新しいLOOX Uに開発計画が始まったのは2008年12月。ちょうど旧モデルがリリースされたのと同じタイミングだ。議論を重ねていくうち、旧モデルから主要な購入層である30~40代の男性をメインターゲットにすることが決まった。小林氏は「LOOX Uは外に持ち出してネットやデータ編集など、色々やってもらおうというのがベースにあります。ターゲット層の生活スタイルを想定し、これまで以上に気軽に持ち出してもらおうとしたとき、スーツの内ポケットに入るマシンにしようというアイデアが出ました」と語る。

奥行きと厚みの制限がない段階では、薄型で画面を広げたタイプも想定されていた。モックができるたびに熱い論議を繰り返したという

しかし、すぐに紳士服の内ポケットに統一規格がないことが判明した。だからといって「10~20cm、もしくは30~40cmの幅で」などと推定で適当に作るわけにもいかないので、企画担当の山岸氏は多数の紳士服店で実測に回る日々を送る。「身分と趣旨を説明して測らせてもらいました。断られるお店もけっこうありましたが、どうにか500着以上測定して、国内の9割以上のスーツで確実に入るサイズを導き出したんです。パソコンをタテに入れるとして、奥行きと厚みの合計が130mm以下なら大丈夫でした」

地道な努力によってサイズが確定し、デザインを担当する富士通デザインの益山宜治氏の出番となった。ここでも奥行きと厚みの条件と旧モデルからの脱却を意識して、思いつく限りのモックを作ったという。取材時に不在だった益山氏のコンセプトを小中氏が代弁する。「ビンテージ本を意識して、ヒンジがあまり浮きでないデザインに行き着きました。本みたいなカタチをしていて、開きやすいというコンセプトです。ちなみに、外観はバイクのヘルメットを意識しました」

130mmの縛りが確定したあとは、特にヒンジの構造が意見を分けるポイントとなり、ここでも多数のモックが生まれた。チームの誰かが「悲しいけど、これ、全部ボツなのよね……」と言ったとか言わなかったとか