Webブラウザ拡張機能の開発者カンファレンス「Add-on-Con」で、Mozillaが2009年のアドオン関連のプロジェクトを振り返るとともに、今後の計画を説明した。

2005年にMozillaがaddons.mozilla.org(AMO)のデータを収集し始めてからこれまで、Firefox用アドオンのダウンロード数は17億件に到達したそうだ。今年は「エコシステムの活性化」と「デベロッパの拡大」を目標に、AMOのデザインを刷新し、アドオンのコレクションを作成する「Collections」、アドオン開発者に寄付できる「Contributions」を追加。5月にMozilla Labsが新たな拡張機能プラットフォーム「Jetpack」を発表した。

2009年のFirefoxアドオン関連の出来事を四半期ごとに整理

12月24日時点のFirefoxの最新版はバージョン3.5.6だ。現在ベータ5のFirefox 3.6は、順調に進めば年内にRC(リリース候補)版が公開され、来年1月に最終版がリリースされる。これに合わせてMozillaは1月に大規模なコンシューマ向けキャンペーンを計画しているそうだ。アドオン対応が気になるところだが、Mozillaによるとすでに68%のアドオンがバージョン3.6対応を完了させている。

ただしバージョン3.6になっても、アドオン・プラットフォームに大きな変化はない。節目となるのは、その次のFirefox 3.7だ。一例として、この日アドオン・マネージャーのプロトタイプが示された。タブによってアドオンごとにダイアログウインドウが切り替わり、レビューやスクリーンショットを含む詳細情報にアクセスでき、設定の切り替えなどをすばやく行える。

現在のFirefox 3.5のアドオン・マネージャー

Firefox 3.7向けに開発が進むアドオン・マネージャーのプロトタイプ

タブを使ってアドオンごとに詳細画面を切り替えられる。各アドオンの画面では削除、無効化のほか、自動アップデート、設定の切り替えなどが可能

アドオンマネージャーからアドオン開発者への寄付が可能。現在「Contribution」はAMOでのダウンロード画面に組み込まれているが、新方式ならユーザーがアドオンを使用した上で寄付を検討できる

Mozillaはまた、Firefox 3.7のタイミングでJetpackをアドオン機能に統合しようとしている。これまでアドオンの開発にはXULによるUIの定義やパッケージングなどを必要としていたが、Jetpackでは主要な機能やUIへのアクセスがAPIとして提供されている。そのためJavaScriptが書ければ、誰でも簡単にFirefoxのアドオンを作成できる。Add-on-Conのテクニカルセッションでは午前中にGoogleが「5分で作るエクステンション」を実演、それに対抗するように午後にAza Raskin氏がFirefoxアドオンの3分間プログラミングを披露した。

M3分どころか1分程度で次々にアドオンを作成するAza Raskin氏

Googleも「5分で作るエクステンション」を披露

開発者が増えるとレビューの待ち時間が増えそうだが、Jetpackでは作成したアドオンをマニフェストと呼ばれる概要とともに提出し、レビュープロセスにおいてはアドオンとマニフェストの整合性が確認される。レビュワーがプログラムの隅々までチェックする必要がなくなり、1つあたりのレビュー時間が大幅に短縮される。

またエンドユーザーもアドオンをより理解しやすくなるという。たとえばアドオンの安全性については、注意点を説明するのではなく、まず緑/黄/赤の3色を使って注意を払うべき度合いを伝える。

なおRaskin氏によると、現時点でのFirefox 3.7最終版リリースの見通しは来年第2四半期末だ。

「Fennec」でブラウザ拡張をモバイル機器に拡大

"Fennec"のコードネームで開発されているモバイル版Firefoxも拡張機能を備える。Firefoxと同じGeckoエンジンを搭載し、同じフロントエンド技術が用いられているが、XUL構造やUIが異なる。スクロールやズーミングの処理を軽くするためにプライマリサーフェイスに"canvas"を用い、小さな画面を効率的に利用できるようにコンテンツとUIが一緒にパニングする「Unified Panning」を採用しているのが特徴。Add-on-Conでは、FennecのUIを踏まえたアドオン機能の例が示された。

モバイル版Firefox "Fennec"

画面に触れた指を右にスライドさせるとウインドウのタブバーが現れる。「Unified Panning」で新しいウインドウに移動しない効率的なブラウジングが可能

左にスライドさせるとコントロールバーが現れる

コントロールバー→設定ボタンで、導入しているアドオン・リストにアクセス

アドオン(TwitterBar)の設定画面

ブラウザのアドレスバーからのツィートを可能にするアドオン「TwitterBar」