GLOBALFOUNDRIESは5月27日、日本では約14カ月ぶりとなる記者発表会を都内で開催。2009年からの動向と今後のロードマップを説明した(Photo01)。

Photo01:説明を行ったGLOBALFOUNDRIESのCEOであるDouglas Grose氏

ご存知の通りGLOBALFOUNDRIESはAMDのFabがスピンアウトする形で設立されたファウンドリであるが、2010年1月にはシンガポールのファウンドリであるChartered Semiconductor Manufacturingを買収(厳密に書けば、GLOBALFOUNDRIESの親会社であるATIC:Advanced Technology InvestmentがCharteredを買収し、2010年1月にGLOBALFOUNDRIESの社名で業務提携を開始する、ということになるが、まぁ実体としては買収と考えてよい)、製造規模や提供するラインを大幅に拡大することになった(Photo02)。この結果として拠点数は12に増え(2009年の時点では5つ)、200mmと300mmの複数の製造ラインを持つファウンドリとなり、その生産量は現時点でも200mmウェハで580万枚/年になる(Photo03)。

Photo02:増えた分はChartered Semiconductorが持っていた設備であり、また同時に売り上げも25億ドルとなり、150社の顧客をそのまま引き継ぐことに

Photo03:他社は?というと、例えばTSMCは2010年第1四半期の決算発表の際2010年における生産量が合計で1124.7万枚になるという見通しを述べているからこれにはまだ及ばないわけだが、同じ台湾のUMCはやはり2010年第1四半期のFinancial Reportの中で2010年第1四半期中に8インチ(200mm)換算で115.4万枚の生産を行ったとしているから、おおむねUMCと同等以上の生産能力を手に入れたと判断していいだろう。

さて、その規模の拡大した2010年第1四半期であるが、景気の回復基調は強く、これにつれて業績は好調であるとしており、また少なくとも第2四半期もこの好調さが続くとしている。また先端プロセスである65nmや45/40nmプロセスで強いデマンドがあり、その一方で0.13μmや0.18μmから0.35μmまでも含む、Matureなプロセスについても引き続き需要は大きいとしている(Photo04)。この堅調さを今後も維持しつつ、全体を単一のファウンドリとして機能させるとともに、フルサービスを提供できるようにしてゆくのが現在の課題との事だ。また日本マーケットについては、多くのベンダがFabless/Fablightの方向性を打ち立てている中で、こうしたベンダに1st choice foundaryとして選ばれるようになりたい、とした(Photo05)。

Photo04:この古いプロセスのニーズが多いのは別にGLOBALFOUNDRIESだけでなく、TSMCを始めとする多くのファウンドリで、まだまだ古いプロセスが売り上げや収益の大半を担っている。ユーザーとしても、安定して利用が出来、初期コストが低く済むMatureなプロセスは魅力的という事だろう。

Photo05:JDAとはCommon Platformに絡むJoint Development Alliancesの事。JDAのメンバーはIBMをはじめ、AMD/Freescale Semiconductor/Chartered Semiconductor/Infineon Technologies/NECエレクトロニクス(現ルネサス エレクトロニクス)/Samsung Electronics/STMicroelectronics/東芝といったところだったが、GLOBALFOUNDRIESはChartered Semiconductorの役割をそのまま引き継いでメンバーになっている

ちなみに日本に関しては、グローバルファウンドリーズ・ジャパンがすでに活動しており、吉澤六朗氏(Photo06)が代表取締役社長を務めている。これはチャータード・セミコンダクター・ジャパンがそのまま横滑りした形になり、日本の顧客への営業やフィールドサポートを行っているとの事で、今は旧Chartered SemiconductorのFabを使う顧客がメインであるが、今後は先端プロセスを使う顧客も出てくるであろうという話であった。

Photo06:元はチャータード・セミコンダクター・ジャパンを務めておられた吉澤六朗氏。業務提携に伴い、そのままグローバルファウンドリーズ・ジャパンの代表を務められるとのこと

さて、話を戻すと原状であるが、300mmのFabはドレスデンのFab1とシンガポールのFab7で、2012年の後半にはFab8が稼動することで、合計で月間15万枚の生産規模になることが予定される(Photo07)。Fab8は現状予定通りに進行しているそうであるが、規模に関しては敷地がそもそも将来建物を増築できるようにゆとりが取ってある上、現在建設中の建物についてもかなり余裕があるため、必要ならば設備を増強することが可能との話だった(Photo08)。また旧Chartered Semiconductorの持つ200mm Fabについては、現状のまま引き続き量産を行ってゆくという話であった(Photo09)。

Photo07:ただしこの3つのFabは、扱えるものがまったく異なる。Fab1は現状SoCのみだし、Fab7は逆にBulkのみである。Fab8はとりあえずHKMGの28nm以下で、SoCを適用するかどうかは現状未定である。ということで、このあたりはもう少し相互に技術移転をしていかないと、実際には地理的リスクはあまり減らない気がする

Photo08:ちなみに28nmに続き、20/22nmプロセスについてもFab8での製造を念頭においているとのこと

Photo09:こちらは引き続きフル稼働中。2008年頃のChartered Semiconductorの資料によれば、Fab6/7以外はAl配線のプロセスで、また当時はFab3が24Kwpm、Fab5が22Kwpmとあるから、当時よりは生産能力を拡大したようだ

続いて今後である。現状は45/40nmのBulk CMOSによるLogicとSOIを提供中の同社だが、今後は32/28nmを経て22/20nmを目指すことはロードマップで明確にされている(Photo10)。具体的にはSHP(Super High Performance)、LP/SLP(Low Power/Super Low Power)、HP/G(High Performance/Generic)の3つのカテゴリに分け、それぞれ微細化を進めてゆく(Photo11)。スケジュールとしては、今年第2四半期には40nm LPが、第3四半期には32nm SHPが、第4四半期には28nm HPがそれぞれ量産を開始し、いずれも2四半期後には安定製造を開始する予定だ。

Photo10:ただしFlash Memoryの製造に必要なHigh Voltageは0.13μmどまりとなっている。面白いのはRF COMSが32/28nmプロセスまで開発の予定があること、またSOIは22/20nmでも開発するつもりな事が明らかにされたのも興味深い

Photo11:大雑把に言えば、SHPはSOIを使ったプロセスで、それ以外はBulk CMOSということになるだろう

ここで気になるのは、昨年は32nmに関してSOI以外にBulkの提供も予定していたのに、今年は32nm Bulkが抜け落ちていること。確認したところ「技術的には32nm Bulkは技術的には32nm SOIと共通する部分が多く、提供は可能だが、顧客がみな32nm Bulkをスキップして28nmに移行することを望んでおり、このためスキップした」という返事であった。

Photo12:昨年はここまで詳細なロードマップは示されなかった(せいぜいこの程度から、開発が進んで具体的なスケジュールを示せるようになった、という事だろう

また、もう少し先の話として、露光技術の話が出てきた。現在45nm SOIではArF液浸リソグラフィを利用しているが、これを32nmやその先も引き続き利用する(Photo13)という話はそれほど驚きはない。ただし、その先にはEUVの開発も進めており、どこかのタイミングでEUVに移ることを現実的に考えているという(Photo14)。

Photo13:氏の個人的な考えでは、恐らくEUVが実用になるのは20nm未満のプロセスからで、それまでの間はArF液浸+ダブルパターニングで凌ぐ、ということになるとの見解だった

Photo14:EUVに関しては、現在必要となる諸々の技術が全部出揃うのを待っている状態で、すべての要素が揃ったらすぐにEUVに移行できるように、現在はテクノロジの熟成を図っている状態との事

長期的に見れば、現在のArF液浸+ダブルパターニングに必要とされるコストは、プロセスに対してスケーラブルではない(指数級数的にコストが増加する)事を考えると、20nm未満のどこかでEUVに移らざるを得ないとしており、あとはいつ必要な要素が揃うか、ということだそうだ。

またこれは露光だけではなく、例えばトランジスタについても現在のプレナー構造が利用できるのは恐らく20nm世代までで、16nm以下のプロセスでは3D構造のトランジスタが必要になると思う、との見解が示された。ただこうしたものをロードマップに掲載するのはまだ時期尚早ということで、とりあえずは22/20nm世代までを無事に量産にこぎつけるようにするのが目標となるだろう。

ちなみに発表会の最後に、「1週間以内に、新たな追加発表を行うので楽しみにしていて欲しい」というメッセージがあった。来るCOMPUTEX/TAIPEI 2010に併せ、6月1日にGLOBALFOUNDRIESと親会社であるATICは合同でプレスカンファレンスを開催することをアナウンスしており、この席で何らかの追加発表が行われると見られる。こちらもちょっと楽しみである。