる」「コミュニケーションをはかる」の二つを重視したものと言えるでしょう。
――佐々木さんはいつから、そのようなメモの取り方をするようになったのでしょうか
いま思えば、中学2年生のときから、これに近いことをしていた気がします。当時社会の先生から「授業の前に予習をしておきなさい」と言われたのですが、教科書にあることをそのまま書いてもつまらない。そこでノートに図解してみたんです。提出してみたところ先生にも好評で、そのうち「君のノートを見ないと授業が始まらないな」と言ってくれるまでになりました。それから自分で工夫してメモをとる癖がつきましたね。
――佐々木さんが活用されている「ビビッとメモ」とは、どのようなものでしょうか
自分が感動したり、違和感を覚えたりしたときに書くメモです。生活の中には、いろいろなできごとや出会いがあるもの。「これはおいしい」「ラッキー!」「ちょっと嫌だな」など、私たちは必ず何かを感じています。ぼんやりテレビを見ていても、いい番組に出合うことがあります。そんなとき、すかさずメモをとるのです。
仕事に関係がない、論理的ではないなどと思う必要はありません。とりあえず自分が感じたことを素直に書く。意外にもこうしたメモの方ががあとで役に立つ場合も多いのです。
――例えば、佐々木さんはどんな「ビビッとメモ」をとっているのでしょうか
とあるファストフードのチェーン店でこんなできごとがありました。食事が終わって支払いをしているお客さんがいて、店員がその人にお釣りを渡そうとしたんです。ところがちょうど硬貨が切れていたので、店員は硬貨をとりに奥へ。すると店長らしき人がやって来て、「うちは会計の優先順位は低いから、まず注文をとって」と言いました。
その光景を見ていた私は、「目の前にいるお客さんを待たせてもいいのか?」と、すごく違和感を覚えました。なんだかとてもモヤモヤした気持ちになったので、いっそこの感情を整理してみたらどうかと思ったんです。
そこでポケットから小さいノートを取り出して、すぐにメモしました。「リーダーの発言 会計は優先順位が低いとバイトに言う店長? しかし……」。そのあとはミーティングが控えていたのですぐ店を出たのですが、これだけ書いておけば数日経っても忘れないんですね。
そして別の日に「このチェーン店は接客で何を大事にしているのか?」と考察してみたんです。
お店側からすれば、席に座ったお客さんを待たせないことが大事だというのも理解できます。お客さんは早く食べたいし、ファストフード店としても座席の回転率を上げるには注文をとったほうがいい。
しかしそのために会計のお客さんを待たせていいのか? という疑問があります。そこで仮に「よい」と置いてみました。「お客さんを待たせてもよい。ただし店に入って来たお客さんの注文をとったり、料理を運んだりするなら。ファストフード店にはそれがお互い様というカルチャーがある」。とはいえ「会計は優先順位が低いから」とだけバイトに言い、しかもお客さんに聞こえる状況はどうでしょうか。これはどうもよくないように思える。
では店長はどうすればよかったのか。そのときの理想の形としては、「新しい注文をとって」とだけバイトに言い、時間のあるときに「どうしてそうなのか」をしっかり説明すればいい。そして会計を待っているお客さんには「お待たせしてすみません」の一言を添えてお釣りを渡せばよかった。自分なりの結論が出てすっきりしました。
――ちょっとしたできごとなのに、そこまで深い分析をされているとは驚きです
このチェーン店のエピソードは一見、私の仕事に何の関係もないようですが、おそらくいつか使えると思うんです。というのも、今は人材教育を重視している企業が多いし、数ある職種でも接客業ほど人を育ててくれるものはないんですね。それなのに接客業の代表であり多くの店員を抱えるこのチェーン店が、「うちは会計の優先順位は低いから……」と言っていいのかと。
経営的な判断もあるのでしょうが、反発する店員もいるはず。そのとき店長は納得させる説明ができるのでしょうか。こうした問いを自分で持っておくと、後で若い人材教育にかかわるコンサルティングを依頼されたときに役立つかもしれない。ですから、感情が動いたことはとにかく書きとめることにしているんです。
ビジネスの基本は、利益が上がるしくみをつくって回すこと。ただし、一度できたしくみに固執すると、時としてそれが足かせになってしまうこともあります。だから常に「本当はこうじゃないの?」という発想や直感を持つことが大切です。「なんておもしろいんだ!」でも、「どうしてこんなにつまらないんだ?」でもいい。自分がビビッと感じたらすかさずメモすることをおすすめします。
次回は、「地政学メモ」についてうかがいます。
『不況知らずのコンサルが実践している 時間をかけない! 情報整理術』
〈どうしたらムダな情報整理から解放されるか?〉
その答えが、この本の中にあります。
鍵は、「情報整理は、成果をだすプロセスの中でやる」です。
いったい私たちは何のために情報整理をやるのでしょうか?
「それは、自分を生かして人の役に立つ新しい提案を生みだすため」と考えると、とてもシンプルに答えが出てきます。
ムダな情報を排除し、自分の思考を整理し、いい提案を生みだして人を動かす。
一人でも多くの方が、これを実現して、日々を楽しく、そして、気持ちよく未来をひらいていただければ、と願っています。
内容
「自分自身をその気にさせ、人を動かす情報は、感情フィルターをとおして整理せよ」「情報を2冊のノートに」「語尾をメモしろ」「脱フレームワーク」「なぜ三角形を30度傾かせるか」など。
INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
中国新聞社記者、全国紙系編集プロダクションのライターを経て、2008年著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をスタート。配信後2カ月でiTunes store podcastビジネスランキングで1位を獲得、月間20万DLを記録する。現在は、企業や教育機関などにポッドキャストを活用したマーケティングサービスを提供。「野宮真貴の新宿二丁目ハー メルン」「石原明の経営のヒント+」など、プロデュース番組多数。
KIQTAS(キクタス)ホームページ
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