グループウェアや社内ポータルなど、大抵の企業では何らかの情報共有のためのシステムを導入しているだろう。最近では、社内SNSや社内ブログが企業において情報共有を目的として利用されることもアル。

しかし、どんなシステムにしろ、導入前に考えていたほど、情報共有がうまくいっていないケースも多いのではないだろうか? 「思ったよりもユーザーが使ってくれない」、「導入したシステムの効果が見えてこない」などなど。

そこで今回、リアルコムの執行役員コンサルティンググループ担当/BP研究会担当の村田聡一郎氏に、情報共有システムの導入・運用に際して、よくありがちな失敗について話を聞いた。同氏は、企業内情報共有/ナレッジマネジメントのコンサルタントとして多数の国内外大手企業のプロジェクトに参画してきたという実績の持ち主だ。

【失敗1】情報共有システム導入の目的は情報共有を促進することだ

上のタイトルを見て、「何が失敗なのか? 当たり前のことではないか」と思われた方もいるだろう。一般に、企業で情報共有を進めるために導入するのが「情報共有システム」

村田氏は「情報共有はあくまで手段であって、目的ではありません」と話す。同氏はダイエットを例に説明してくれた。「ダイエットするとき、本当の目的は「体重を減らすこと」ではありませんよね。"モテたい"、"速く走れるようになりたい"、"健康になりたい"などが、ダイエットの本当の目的でしょうか。これを情報共有に当てはめてみてください。情報共有を行うことで、企業に何らかのメリットをもたらしたいはずです」

同氏は、「目的によって優先して解決すべき課題は異なり、それによって最適な手段も異なる」と指摘する。これについてもダイエットに当てはめて考えると、女性がモテることを目指しているのであればやつれて見えるほど痩せては意味がないし、また、速く走ることが目的の場合は筋肉も付けながら脂肪分だけを落とす必要がある。

営利企業の場合、突き詰めると、情報共有の目的は「売上増」、「コスト減」、「リスク減」の3つしかないという。これら3つの課題に各組織の課題が結び付き、それを解決する手段の1つが「情報共有」となる

なお、「売上増」という1つの目的も、営業部門、管理部門など部門が異なると、課題が異なってくるため、部門ごとに分けて考えなければならない。

「目的、課題、そのための解決方法をツリー構造を用いて表示すると、部門間の課題の関連性など、いろいろなことが見えてきます。私たちはこのツリーを"GIS(Goal-Issue-Solution)"と呼んでいますが、課題を短期で見る場合、長期で見る場合、部門で見る場合など、さまざまなケースで利用できます」

【失敗2】情報共有システムは自社のニーズに合わせて作りこむ必要がある

ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズが簡単にできることをうたっているソフトウェアも少なくない。「自社のニーズにマッチさせること」のどこがよくないのだろうか?

村田氏は「基幹系システムであれば、自社の利用形態に応じて作りこむことは大切です。しかし、情報系システムは机上でどれほど検討しても、ニーズに100%こたえることはできません」と語る。

情報系システムは設計や仕様の善しあしよりも、実際に使われて初めて価値を持つのだという。「ユーザーの環境はどんどん変化しますし、ITの進歩は早くすぐれたシステムがどんどん出てきます。その時、ガチガチに作りこんだシステムでは、そうした変化に柔軟に対応することができません」

同氏は、「作る」から「使うへという考え方はクラウドコンピューティングがいい例だとして、「今は、システムを所有しなくても十分やっていける時代です。開発に必要な人件費や期間など、むしろ、システムを所有して作り込むほうがリスクが高いと言えます。情報共有はもっと身軽に行われるべきではないでしょうか?」という。