MWC2010の会場。2月14日~2月19日にスペイン・バルセロナで開催された

今回のMobile World Congress(MWC)は、スマートフォンが話題の中心だった。ただし、注目されていたのは、ハードウェアとしてのスマートフォンというよりも、アプリケーションが実行可能な高性能端末としてのスマートフォンだ。

携帯電話が普及し、契約数が人口に等しくなりはじめると、大きく新規契約を増やすことが難しくなる。また、通話利用も頭打ちの傾向が出る。そこで期待されていたのがデータ通信だ。3Gの導入で高速通信が可能となり、LTEの導入でさらに高速化も可能になった現在、データ通信は、大きく成長が期待できるビジネスが待望されている状態だった。

そこに1つの可能性を見せたのが、iPhoneのAppStoreだ。短期間に開発者を集め、多くのアプリケーションを集めたAppStoreは、いまやすべてのキャリアやハードウェアメーカーが注目するカテゴリといえる。ここでは、こうしたアプリケーションの配布の仕組みを「アプリケーションストア」と総称することにする。

このアプリケーションストアは、携帯電話だけでなく、WindowsやLinux、ネットブックなど多くのカテゴリで、ソフトウェア、ハードウェアビジネスの形として注目されている。たとえば、インテルは、Atomプロセッサを使ったネットブックなどに向け同社が支援するMoblin、Windows用のアプリケーションストアを立ち上げている。スマートフォンでは、すでにBlackBerryやAndroidがアプリケーションストアを立ち上げ、そのほかにもアプリケーションストアを計画しているところは少なくない。

ソフトウェアを売るというのも1つのビジネスだが、Appleの場合、ハードウェアメーカーがアプリケーションストアでビジネスを行うという1つの形を示した。これまで、多くの携帯電話向けのサービスは、事業者が主導してきたが、ここにきて、ハードウェア(というよりもシステム)メーカーが、アプリケーションストアでビジネスするという形が出てきたわけだ。

アプリケーションはシステムに依存し、多くの携帯電話がARMプロセッサを使っているからといってもアプリケーションは、オペレーティングシステムなどに強く依存する。つまり、システムを提供するハードウェアメーカーが採用するオペレーティングシステムに依存したアプリケーションストアが必要になる。そうなると、多数の端末を扱う事業者が、複数のシステム用のアプリケーション開発をサポートし、アプリケーションストアを運営するのは難しくなる。それよりも、運営は、ハードメーカー側(あるいはオペレーティングシステム側)として、その「ショバ代」を取ったほうが効率が良い。マイクロソフトのWindows Marketplaceでは、販売代金の一部を事業者に還元したり、決裁を事業者側に行わせるなどの方法を考えているといわれている。