【レポート】

ワコム クロニクル -「Intuos」の歴史(Intuos3開発編)

グラフィックに関わるクリエイターを中心に、広く活用されているワコムのプロ用ペンタブレット「Intuos4」。このIntuos4はどのように誕生したのだろうか? ワコムの開発陣の貴重な証言から、その誕生の秘密と進化の歴史を探る。「初代Intuos」「Intuos2」の開発秘話に続き、今回は「Intuos3」開発秘話が明かされる。

「Intuos」シリーズの開発秘話を披露してくれたのはワコム 営業本部プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングGr.マネージャー 田中尚文氏と、ワコム プロダクト統括開発部ジェネラルマネージャー 福島康幸氏。両者共に「Intuos」シリーズ開発当初から製品開発に参加している。

2004年の9月に発売された「Intuos3」

作業効率の向上が大きな開発テーマのひとつ

徐々に改良を重ね、プロクリエイターやハイアマチュアに認知されていったワコムの「Intuos」シリーズは、「Intuos2」から「Intuos3」でさらに大きな進化を遂げる。Intuos3では、新たな開発テーマがあった。それは「作業効率の向上」と「カスタマイズ性」である。

「プロがIntuosに求めるのは、まず表現力の向上ですが、ワークフローの中での使いやすさや作業効率の向上も重要視されるようになっていました。Intuos3では、この作業効率の向上が大きなテーマとなりました」(田中氏)

「Intuos3では、Intuos2の入力エリア上部にあった、ペンで操作するファンクションメニューがなくなりました。それに替わって、入力エリア外の左右に指で操作するファンクションキーとトラックパッドが配置され、左利き、右効きどちらでも使える構造になりました。ユーザーはキーボードになれているので、Intuos3のファンクションキーでは数が少ないという意見もありましたが、これは、一番使うものをファンクションキーとして本体上で使い、作業の効率化を計るという考えです。ファンクションキーは片方4つ、左右両方で8つなのですが、同時押しなどでさらに多い設定が可能です」(福島氏)

すべての操作をペンで行っていたIntuos2から、ペンを持たない手で画面の拡大縮小やファンクションキー操作を行えるようにデザインが変わったIntuos3。作業効率の向上のために、「本当に必要なよく使う操作のみをタブレット上で行う」という意匠に沿いデザインされている。ユーザーの反響はどうだったのだろうか?

「膝の上にタブレット本体を置きながら操作するというユーザーが意外に多く、このファンクションキーは使い易いと評価されました。ただ、描いている最中にファンクションキーに触ってしまい誤動作してしまうという意見もありました。もちろん、ドライバでファンクションキー操作をオフに設定すれば問題ないのですが」(田中氏)

外観も「Intuos2」とは別物に

2004年の9月に発売された「Intuos3」。タブレット上のレイアウトだけでなく、外観も一新された。

「Intuos3」(画像左)と「Intuos2」(画像右)。外観の大きな変化がわかる

「このデザインは、当時販売されていたMac G5を意識したデザインです。タブレット上面は透明なアクリル板で、板の後ろ(裏側)から塗装されています。これはわかりにくい部分なのですが、非常にコストがかかりました。アクリルでこの形だと、本体の補強用のリブをつける事が難しいのです。このデザイン実現のために、ボディ構造まで変えました。苦労は多かったですが、意匠的には成功したと思っています」(福島氏)

カスタマイズ性をアピール

電子ペンのカスタマイズ性もさらに強化された

タブレット上で行う、作業効率の向上を図り、デザインも洗練されたIntuos3。同様に開発陣が注力した部分が「カスタマイズ性」だ。

「電子ペンの書き味を左右するチップセンサー自体は、実は初代IntuosからIntuos3は同じものが使用されています。ただ、ON荷重という言葉を始めて弊社として公にしました。筆圧のレベルが注目されがちですが、実はON荷重というものが非常に大切で、それによって書き味が大きく変わるという事をユーザーに強くアピールしたんです」(福島氏)

どれくらいの力を電子ペンに加えたら、線が書けるのかを左右するON荷重。Intuos3ではデフォルトで30グラム以下、設定により10グラム以下で動作する。この繊細さが感覚としての書き味の大きく影響するという事実がIntuos3から、強く打ち出された。さらにワコムはユーザー一人ひとりの書き味の満足度向上のために、「カスタマイズ性」に取り組んだ。

「ユーザーごとの好みに合わせたカスタマイズ性をアピールしたのもIntuos3からです。Intuos3では、ペン先の芯として標準のポリアセタール芯、摩擦係数の高いフェルト芯、スプリングを組み込んだストローク芯の3種類用意し、シートも摩擦係数の違うシートを2種類用意しました。」(田中氏)

「ユーザーは自分でペンにグリップを付けたり、タブレットに紙を貼ったりして、各自、お気に入りの書き味を得るために工夫しているという話を聞きました。それに、応えるため研究を重ねました」(福島氏)

このような改良を施したIntuos3。実際の書き味には、どの程度近くなったのだろうか?

「当時、出来るベストの事はやったと思います。ユーザーからも『これで完成形だろう』という声もありました。『次はどうするんだろう?』という思いは、私たち開発陣にもありました」(福島氏)

ペンタブレットとしての完成形に到達したIntuos3。しかし、次のIntuos4では、さらなる進化を遂げることとなる。

ワコム 営業本部プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングGr.マネージャー 田中尚文氏(画像左)、ワコム プロダクト統括開発部ジェネラルマネージャー 福島康幸氏(画像右)

次回、「Intuos4」への更なる進化の過程を追う

撮影:岩松喜平

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