昨年9月に表面化したスカイチームによる"JAL引き抜き作戦"。世界の3大航空アライアンス(※)の1つであるワンワールドに加盟するJALをスカイチームに誘うこの作戦は、国土交通省が仕掛けたとも言われているが、7日、スカイチームのメンバーであるデルタ航空が都内で記者会見を行った。

JALはワンワールドを抜けて、ぜひスカイチームにおいでください……。

デルタ航空 バスティアン社長(左)とホーガン・アンド・ハートソン法律事務所のジェフリー氏。「デルタとJALがATI申請すれば羽田空港新滑走路供用開始の10月までに間に合う」(ジェフリー氏)

デルタ航空は、JALと提携すれば日米(太平洋)路線で60%程度の高いシェアを占めることができ、他のアライアンスに対し優位に立てる。ただ、この提携を実現させるには、JALの合意を得るのはもちろんだが、アメリカ運輸省に独占禁止法適用除外(ATI)を申請し、承認を受ける必要がある。デルタ航空とJALの提携は、その路線シェアの高さゆえに、ATI承認を受けられないのではないかとの声もある。JALがワンワールドに残るのか、それともスカイチームに移るのか。JALマイレージバンクのメンバーには特に気になる。

では実際、承認は受けられるのか?

デルタ航空関係者と共に来日した専門家、ジェフリーN.シェーン氏は、「アメリカ運輸省はオープンスカイ(航空自由化)の合意がATI承認の必要条件になると発言してきたが、昨年12月、日本とアメリカが航空自由化に合意し、扉が開かれた」。承認は空港の発着枠(便数)削減などの条件付きになる可能性もあるが、「アメリカ運輸省は公共の利益を優先するため、そうした自由競争を阻害する条件は付けない」。スカイチームと競合するスターアライアンスのANA、ユナイテッド航空、コンチネンタル航空の3社もATIを申請済みで、「スターアライアンスとの適正な競争をさせる意味でもデルタとJALのATIの申請は認められる」と見ている。

当事者のJALは経営再建中だが、「再建手段が公的整理でも私的整理でも、JALをサポートする方針は変わらない。JALにとっては、生き残れるかどうかではなく、今後いかに利益を上げていくかが重要。その点で、日本への渡航客数が年間100万人のワンワールドより500万人のスカイチームとの提携が有利」(エドワード・バスティアン・デルタ航空社長)だと説明する。

スカイチームのロゴ

確かに、ワンワールドのアメリカン航空は北米4路線なのに対し、デルタ航空は10路線を超える。それにデルタ航空は傘下に収めたノースウエスト航空のアジア路線もある。もし、JALがスカイチームに入ればこうした路線でもマイレージが貯められる。ただ、一方でワンワールドに加盟する他社、たとえばキャセイパシフィック航空のアジア・マイル会員はJALでマイレージが貯められなくなるなど、JALがどのアライアンスを選ぶかは日本の利用者に大きな影響を持つ。

JALマイレージバンクの会員だけでなく、ワンワールド系航空会社のマイレージ会員、あるいはデルタ航空などスカイチーム系のマイレージ会員も、やきもきしているのが現状だろう。「どのアライアンスにするかはJALが決めること。ただ、早い方がいい」というバスティアン社長の言葉は、利用者の言葉でもある。

(※)3大航空アライアンス…現在、世界にはワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスの3つの航空会社提携(アライアンス)があり、JALは現在ワンワールドに加盟中。同じアライアンスに加盟する航空会社は互いにマイレージを貯められたり、あるいはマイレージの特典を使って同じアライアンスの航空会社に乗れたりする。他に、共同運航や空港施設の共同利用なども行われている。なお、他に日本の航空会社ではANAがスターアライアンスに加盟している。