【インタビュー】
不況で始まり、不況のまま終わろうとしている2009年。国内企業のIT投資は"コスト削減"の御名の下に極限まで減らされた感がある。しかし、企業とは本来、成長していく組織体でなければならない。「いま、企業のIT部門にとって必要なのは"コスト削減"ではなく"コスト最適化"の意識」と、ガートナー リサーチ バイスプレジデントの堀内秀明氏は言う。ITベンダもユーザ企業もともに苦しい時間を過ごしたこの1年、痛みの中から得られた教訓を、企業はどうIT投資に生かすべきなのか - アプリケーション/ビジネスインテリジェンス(BI)を主な専門とする堀内氏にお話を伺った。
--明るい話題が少なかった2009年ですが、この1年を総括すると、企業のIT投資はどんな状況にあったといえるでしょうか。
昨年(2008年)のQ4を振り返ってみると、10月ごろ - いわゆるリーマンショックの直後あたりはIT投資の落ち込みはそれほどひどくありませんでした。ところが年が明けて2009年になると、急に冷え込みが実感として感じられるようになり、そのまま1年続いてしまったといえます。
私どもガートナーはこの1年、厳しい時代だからこそ、IT部門の"コスト最適化"を図るべきと企業に向けてメッセージを発してまいりました。不況にあって売上が減少に転じた場合、IT部門のバジェットが減ってしまうのは避けられないことかもしれません。ですが、その中にあって、減らしてはいけない部分も存在します。たとえば、コアビジネスに直結する部分、法令遵守やコンプライアンスにかかわる部分などです。つまりその企業にとってクリティカルな部分のIT投資は減らすべきではありません。そういった最適化をうまく行った企業、たとえばファーストリテイリングなどはこの不況下にあっても順調にビジネスを伸長させています。
では、削減すべきムダな部分はどこなのか。その解のひとつが、今年は仮想化というソリューションにあらわれていたと思います。物理的にサーバの台数を減らせば、人件費など管理にかかるさまざまな費用を減らすことが可能です。ソフトウェアのメンテナンス費用も安く済む。ITコスト最適化という枠の中で行う削減案としては、非常に明快なソリューションだったといえるでしょう。
--ソフトウェアのメンテナンスという点に関連しますが、ここ最近、ITベンダ、とくにソフトウェアベンダのサブスクリプションビジネスに対して、ユーザ企業側から疑問の声を聞くことが多くなっているように感じます。つまり保守費用が「高すぎる」という声です。実際に「バージョンアップをしない」という選択をした企業も出てきているようですが…。
運用/保守に関する費用はITベンダにとっての生命線です。一方、ユーザ企業から見ればERPにしろBIにしろ、あるいはデータベースにしろ、機能が多すぎて使いこなしきれないにもかかわらず、メンテナンス費用は下がる気配を見せない。このアプリケーションは本当に我が社にとって必要なのか、という疑問も生じてきてもおかしくない。つまり、お互い、まったく議論がかみ合わない部分であることは確かです。
ここでITベンダ側は従来のように「かかるものはかかるんだ」という強気の態度で臨むのではなく、ユーザ企業が払う高い保守料に見合った価値を、ユーザに対して本当に与えているのか、という視点に立ち返るべきです。はっきり言ってしまえば、ユーザ企業にとっては、バージョンアップで新しい機能が追加されたかどうかよりも、そのソフトウェアを導入することで売上が伸びるのか、ということのほうがよほど重要なのです。また、ユーザ側も、保守費用が高すぎてバージョンアップをしない、といったリスクを伴う選択をするのであれば、代替手段を用意できるのかを十分に検討する必要があります。
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