Web標準サポートにおいてMicrosoftが掲げる目標はシンプルだ。「同じHTML、script、マークアップがすべてのブラウザで同じように動作する」。

この目標に向けてIEが合わせるべきところはサポートしていく。逆に「IE9世代では、われわれのIE8でのCSS 2.1サポートに、他のWebプラットフォームも取り組んでほしい」と業界の協力を求めた。

IE9(左)、Firefox(中央)、Chrome(右)でボーダーの表示を比較。オレンジのボーダーがドットで表示されるのが正しい

縁に丸くアニメーションをかけるとFirefoxとChromeではさらに表示が崩れた

昨年11月のPDCに続いて、今回もIE9の「Acid3」テストが行われた。スコアは前回の"32"から今回は"55"に向上したものの、まだまだ低い。ただMicrosoftはAcid3を評価しながらも、同テストを以てWeb標準対応を比べる風潮に疑問符を付ける。Hachamovitch氏はIE9のAcid3スコア向上を約束した上で、標準対応の指標になるテストスイートが必要であると主張。MicrosoftがHTML5、CSS3、DOM、SVGに関する100以上のテストをW3Cに提出したことを発表した。

IE9のAcid3テスト結果。今回のスコアは"55"

HD品質のHTML5ビデオをなめらかに再生

MicrosoftはWindows VistaからWindows 7にかけてグラフィックスAPIの活用を強化してきた。そのトランジションがIE9でWebアプリの実行環境にも及ぶ。同社は、これを「GPU-powered HTML5」と呼ぶ。Hachamovitch氏のキーノートの後半にはWindows/Windows Live部門担当プレジデントのSteven Sinofsky氏が登場し、グラフィックスがカギとなるHTML5アプリにGPUを活用するデモを披露した。

「GPU-powered HTML5」のデモではWindows部門の責任者Steven Sinofsky氏が登場

例えば「Flying Images」というブラウザ内で3Dイメージを動かすテストではIE9が64fpsでレンダリングしたのに対して、Chromeは5fpsにもとどかなかった。フォントを400%まで拡大表示してもIE9ではなめらかな曲線が維持される。またHTML5ビデオもサポートする。HDアクセラレータを備えたHPのネットブックを使って720pのHTML5ビデオを再生するデモでは、Chromeがぎくしゃくとした再生だったのに対して、IE9では同品質のHTML5ビデオを同時に2つ再生して見せた。

「Flying Images」。IE9(左)の64fpsに対してChromeは2fps

フォントを400%に拡大表示。IE9はなめらか

Chromeで720pのHTML5ビデオを再生。CPU使用率(右上の緑のバー)が100%

IE9で720pのHTML5ビデオを2つ同時に再生

この日のMicrosoftのHTML5対応宣言は、他のWebブラウザベンダーからも歓迎されている。例えば、これまで「Web業界の足を引っ張っている」とIEを痛烈に批判してきたMozillaのコミュニティ開発ディレクターAsa Dotzler氏が「ついにIEが復活したようだ」と評価。16日(米国時間)のブログで「Welcome back, Microsoft!」というメッセージを送っている。

Microsoftは16日(米国時間)に、IE9のTest Driveページを通じて「IE9 Platform Preview」を開発者向けに提供開始した。IE9のWebプラットフォーム機能を評価してもらうためのプレビュー版で、開発者向けツールは揃っているものの、「進む/戻る」ボタンやお気に入り、フィッシング対策機能などWebブラウザとしての機能の多くが省かれている。