宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月12日、5月18日に打ち上げが予定されている金星探査機「PLANET-C(あかつき)」および小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」の機体公開を行った。

金星探査機「あかつき」の観測イメージ図(提供:池下章裕)

ソーラー電力セイル「IKAROS」のイメージ図(提供:JAXA)

あかつきに関しては、2009年11月にも同様に機体の公開を行っている。今回は熱真空試験を終えた状態での公開となったが、前回の公開時にその目的や機能などについては紹介させていただいているので、今回はそこから新たに追加された部分をお伝えしたい。

あかつきの概要

とは言っても、機体性能や搭載機器などが打ち上げ直前で仕様変更ということはなく、運用の体制や計画、打ち上げまでのスケジュール、メッセージキャンペーンに関することなどが追加された主なものとなる。

運用としては、主・副運用局として臼田ならびに内之浦を活用するほか、打ち上げ/巡航/金星軌道投入フェーズ支援局としてDeep Space Network(DSN)局(Goldstone、Canberra、Madrid)を、VLBI軌道決定実験参加局としてESA局ならびに国内のVLBI局が参加することとなる(国内VLBI局は受信のみ)。

「あかつき」の運用局

また、打ち上げまでのスケジュールは、3月17日に種子島宇宙センターに搬入、同30日に打ち上げ前最後となる詳細電気試験の実施、4月に入って2日に地上系まで含めた運用リハーサル、同27日に最後の外観検査、同29日にロケットに取り付けるためのアダプタと探査機の結合作業を実施、5月4日にフェアリング結合を行い、同9日にロケットとフェアリングの結合、そして同18日午前6時44分14秒に打ち上げ(予定)となる。

打ち上げ後は約0.5日後に第1可視、同1.5日後に第2可視、同2,5日後に第3可視を行い、カメラに地球を撮像し、カメラの正常動作などを確認するほか、金星までの航行中は2μmカメラ(IR2)による黄道光の観測が行われる。そして打ち上げから約半年となる12月上旬(5月18日打ち上げで12月5日頃の見込み)に金星周回軌道に投入され、翌2011年1月ころをめどに定常運用が開始される計画となっている。

金星到着までの道のり

JAXAの宇宙科学研究本部 PLANET-Cプロジェクトマネージャである中村正人教授

なお、一般から募集したメッセージをアルミプレートに書き込み、あかつきに搭載、一緒に金星まで届けるというキャンペーン「お届けします! あなたのメッセージ 暁の金星へ」が2009年10月23日から2010年1月10日まで実施されたが、国内外から約26万人の応募があり、作成されたプレートは90枚におよぶという。これについて、JAXAの宇宙科学研究本部 PLANET-Cプロジェクトマネージャである中村正人教授は、「皆様から本当に多くのメッセージをいただきました。そのお力をお借りいたしまして無事、あかつきには金星まで飛んでいってもらいたいと思っています」とコメントを寄せる。

技術的な解説を行った宇宙科学研究本部 PLANET-C プロジェクトチームの今村剛准教授(左)と同本部宇宙航行システム研究系の津田雄一助教(右)

また、同プロジェクトチームでプロジェクトサイエンティストを務める今村剛准教授は、あかつきのメッセージにボーカロイドの初音ミクとSDデフォルメキャラのはちゅねミクを掲載して金星に送ろうという有志によるキャンペーンにより最終的に1万4,000名弱の署名が集まり、3枚のプレートがあかつきに搭載されることになった件に対し、「初音ミクというものを元々は知らなかったんですが、最終的には面白いものができたと思ってます。こうした活動を通して、金星に目を向けてもらい、結果として地球がいかに微妙な大気のバランスなどで成り立っているのかの理解を深めるところに興味を持ってもらえるきっかけになりうると思っています。今後もこういった動きが出てくると、元々宇宙に興味のある人以外も感心を持ってくれると思うし、宇宙は楽しいものと思ってもらえるようになると考えています」とより幅広い人に宇宙に興味を持ってもらえるきっかけになったことの感謝を述べた。

なお、IKAROSも同様に機体に搭載する応援メッセージの募集を行っており、こちらは当初予定の3月14日から同22日に延長が決定されたので、興味のある人は専用の応募サイトなどからメッセージを送ると良いだろう。

若田宇宙飛行士など各界の著名人からも「あかつき」のメッセージが寄せられている