アプリケーションの開発は一筋縄ではいかない。それというのもOSがバージョンを重ねるごとに、様々な機能を備えるからだ。Windows OSを例に挙げれば、HDD(ハードディスクドライブ)のフラグメントを解消するデフラグツールや、不意のトラブルによる環境破損を防ぐバックアップツール、いまやコンピュータの活用に欠かせないWebブラウザすらも自社開発ではなく、他社からの供給を経て、各機能を実装してきた経緯がある。

もちろん親和性の向上やUI(ユーザーインタフェース)の一元化など、独自の改良を施しているため、ユーザーは備わった機能が自社製・他社製であることを意識する必要はない。それどころかOSが様々な機能を備えることは、ユーザーの利益にも直結するため、歓迎する方も少なくないだろう。

だが、アプリケーションの立場は逆である。OSが持っていない機能を補完することでアドバンテージを得るアプリケーションは、前述したOSの多機能化により、存在意義をなくしてしまうからだ。そのため、アプリケーションを開発する会社やオープンソースベースで開発を行なう個人もしくは集団は、OSが備える機能を大きく上回り、より魅力的でなければならない。今回新たにリリースされた「HD革命/BackUp Ver.10」(以下、HD革命Backup10)もこのような条件に当てはまるソフトの一つだ。

異なるコンピュータへの復元が可能

バージョン番号からもわかるように、Windows OSの定番バックアップツールの一つとして名をはせてきたソフトウェア製品だが、今回のバージョンでは、従来の使い勝手のよさを踏襲しながらも、バックアップ元と異なるコンピュータへシステムを復元できる機能を備えてきた。

そもそもWindows OSは、レジストリの一部にハードウェア情報を格納し、各ハードウェアが正しく動作するためのデバイスドライバファイルを保持している。コンピュータを構成するハードウェアはOSセットアップ時に組み込まれているため、ピンと来ない方も少なくないが、例えば、環境が整っているコンピュータにプリンタを接続した場合、自動もしくは手動でデバイスドライバを導入しなければならないことからも、ハードウェアとデバイスドライバの関係を把握できるだろう。

そのため、Windows OSのHDDをイメージファイル化し、バックアップした場合、そのコンピュータ以外に書き戻すと、ハードウェア情報の整合性が取れず、予期せぬトラブルに見舞われてしまう。これが一般的な常識である。だが、HD革命Backup10では、この常識を覆し、あらかじめ作成したイメージバックアップデータを異なるコンピュータへ復元することを可能にした。

このロジックの秘密は、事前に作成するハードウェアデータベースにある。あらかじめデータベースを作成することで、デバイスドライバをバックアップデータに含め、別のコンピュータに復元する際には必要なデバイスドライバを読み込むことで、異なるコンピュータ間のバックアップ&リストアを可能にするというものだ。

下記の囲みをご覧になるとわかるように、ストレージデバイスやチップセット用のデバイスドライバと、Windows OSの起動に最小限必要なものだけが、データベースに取り込まれる。一見すると少なく見えるが、Windows OSのセットアップ時に自動認識せず、一般的なコンピュータを対象にするのであれば十分だ(図01~05)。

図01 おなじみのArkランチャーを起動し、<オプション設定/便利ツール>ボタンをクリック。右ペインにある<ドライバデータベースの作成>をクリックする

図02 初回はデータベースファイルが存在しないため、操作の確認をうながされる。<はい>ボタンをクリックしてデータベースファイルの作成を進めよう

図03 デバイスドライバの提供メーカーを選択する。各コンピュータの構成を把握している場合は取捨選択するのだが、わからない場合はすべて選択した状態で<開始>ボタンをクリックする

図04 インターネット経由でデバイスドライバの自動ダウンロード後に展開を終えると、データベースファイルの作成が完了する

図05 作成したデータベースファイルは「SDBManager」で確認できる(起動は<ドライバデータベースの作成>をクリック)。取り込まれたデバイスドライバが列挙されるため、移行先のコンピュータで使用できるか確認するとよい

生成する標準のデータベース

Intel:ICH7~ICH10までのSATA ACHI/RAID、ICH6の一部(ESB2 SATA AHCI/RAID)
AMD:SB7xx、SB8xx
NVIDIA:MCP61/68、MCP72/78

あくまでも取り込まれるのは最小限のデバイスドライバのみ。ほかのハードウェアに対するデバイスドライバは組み込まれないため、レアケースとなるチップセットをお使いの場合、手動による導入が必要だ。操作自体は簡単ながらも、組み込めるのはあくまでもストレージデバイスを制御する直接のデバイスドライバやチップセット用デバイスドライバのみとなる。

また、拡張子「.inf」を持つドライバ情報ファイルと、拡張子「.sys」を持つデバイスドライバ本体ファイルが同一のフォルダに格納されていなければならないため、実行展開形式ファイルで配布されているデバイスドライバの場合、事前にファイルを展開しなければならない。つまりLANやGPUといったハードウェアに対するデバイスドライバはWindows OSの自動認識に期待するか、自身で用意する必要がある。このように諸条件は多いものの、異なるコンピュータにバックアップファイルを復元できるメリットを踏まえると、さほど大きな障害とはならないだろう(図06~09)。

図06 「SDBManager」の<操作>メニューから<デバイスドライバを追加>をクリックする

図07 拡張子「.inf」を持つINFファイルを<参照>ボタンで選択し、対応するOSを選択してから<OK>ボタンをクリックする

図08 デバイスドライバの内容が表示されるので、組み込むデバイスドライバを選択してから<追加>ボタンをクリックする。これでデータベースファイルにデバイスドライバが追加された

図09 データベースファイルに組み込めるのは、ストレージデバイスを制御するデバイスドライバに限定される

なお、本データベースファイルの存在は特段意識する必要はない。データベース作成後に行なったバックアップデータには、自動的にデータベースファイルが含まれるからだ。そのため、通常はそのままスムーズにいくはずだが、懸念すべきはデバイスドライバの組み込み漏れ。正しいデバイスドライバが組み込まれないと、ストレージデバイスにアクセスできず、Windows OSが起動しないこともある。

このように、Windows OSの起動に必要なデバイスドライバが欠けている場合は、HD革命BackUp10の製品CDからコンピュータを起動し、「環境修復ツール」を使って欲しい。起動に失敗したWindows OSを選択し、起動に必要なドライバ情報ファイル(INFファイル)を選択することで、デバイスドライバの組み込みと環境の修復を実行できるため、万が一、データベースファイルから必要なデバイスドライバが漏れても安心だ(図10)。

図10 バックアップファイルを操作する「HDZマネージャー」でバックアップファイルを確認すれば、データベースファイルが含まれているか確認できる