ローソンは、拡張現実(Augmented Reality 以下、AR)を活用して、箱根に「エヴァンゲリオン初号機」を出現させた。

これは、2010年4月27日から5月17日までローソン全店で実施する『エヴァンゲリヲン新劇場版:破 Blu-ray&DVD発売記念キャンペーン』に先駆けて、2010年4月23日に実施されたもの。作品の舞台「第3新東京市」のモデルになった箱根にある旧仙石原中学校の校庭に、AR技術を駆使して実物大のエヴァンゲリオン初号機を再現するという企画だ。

※4月25日に周辺の混乱が避けられないなどの理由で、先行キャンペーンは中止されています。詳細はこちら

ARとは、現実世界にコンピュータを用いてデジタル情報を付加し提示する技術および情報を付加し提示された環境のことを示す。最近話題になった、カメラで撮影した映像に「エアタグ」と呼ばれる情報を重ねて見ることができるiPhoneアプリ「セカイカメラ」にも利用されている技術で、『電脳コイル』、『東のエデン』などのアニメーション作品にも、ARを利用したシステムが登場している。今回のキャンペーンでは、ローソンの専用キャンペーンサイトからiPhoneアプリ「ローソンエヴァンゲリヲンARアプリ」をダウンロードし、特定の場所でカメラをかざすと、iPhone上に約80メートルの「エヴァンゲリオン初号機」を映し出すことができる。

ARアプリで現れたエヴァンゲリオン初号機

ARで出現した初号機は、360度どの方向からでも見ることができる

取材当日は、あいにく雨天だったため、会場となったグランドへの立ち入りが制限されていたのだが、グランドの真ん中に行けば、下の画像のような、真下から見上げるような写真や初号機の足元を撮影することも可能だ。

様々な「現実の視点」から「実物大の初号機」を鑑賞できる

エヴァンゲリオン初号機は、校庭の中心から70メートル以内に近づかないとiPhoneアプリには写らない。実際はもっと遠方からの撮影も可能にできたそうだが、車道や運転をしながら撮影される危険性などを考慮して、学校内でしか撮影できないように設定したとのこと。これまで、ARを使った作品というと、iPhoneなどに映る映像に情報が付加されたり、ミニチュアの3Dキャラクターを動かしたりするものが多く、今回のような巨大なARを使った例は前例がないのではないだろうか。

キャンペーンのコストにおいても、昨年の夏に話題になった実物大のガンダムや鉄人28号などに比べれば、はるかに経費を抑えることができたそうで、低コストでインパクトのあるキャンペーンを行いたい企業にとって、ARは魅力的な技術だといえる。それだけに、激しい道路渋滞や深夜の騒音などを理由に、ゴールデンウィークを前に先行キャンペーンが中止になったことは非常に残念(ローソン全店で実施するエヴァンゲリオンキャンペーンは予定どおり実施)だが、これらの問題に対処できれば、他の人気作品を使用して販促キャンペーンを実施する企業も増えるのではないだろうか。

ローソンではこのキャンペーンにあわせて、旧仙石原中学校の近くにある「ローソン箱根仙石原店」を丸ごとエヴァンゲリヲン一色に装飾し、「第3新東京市店」として同作の世界観を再現した(※4月25日で終了)。

エヴァンゲリヲン一色に装飾されたローソン箱根仙石原店

なお、今回のARイベントを取材したマイコミ編集部では、2010年夏に新書『AR -拡張現実(仮)』を刊行予定。執筆は小林啓倫氏(日立コンサルティング コンサルタント。ITmediaオルタナティブ ブログで「シロクマ日報」執筆)が担当する。(執筆:マイコミ編集部 小林啓倫)