11月2日、法政大学の学園祭「自主法政祭」において、数多くアニメやゲームの楽曲を手掛ける志倉千代丸氏によるトークショー、「志倉千代丸トークショー 5pb.@法政Orange」が開催された。音楽活動にとどまらず、『CHAOS;HEAD』や『STEINS;GATE』といったゲームの企画・原作を務めるなど、クリエイターとして幅広いジャンルで活躍するだけでなく、5pb.では、代表取締役社長として辣腕を振るっている。そんな志倉千代丸氏が、学園祭を舞台に語った、業界の裏側、そして5pb.の内側を、"大人の事情"が許す限り、紹介していこう。

法政大学の学園祭に志倉千代丸が登場

5pb.代表取締役としての志倉千代丸

■会社を立ち上げたいきさつ
もともと、ヒューマンという会社でゲームを作っていて、その後、サイトロンという会社で音楽を作っていたのですが、自分の経験を活かせる仕事って何だろうって考えたときに、ゲームと音楽の両方をできる会社を作りたいと、当たり前のように思ったんですよ。

ちなみに5pb.の音楽事業部はDivisionが1から4まで、プロデューサーが4人いて、4ラインあり、ゲームはDivision1から5までの5ラインあります。セガさんのAM1研とかAM2研という呼称に憧れてました。それで、たとえば「俺はDivision2だ!」って主張するようなプロデューサーがいれば良いのですが、ウチには正直あんまり主張するスタッフがいないんですよね。良くも悪くも(笑)。でもやはり、「メモリーズオフ」というラインは毎回Division1でやるとか、乙女ゲーだったらDivision4でやるとか、何かそういうDivisionごとのカラーを出せればいいなと思って、この手法を実践しています。

■5pb.の名前の由来
「The Five powered & basics.」の略で、"五感"という意味を持っています。人間って絶対に五感からしか感動できないじゃないですか。耳から感動するか、目で感動するか、他にも味とか、香り、触感も含め、その全ては五感の範疇。それ以外から感動する事はできないんですよ。その"五感"というものを「5つの基本の力」という言葉で表し、それを会社名にしました。

■志倉千代丸の経歴
ヒューマンという会社に入っていたんですけど、この会社を知っている人はいますか? ああ、パラパラだな、淋しい。『ファイヤープロレスリング』とか『フォーメーションサッカー』とか『ヒューマングランプリ』などがあったんですけど、すごく売れていたんですよ。『ファイヤープロレスリング』なんか累計で数百万本という世界。今思えばヒューマンも一時期は儲かっていたんだろうなと、すごく思うんですけど(笑)、その当時ゲームが好きで、ヒューマンという会社に入って……。

ちょっと脱線しますが、『ファイヤープロレスリング』からはじまって『爆走デコトラ伝説』という作品までヒューマンにいたのですが、その間に『アポなしギャルズ お・り・ん・ぽ・す』というね、ぶっちゃけナイスなクソゲーがあったんですよ。本当にクソゲーで、そのゲームのタイトルがファミ通さんで、「お店で買うときにタイトルをいうのが恥ずかしいで賞」をとったんですよ。確かその年の大賞。で、そのゲームの作品名っていうのは、実は僕が考えたんですよ(笑)。当時、「電波少年」という番組があって、「アポなしサンタ」という企画が流行っていたんですね。まあ、言葉は悪いですがそれをパクっただけというような……(笑)。いやあ、恥ずかしかった。

あとヒューマン時代でいうと、『御神楽少女探偵団』というのがあったのですが、ファミコンやスーパーファミコンの時代から、PCエンジン、メガドライブになり、世の中がCD-ROMブームみたいになったタイミングがあるんですよ。この業界にとってはすごく重要な分岐点で、今まではBGM、要するにインストの曲しか作っていなかったのが、その時点から歌物もやらせていただけるようになったという、すごく貴重な年なんですね。

僕がヒューマンに入った理由はというと、『ファイヤープロレスリング』が好きだったから。もうすでにそのとき、「2」ぐらいまで出ていたんだけど、サウンドに関しては「ずいぶんと残念な音だなぁ」と思っていました。バンドをずっとやっていたので「俺がやったらもっとすげえだろう!」と勝手に自信満々だったのですが、実際にやってみたら、全然すごくなかった(笑)。ファミコンやスーファミの音源には今では考えられないような制限があるのですが、それを十分に解っていなかったというお粗末なスタートです。

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