システムインテグレーション(SI)におけるミドルウェア以外の分野 - たとえばアプリケーションやOSなどでは中立の立場をとるIBMだが、これはLinuxベンダのパートナー関係にもいえるようだ。同社は今年3月にIBM Cloudサービスの開発/テスト環境の構築にあたってRed Hatの仮想化技術であるKVM導入を発表しているが、翌月4月にはLinuxアプライアンス展開にあたってNovellとの提携でSUSE Appliance Programに参加するなど、ベンダ間でバランスをとっている印象を受ける。

過去10年間にわたって、同社がオープンソース事業への参画にあたって特定のLinuxベンダへの肩入れは行わず、各ディストリビューションやベンダらとのパートナー関係を広く築く方向性を模索している。たとえばクライアント向けソリューションにおいては、UbuntuとRed Hatのディストリビューションをカバーしている。また3月に発表されたIBM Cloudのサービス拡張においては、Red HatのKVMであるRed Hat Enterprise Virtualization (RHEV)を導入する一方で、サポートするLinuxプラットフォーム自体はRed Hat Enterprise Linux (RHEL)とSUSE Linux Enterprise Server (SLES)の両者が対象となっている。

比較的Red Hatへの依存度が高いように見えるIBMだが、4月に発表されたSUSE Appliance Programへの参加では、同プラットフォームを抱えるNovellとも一定の関係を保っている様子がうかがえる。SUSE Appliance Programとは、これまでWebサービスとして提供されていた「SUSE Studio Kit」をISVなどのパートナー企業がオンプレミス(On-Premise)環境で独自に利用できるように「SUSE Appliance Toolkit」として用意し、これを利用したアプライアンス開発を可能にするプログラムだ。

SUSE StudioではFiferoxや各グラフィックスモジュールなどを自在に組み合わせ、各々が最適なアプライアンス装置のイメージファイルを構築することで、LiveCDやUSBストレージ、内蔵ディスクなどに導入して起動できるようになる。組み込みシステムなどへの応用のほか、必要なアプリケーションやミドルウェアをすべて組み込んだイメージファイルを構築できるため、大量クライアントやサーバが存在するシステム展開が用意になるというメリットがある。Novellによれば、これらはSUSE Linux Enterprise Server (SLES)がベースとなっており、「IBM Lotus Foundations」「IBM Lotus Protector for Mail Security」「IBM WebSphere Application Server Hypervisor Edition」「IBM Cognos Now!」「IBM Smart Analytics Optimizer」といったIBMブランドのソフトウェア・アプライアンスはすべてAppliance ToolkitとAppliance Programを通して実現されることになるという。

そのときどきで最適なソリューションとパートナーを選択し、そのうえで自社のミドルウェア・ソリューションを推進するのがIBMといえるかもしれない。