電話が鳴る、受話器をとる、耳にあて、もしもし──その一連の挙動が緩慢すぎてもどかしい編集部員がいる。聞けば、「腰痛がひどくて、電話に手を伸ばすのも億劫」なのだとか。というわけで、姿勢評価システム『ゆがみーる』を提供するジースポート社でこの部員のカラダを調べてもらった。

電話に手を伸ばすと腰が悲鳴を上げる。そんな35歳の編集者M.I、妻子に加え腰痛も抱えてお悩み中

さっそく、とある問題を指摘されたのだが……「え、なんですって? もう一度、もう一度言ってください」

編集部員の姿勢は3次元でゆがんでいた……!

「猫背で反り腰、骨盤も左に上がっていて……3次元的にゆがんでいますねえ」。ジースポートの黒田篤氏から、姿勢を評価する言葉としては聞き慣れない表現が飛び出した。しかしそれが、編集部員M.Iを悩ます腰痛と関係があるらしい。

同社を訪れてさっそく姿勢評価システム、ゆがみーるを体験したM.I。マーカーとなるバンドをカラダに巻き、ノートPCにつながれたカメラの正面に立って直立、屈位、側面の姿勢を撮影、5分程度でデータ収集は完了したようだ。はじき出された"ゆがみーる指数"はランクCの56点。診断結果を見ながら黒田氏が冒頭の言葉をつぶやいた。

3パターンの姿勢を撮影後、専用ソフトで解析する

ゆがみーるは、"姿勢のゆがみ"を見つけて、"負荷のかかりやすい筋肉部位"をPC上でわかりやすく示すシステムだ。もとはスポーツ医科学施設でプロスポーツ選手の筋活動などをチェックするために使われていた。一般の人の姿勢指導にも使いたいという理学療法士などのニーズから機能を切り出す形で開発された。いまでは整体院や整骨院、スポーツジム、検診センターなどに導入され、その計測結果をもとにした治療やトレーニングが施されている。"ヘルスケアIT"の試みはIT業界でも評価を受けており、2008年にはマイクロソフトが優れたITベンチャーに贈る「Microsoft Innovation Award」の最優秀賞に選ばれている

ゆがみがわかると治療方針もわかってくる

さて、編集者M.Iに話を戻すと、診断シートには明らかに猫背で反り腰な姿が見られる。ゆがんだ姿勢だ。過去にサッカーで腰を痛めて以来、無意識に腰をかばうようになり、結果、姿勢をゆがめてしまったと考えられる。この状態は別の問題を引き起こしていた。もう一枚の診断シートを見ると、人体モデルの上に赤色の部分が示されている。姿勢のゆがみによって生じた「緊張しやすい筋肉」だ。どうやらM.Iは、右大腿部とふくらはぎに負荷をかけやすい姿勢をしているらしい。腰を痛め、かばい、そして別を痛める……という悪循環が、さらなる腰痛を引き起こす可能性もあるという。

「ゆがみーる」による姿勢評価。ゆがみーる指数は高いほうがよいが、100点になる人はほとんどいない

姿勢のゆがみが、カラダの他の部位にどんな負荷を与えているかを確認できる。ストレッチのアドバイスも

このゆがみーるで得たデータを治療に活かしていくことになる。「姿勢に着目する整体の先生には、腰痛だと言っても、直接患部にはアプローチせず、全体的にアプローチする人が多い。それは全身の"ゆがみ情報"に基づいた治療で、緊張しやすい部位からゆるめていく。ゆがみーるは、先生方が治療に用いる、全身の"ゆがみ情報"を分かりやすく患者に説明できるツールです」(黒田氏)。M.Iは以前、整体でふくらはぎをマッサージされて腰の痛みが和らいだ経験があるとのことで、その理由がゆがみーるによってわかったと納得した様子。同システムを導入している整体院などでも、治療方針について明確な理由を示せることは、患者との信頼関係の構築に役立っているという。

M.Iは今後の整体通いでは、とりあえず診断シートを先生に見てもらうことにするそうだ。姿勢のゆがみも意識して修正できれば、とも話す。俊敏な電話応答を実現するためにも、ぜひそうしていただきたい。

ゆがみーるを利用した姿勢評価や治療を受けられる施設についてはジースポートのWebサイトで確認できる。M.I同様、カラダの痛みにお悩みの方、姿勢のゆがみをチェックしてみたい方、いちど体験してみてはいかがだろうか。

黒田篤 ジースポート代表取締役社長。東京大学在学中にCG研究に従事し、バイオメカニクス分野と3DCGを連携させたヘルスケアITソリューションで起業。同社が開発した、骨格と筋肉の動きなどを3DCGアニメーションで再現する3Dマッスルシミュレータ「ARMO(アルモ)」「解体演書」は、NHKなどのテレビ番組でも使われている

※本レポートでは、取材目的としてジースポート社で姿勢評価システム「ゆがみーる」を直接利用しましたが、通常は導入先である整体院やスポーツジムなどで指導員のもと利用するものです。ご注意ください。