【レビュー】

BOOK REVIEW - "情報をデザインする"のに必要な理論とテクニック

    柳田健太郎  [2010/01/04]

    WEBデザインメソッド-伝わるコンテンツのための理論と実践』 (発行: ワークスコーポレーション、ISBN: 978-4862670649)

    『WEBデザインメソッド - 伝わるコンテンツのための理論と実践』は、ビジュアルデザイナーやライターとして活動している矢野りん氏の著書である。

    一般に「ビジュアルデザイン」というと、華やかなイメージがついて回り、表層を彩るテクニックばかりが注目されがちだが、その裏には、作り手の"ねらい"や"目的"があり、それを形に変えるための"理論"がある。本書は、そのあたりの詳細をWebデザインの観点から解説している。

    Webデザインに必要なのは、まずWebという媒体の特性を理解し、「情報デザイン」を行うこと。その上で、各種のテクニックを駆使してビジュアルデザインを行う。こうしたWebデザイン作業の"所作"を身につけるための基礎知識が本書には盛り込まれている。

    Webとデザイン、2つの基礎理論

    『WEBデザインメソッド』は以下のとおり、理論編6章と実践編にて構成されている。

     理論編
    • Chapter1: はじめに
    • Chapter2: カラーリング
    • Chapter3: テキスト表現
    • Chapter4: レイアウト
    • Chapter5: パーツのデザイン
    • Chapter6: 各種デバイスに必要なデザイン上の配慮
     実践編


    いずれの章も、すべての概念/関連用語/デザインの解説が1見開きで完結する作りになっている。また、各ページの上半分には概念図や具体例などが掲載されており、豊富なビジュアル要素を視界に入れながら解説を読み進められる。この点は書籍としての大きな特徴と言えるだろう。

    以下、各章の内容を簡単に紹介しよう。

    Chapter1: はじめに

    まずは、Webという技術の特性のお勉強である。デジタルメディアは紙とどう違うのか、などをその歴史や要素技術などとともに簡単に解説している。

    Webの分野に初めて足を踏み入れる読者は、本章で紹介されている用語や概念を理解するまでに時間を要するかもしれないが、是非ともこのあたりを理解してから先に進んでもらいたい。

    Chapter2: カラーリング

    続いてカラーリングに入る。この章では、色がユーザーに与える印象や、色の組み合わせがもたらす効果などを解説している。

    この章では特に、ページ上部に設けられたビジュアル欄が生きてくる。そこに掲載された具体例により、その効果が直感的に理解できるため、おそらく楽しみながら学べるはずだ。

    カラーリングは、Webに限らずビジュアルデザインの世界において非常に重要な要素。しっかり頭に入れておこう。

    Chapter3: テキスト表現

    カラーリングの後は、テキストである。ここでは、タイポグラフィと視認性について、具体例を示しながら詳しく解説している。

    現在のWebでは、紙媒体と違って、デザインに使用できるフォントに制限がある。そうした中でどのようにして視認性を確保するのか。そのポイントが紹介されている。

    Chapter4: レイアウト

    カラーリング、テキストとくれば、その次は当然、ビジュアルデザインにおける3大要素の最後の1つ、レイアウトである。

    この章は、実践で最も役立つ部分と言えるだろう。ベーシックなグリッドを使ったページ内の分割手法や、黄金比に由来するプロポーションの決定手法などは、すぐにでも取り入れたいテクニックの1つである。

    Chapter5: パーツのデザイン

    続いてパーツという話題に移る。Webデザインでは、紙のデザインとは異なり、デザインパーツを別途用意して配信しなければならない。そのため、Webデザインでは、このパーツの重要度が比較的高い。

    この章では、ナビゲーションメニューやアイコンといったWebサイトではお馴染みの要素がひと通り紹介されているほか、それらに対してユーザーが抱く印象や期待する動きなどを説明している。

    Chapter6: 各種デバイスに必要なデザイン上の配慮

    理論編の最後では、昨今のWebアプリケーション事情を踏まえた補足事項が解説されている。

    iPhoneやAndroid端末をはじめとするスマートフォン端末向けのWebページをデザインするうえでの留意点や、印刷される機会が多いWebページに対する注意事項など、PC以外の閲覧方法を意識したトピックスが盛り込まれている。

    実践編 - 実サイトを使って理論を復習

    理論の説明をひと通り終えた後は、実際に存在するWebサイトを例にとった実践解説である。

    理論編全6章で解説してきたポイントをプロのデザイナーはどのように活用しているのか。その詳細を具体例を示しながら解説している。頭に詰め込んだ理論を自分のスキルとして取り込むための重要なステップだ。

    "心地よい"Webサイトを創るために

    本書を読み終えて強く感じたことは、Webデザインとは、単なるビジュアルデザインではないということだ。冒頭でも述べたが、Webデザインでは「情報をデザインする」という意識が必要なのである。

    もちろん、見た目のデザインも利用者の使い勝手を大きく左右する極めて重要な要素だが、使っていて"心地よい"Webサイトを創るには、それだけでは不十分と言える。Webという技術の特性を理解しなければならないし、その特性を生かすための理論やテクニックも求められる。このあたりを身に付けて初めて「Webデザイナー」という肩書を持つことが許されるのだ。

    本書は、ビジュアルデザインを基本から丁寧に解説しているが、DTPからWebへと活躍の場を変えようと考えている方にとっても非常に有効な一冊である。"情報デザイン"の教科書としてぜひ手元に置いておきたい。

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