SIGGRAPH ASIA 2009においても……本家と比べればだいぶ規模は小さくなるものの……一般企業の出展セクションが存在した。

規模は小さかったが、一般的なPC関連イベントではお目にかかれないようなユニークな展示が数多く見受けられ、来場者の目を楽しませていた。

クレッセントブース~SF映画の武器みたい? 実は高精度非接触型ポータブル3Dスキャナ

多様な業務用バーチャルリアリティ製品の販売を手がけるクレッセント社のブースでは、新しく取り扱いを開始するハンディ3Dスキャナの「Optinum Color」が絶大な注目を集めていた。

実在する立体物を3Dオブジェクトデータとして取り込むのは、実は想像以上に困難だ。レーザースキャンという手段もあるが、設置とそのキャリブレーションに時間が掛かるし、取得できるのは頂点情報(3Dポリゴンデータ)のみ。最近では光学式の3Dスキャナが台頭してきており、テクスチャ(表皮のカラー情報)までを取得できるものが出てきているが、その場合でもスキャン対象物が3Dスキャナのスキャン範囲内に収まるものでなければならなかった。

クレッセントが国内販売を手がける、仏Noomeo社が開発した「Optinum Color」は、こうしたこれまでの3Dスキャナの常識を打ち破る製品となっている。

Optinum ColorはまるでSF映画に出てくるレーザーガンのようなデザインだが、実際右手で銃を握るようにして持つ。重さが約1.9kgあるので左手は下に添えて支え持つようなスタイルで活用することになる。

銃器のように構え、中央のビーム発射口のような部位をスキャン対象物に向け、右手の人差し指にあてがわれることになる引き金のようなものを引くことでスキャンが行われる。

対象物は静止している必要があるが、ユーザーは対象物の周囲を回りながらスキャンすることができる。対象物との距離やOptinum Colorとの相対角度の変位は気にする必要がない。まるでOptinum Colorを使って対象物を塗装するかのような感覚でスキャンができる。

作業を終えれば、ホストPCには、対象物の立体形状が3D頂点情報として取得されているのだ。

中央がグリッド投射用プロジェクタ。上下がCCDセンサ。CCDセンサ外周の黄色いものはLEDライト

テクスチャもこのレベルで取得可能

これまで大がかりだった3Dスキャンが、いうなれば「ハンズフリー感覚」でスキャンできてしまうのは画期的だ。

スキャン対象物の大きさの制限は現状、儲けられておらず、クレッセントのスタッフも「自動車程度の大きさのスキャンは容易」とした上で、原理的には人体から巨大建造物までのスキャンまでが可能だと話す。

気になる精度だが、高低誤差は1平方メートル内±50μm、2D位置誤差は200μm以下と、かなりの精度を誇る。

スキャン距離は425mm以内なので、対象物に約40cmの距離まで近づかなければならないが、これは別段厳しい制約でもないだろう。

さらに驚かさされるのはRGB各10ビットのフルカラーテクスチャ情報までを同時にスキャンできてしまう点。車ならばボディ表面のデカール情報まで、顔面ならばシワや唇、眉毛といったディテール情報までが取得できると言うことだ。

原理としては、中央のビーム発射口みたいなところは、プロジェクタになっていて、ここからNoomeo社が開発したある特殊なパターン形状のグリッドを投射する。プロジェクタレンズの上下に備え付けられているのがCCDセンサで解像度は1,024×768ピクセル。この2箇所のCCDセンサで、プロジェクタ部から投射されたグリッドを撮影し、これを画像解析して立体情報に変換する。CCDセンサで対象物のフルカラー映像を捉えているので、取得した立体情報を元に難なくテクスチャも生成できるというわけだ。なお、Optinum Colorの一回あたりのスキャン範囲はA4~A5用紙の大きさ程度。

価格はハンディ3Dスキャナと基本オペレーションソフトをセットにして約750万円。取得した頂点情報からポリゴンメッシュモデルに変換したり、その他のクリーンアッププロセスやポストプロセスをサポートするアプリケーションソフトが約250万円となっている。発売開始は2010年1月より。

人の顔のスキャンもOptinum Colorを構えつつ、ぐるりと一周すれば完了。大がかりな準備は不要。まさにカジュアルな3Dスキャニングだ

ミニカーをスキャン。対象物が小さくても問題なし

オフィシャルサイト
オフィシャルサイト