コード不要のゲームデザインツール「Kodo」、その狙いとは?

MicrosoftがXbox 360向けにXbox LIVEで配信しているゲームデザインツール「Kodu」のPC版『Kodu for PC Technical Preview』が公開されました。KoduはXbox 360環境で、子供や非専門家のゲームファンがコントローラだけでゲーム制作を可能にするツールで、プログラミング言語を使った開発ツールとは異なります。今回公開されたPC版は、Xbox 360専用コントローラに加えてキーボード(英語)とマウスに対応しています。

Koduは完全なビジュアル環境であり、プログラムコードを記述する必要はありません。マウスで画面上のオブジェクトを選択し、用意されている部品を組み合わせて物体の振舞いを作り上げます。ゲームに必要と思われるキャラクタやアイテムなどのコンテンツは最初から用意されています。

図01 Kodu メニュー画面

Koduをインストールした時点で、いくつかのサンプルが含まれています。KoduのゲームはWorldという単位で作られます。用意されたサンプルのWorldを読み込んでゲームを遊ぶことができ、編集画面から作りを調べることもできます。もちろん、何もないところからWorldを構築することもできます。

図02 収録されているサンプル

マップの編集やオブジェクトの配置もすべてマウスだけで行えます。オブジェクトを追加しようとすると図03のようなトーラス状のメニューが表示されるので、この中から画面上に配置するオブジェクトを選択します。もちろん、プログラム的な動作によってゲーム実行時に生成することも可能です。作成したゲームは、Kodu 環境内でシームレスに実行できます。

図03 メニューから選択してオブジェクトを配置

プログラムは、コントローラの操作やオブジェクト同士の衝突など用意されているイベントの組み合わせと、用意されている動作の組み合わせで作れます。例えば、オブジェクト上でマウスボタンが押されたときに、そのオブジェクトに会話(テキストを表示)をさせたり、ジャンプさせるなど、イベントと動作を組み合わせます。

図04 イベント発生条件と動作の編集

図05 ゲームを実行して動作確認

Koduの価値を考えてみる

Koduは誰が使うべきでしょうか。本格的にゲーム開発(プログラミング)を学習したい人にはkoduではなく、「Visual Studio」や「XNA Game Studio」のダウンロードを勧めるべきでしょう。koduはゲームデザインやゲームを動かすことに興味を持っている人に適したツールです。

プログラミングを必要としないKoduの操作性は、かつてMicrosoftがWebで提供していたサービス「Popfly Game Creator」を思い出させます。Popfly Game CreatorはSilverlightで実装された2Dベースのゲームデザインツールで、Koduのようにグラフィカルにゲームを組み立て、そのままWebで公開する機能を持っていました。このサービスは終了してしまいましたが、その試みはKoduに継承されています。

Koduは、一種のビジュアルプログラミング環境を目指しているようにも思えますが、現状で体験できるのはゲームエディタと呼ぶべきレベルのもので、本格的な開発環境ではありません。しかし、子供たちが特別な知識がなくてもXbox 360やPC上でゲームを視覚的に組み立てることができ、サンプルなどの既存のゲームを分解することもできる点は教育面で大きな価値があるでしょう。

現代のシステム開発は複雑すぎるため、おもちゃのように分解して内部構造を解析することが困難です。ゲームは多くの人が興味を持つ魅力的な産業ですが、その中身を理解するためには高額な機材と長い学習期間が必要になります。紙とペンだけで学習や創造が可能な文学や数学とは大違いです。Koduのような環境はゲーム作りの敷居を下げ、子供が興味を失う前にプログラムの仕組みやゲーム作りの楽しさを体験できます。

一方で、すべてのゲームファンを満足させる自由な表現力は持ち合わせていません。用意されているコンテンツの組み合わせでしかゲームを作れないため、独自のモデルやモーションを追加して、"アイドルが歌って踊るゲームを作りたい"というような要求をかなえることはできないでしょう。もちろん、これはTechnical Previewである現時点の話であり、将来はWeb上のコミュニティなどを通じてユーザーが作成したコンテンツを共有できるような仕組みが作られるかもしれません。