アドビの期間限定ギャラリー「station 5」にて、映像クリエイター・高野光太郎氏によるセミナー「高野光太郎の日本一速いNABレポート」が開催された。このセミナーでは、「Premiere Pro CS5」と「After Effects CS5」の新機能が紹介された。

「Premiere Pro CS5」と「After Effects CS5」の魅力とは?

セミナーでは、アドビ システムズ 古田氏によって「Premiere Pro CS5」と「After Effects CS5」の新機能が紹介された。Premiere Pro CS5が64ビットOS必須になった理由について古田氏は、「思い切った選択でしたが、HDや2K、4Kといった映像を扱うに当たって32ビットでは限界でした」と説明。会場に用意されたデモ用PCは、Xeon 3.2GHzに8GBメモリー、Windows 7(64ビット)だったが、Premiere Pro CS5とAfter Effects CS5、Photoshop CS5など複数のソフトを起動して作業を行なう場合は、16GB程度のメモリーが理想的だそうだ。

セミナーのデモで使われていたPCの詳細画面。HP製の「Z400 Workstation」だ

「DSLR」用のプリセット。EOSムービーの編集をするユーザーには歓迎されるだろう

Premiere Pro CS5最大の特徴は、新たに開発された再生処理エンジン「Adobe Mercury Playback Engine」。このエンジンを搭載したことにより、いままで処理が重かったDSLRの映像やAVCHD、AVC-Intra、Red One R3Dなどを、タイムライン上で快適に動かせる。また、Adobe Mercury Playback Engineで高速化されるエフェクトも多数加わっている。古田氏が行なったデモでは、EOS 5Dmk2、Red One、AVCなどの映像をレイヤーで重ねたプロジェクトが使われた。映像クリエイターの高野氏は「本当に動きますか?」と心配そうに見ていたが、実際にスムーズに映像が動いていた。

これまで高野氏がEOSムービーを使うときのワークフローは、いちいち「ProRes(Appleのフォーマット)」に変換してから作業を行なっていたと言う。しかし、Premiere Pro CS5からは、そのままデータを編集できる。高野氏はこのデモを見て、「5Dmk2で撮ったデータを変換せずに読み込めるので、Premiere Pro CS5を使ってオフラインにすると便利。XMLファイルで出力できるので、やりたい人は『Final Cut Pro』で編集することもできる」と、ワークフローのアイデアを紹介した。

画面を一見しただけでも重そうなプロジェクトなのに、きちんと再生できていた

ムービーの解像度は、なんと「2816×2304」。こんなに大きいファイルを再生できる

「高速処理エフェクト」のなかに入っているエフェクトが、Adobe Mercury Playback Engine対応のものだ

エンコード時のタスクマネージャーの様子。Adobe Mercury Playback Engineを使うと、すべてのコアを極限まで使用してくれる

After Effects CS5について高野氏が歓迎したのは、「RAMプレビュー」の時間が大幅に伸びたところ。高野氏は「RAMプレビュー時間が短いとAfter Effectsを使ってる意味がない。プレビューが延びたから、64ビットOS専用ソフトになった理由を飲み込めた」と感想を述べた。

セミナーの最後に高野氏は「カラーマネージメント」について紹介した。通常、映像を編集する際にはなんらかの方法で色を補正するのだが、After Effects CS5には色補正用のツール「Color Finesse 3 LE(カラーフィネス)」がついている。このツールは、どのように色を変換したかのデータが格納されるlookup tabeleファイル(3D LUT)を入出力できる。LUTを使えば、業務用編集ツール「Autodesk Flame」や「Smoke」などとの連携も可能。 高野氏は「DSLRの映像が多くなり、カラーマネージメントは今後重要になる。After Effects CS5上である程度の色補正のアタリをつけて、そのデータを編集室に持ち込んで作業の続きができる。これはとても便利だと思います。みなさんも使うかどうかは別として、この仕組みは覚えておいてください。色は重要ですよ」と語った。

After Effects CS5のデモでは、ソース内の人物を簡単にマスクする「ロトブラシ」の紹介も行なった

「Color Finesse 3 LE」を使えば、メジャーな業界用編集ツールの色補正ファイルを入出力できる