【インタビュー】

神山健治監督が語る『東のエデン』の世界 - 『東のエデン 劇場版II Paradise Lost』、3月13日公開

4 『東のエデン』で伝えたかったこと

    糸井一臣  [2010/03/10]

    ――『東のエデン』はテレビ版が全11話で、劇場版が二部作ということで、1年にわたる大作になりましたが、その中で神山監督が一番伝えたかったことはどういったことですか?

    神山監督「一つの言葉には集約するのはすごく難しいのですが、僕らの世代は、この日本という国に生きてきて、間違いなく恵まれていたと思うんですよ。日本という国の歴史だけではなく、世界的に見ても、こんなに恵まれている状況が形成されたことはないんじゃないかなと思うぐらい、恵まれていたと思います。しかし、次の世代は、日本の本当に厳しい時代を生きなければならないかもしれない。もしかしたらそういう未来が待っているかもしれないし、実際にそういう可能性も語られていますよね。日本という国は、わりといろいろなものを捨ててしまう文化なんですよ。歴史がある国にしては、いろいろなものをどんどん捨てながらここまで発展して来た国で、そういった点では、本来あるべき歴史の深みのようなものを作れずに来てしまったのではないかと思っています。僕自身の人生でいえば、たかだか40年程度ですけど、毎回リセットしている場合ではないんじゃないかと (笑)。たとえばヨーロッパなどは、歴史の裏打ちがあることによって、経済的にはアメリカやアジアに抜かれてしまっている部分があっても、文化という面では決して後退していないと思うし、それ自体が生活と根付いているので、それを継承していく良さ、かつ新しいものを受け入れていく良さというものがあると思うんです。もともと新しいものを受け入れていく良さというのはこの国、日本にもあったのですが、古い人間は、俺たちの時代でひとつ完結したのだから、もう新しいものを受け入れて変化したくないと言い、若い世代は昔のことは知らんと言う。そうなると、深みは増さないだろうなと。最終的に『劇場版II』を描き終えた段階で思うことは、そういうことでしたね。現在ニートと呼ばれている人たち、そして団塊の世代が、自分たちだけの世代で完結しようとしている部分について考えてみようということでスタートした企画でしたが、そういった世代が互いに断絶するのではなく、繋がっていくことによって新たな深みを手に入れていけば、まだまだこの国は捨てたもんじゃない。そんなことを感じてもらえたらいいな、というのが、『劇場版II』を終えた時点での僕の総括ですね」

    ――そのあたりが、滝沢の100億円の使い方というところにも繋がっていくのかなと思うのですが、ちなみに100億円を自由に使ってよいといわれたら、監督はどのように使いますか?

    神山監督「何にしますかね……。これまでも何回か聞かれているのですが、やはり物語を描いていくにしたがって、その質問に対する答えを出すのが難しくなりましたね。『あらためて100億円の使い方を熟考させていただきます』という答えはダメですか?(笑)」

    ――それでは最後に、『東のエデン 劇場版II Paradise Lost』を楽しみにしているファンの方へのメッセージをお願いします

    神山監督「いよいよ完結しますが、この『東のエデン』という物語に出てきた若者たちは、映画が終わっても、どこかでまた前に進んでいっているじゃないかと思える作品になっていると思います。ここで終わってしまうのではなく、ここから先を彼らは生きていくんだ、そんなことを、『劇場版II』をご覧になった皆さんにも想像してもらえたらうれしいなと思っています」

    ――監督の中で『東のエデン』は完結していますか?

    神山監督「してないのかなあ(笑)。まだまだ描きたいこともありますし、キャラクターたちともっと一緒にいたいという気持ちが、今でもあります」

    ――ありがとうございました



    『東のエデン 劇場版II Paradise Lost』は、3月13日(土)よりテアトル新宿、テアトルダイヤ、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次ロードショー。配給はアスミック・エース。

    (C)東のエデン製作委員会



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