【レポート】

100年後の日本人はどんな顔? - 日本顔学会の原島博会長、"顔の秘密"を語る

人間「顔」じゃない―。そんな言葉もあるにはあるが実際に人の印象は「顔」でかなり決まるし、自分の「顔」からは一生離れられない。顔っていったい"何者"なのか? ライオン歯科衛生研究所主催のNew Yearセミナーに参加し、東京大学名誉教授で日本顔学会会長の原島博氏の話を聞いてきた。

日本顔学会会長の原島博氏

原島氏が基調講演を行ったのは歯科医や歯科衛生士らを対象にした「ライフステージからみた健口美」がテーマのセミナー。原島氏は「コンピューター画像処理で探る顔の秘密―顔は口から始まった」と題し、顔が与える印象や日本人の顔の変化などをユニークな切り口で紹介した。

「平均顔」はいかにもそれらしい

「銀行員らしい顔」「東大生らしい顔」「女子アナらしい顔」……。そんな言い方をよくしてしまうが、そもそも「らしい」顔はあるのだろうか? 原島氏が紹介したのはコンピューターで画像処理をした「平均顔」の研究だ。「平均顔」とは「AさんとBさんの顔を足して2で割ったような顔」的発想で、たくさんの顔の写真を集め、顔形や皮膚の色を実際に平均化したものだという。同氏は東大大学院生、銀行員、プロレスラーなど職業別の「平均顔」を紹介した。

東大大学院生男子22人の平均顔

プロレスラー11人の平均顔

銀行員13人の平均顔

実に「らしい顔」が並んだ。さらに原島氏が、女子アナ、客室乗務員などの平均顔を見せ、その職業を聴衆に聞いたところ、すぐに答えが返ってきた。「女子アナと客室乗務員の顔の違いを口で説明するのはほとんど不可能だが、平均顔をみるとわれわれが頭に持っている(その職業の)イメージがすぐに出てくる」とのこと。「顔」はそれほど人の印象を決定づけているということになる。なお「平均顔」は、個々の顔の左右のアンバランスさなどが平均化されるため、均整のとれた顔になるという特徴があるとのこと。また「差別」に結びやすいという怖さもあり、研究には注意が必要だという。

昔の銀行員の顔は「威張っている」!?

原島氏は昔と今の日本人の顔も比較。明治時代の銀行員と今の銀行員の顔を比べると、明治時代の銀行員の方が偉そうなイメージが。同氏は「昔の銀行員と違い、今の銀行員は威張っているわけにはいかない。利子が少なくてごめんなさい、使いこみは絶対にしませんという顔をしなくてはならなくなった。平均顔にはその時代の職業のイメージも表れている」と説明した。また、明治の政治家と平成の政治家(小渕内閣)の平均顔の比較では、「明治の政治家の方がキリリとしている。今の顔は正直『普通の顔』。比較的経営者の平均顔に似ている」と分析した。女優については「映画の時代の女優は目が大きく遠くから見てもスターだと分かる感じの顔つきだが、テレビの時代になり、お茶の間で見て親しみのもてる顔になってきている」とのこと。映画からテレビというメディアの変遷により「女優顔」も変化しているという。

戦後ニューフェイス(山本富士子、岸恵子、久我美子)の平均顔

浅野ゆう子、浅野温子、鈴木保奈美の平均顔

日本人の顔が危ない!?

ところでこの「顔」、どうやってできたのか? 原島氏は動物の「顔」の誕生と進化について「口」に着目して概説した。同氏によると、顔のなかではまず「口」がエネルギーの取り入れ口としてでき、進化の過程を経て目、鼻、あご、歯、首、まぶたなどの器官が付け加わっていった。ヒトが直立歩行の結果手を使うようになると、本来のエネルギーの取り入れ口としての機能だけでなく、コミュニケーションの道具(メディア)としても大きな役割を果たすようになったという。同氏は現代人の「口」について「食生活の変化などで、エネルギーの取り入れ口としての機能が退化している」と警鐘を鳴らし、「口はコミュニケーションの最重要メディア。もっと大切にしてほしい」と呼びかけた。

さらに原島氏は100年後の日本人を予想したという「未来顔」も紹介。あごが極端に細いちょっと不気味にさえ感じる顔に、聴衆からは驚きの声もあがった。原島氏によると、日本人のあごは縄文時代にはしっかりしていたが、現在の日本人のあごはきゃしゃになっており、相対的にも小さくなっているという。「未来顔」は今までの50年間の変化がもしこのまま100年続いたらという仮定にもとづいたものだというが、原島氏は「逆三角形の顔の形になり『口』が退化している。未来顔は決して『いい顔』ではない。もてる顔であっても健康的ではない」と危惧した。

100年後の日本人の顔(?)

顔は環境で変わる

講演のまとめとして原島氏が提唱したのは「いい顔」をつくること。「顔は環境や気の持ち方によって変わる」と述べ、「コミュニケーションしているときの顔は『いい顔』。顔は単独では存在しない。見る人と見られる人の関係が大切だ」と説明。機械を相手にした3分間写真より、一流カメラマンが撮影した写真の方が見映えがいいことなどをその例にあげた。また、人は鏡などを使わないと自分の顔を見られないことを「神からの贈り物」と表現。「わたしたちは、今自分は『いい顔』をしていると、勝手に解釈する権利を持たされている。自分が『いい顔』をしていると思うときは、相手にとっても『いい顔』だ」と述べた。

■原島氏が提唱する「顔訓13カ条―いい顔になるために―」

  • 自分の顔を好きになろう。
  • 顔は見られることによって美しくなる。
  • 顔はほめられることによって美しくなる。
  • 人と違う顔の特徴は、自分の個性(チャームポイント)と思おう。
  • コンプレックスは自分が気にしなければ、他人も気づかない。
  • 眉間にシワを寄せると、胃にも同じシワができる。
  • 目と目の間を広げよう。そうすれば人生の視界も広がる。
  • 口と歯をきれいにして、心おきなく笑おう。
  • 左右対称の表情作りを心がけよう。
  • 美しいシワと美しいハゲを人生の誇りとしよう。
  • 人生の三分の一は眠り。寝る前にいい顔をしよう。
  • 楽しい顔をしていると、心も楽しくなる。人生も楽しくなる。
  • いい顔、悪い顔は人から人へ伝わる。

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