ジオパークはどこにあるのか?

ジオパークは、ユネスコの支援する「世界ジオパークネットワーク(GGN)」(パリ)が推進する活動だ。設立は2004年。「日本ジオパーク委員会」がGGN傘下のジオパーク評価・認定機関として発足したのは、2008年5月のことである。

日本で最初に世界ジオパークに認定された地域のひとつ糸魚川。ここから静岡まで続く「構造線」というものにより、日本は東と西に分けられている。詳細は「フォッサマグナミュージアム」のサイトに記されている。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

そして、同年12月、「アポイ岳」「洞爺湖有珠山」(ともに北海道)、「糸魚川」(新潟県)、「南アルプス(中央構造線)」(長野県)、「山陰海岸」(京都府、兵庫県、鳥取県)、「室戸」(高知県)、「島原半島」(長崎県)の7地域が、日本ジオパークに認定。このうち「洞爺湖有珠山」「糸魚川」「島原半島」の3地域は、今年8月、GGNにより世界ジオパークに認定された。

さらに今年10月、「恐竜渓谷ふくい勝山」(福井県)、「隠岐」(島根県)、「阿蘇」「天草御所浦」(ともに熊本県)の4地域が日本ジオパークに認定され、日本ジオパークは計11地域となった。また「山陰海岸」は世界ジオパークの加盟申請地域となっている。

現在、ジオパークはヨーロッパや中国を中心に点在していて、世界ジオパークは約60地域。こちらも今後、世界各国に増えていくものと予想される。ジオパークの詳細、ガイドラインなどについては、日本ジオパーク委員会公式サイトを参照していただきたい。

すでに見られるジオパーク効果

始まったばかりの日本のジオパーク。課題はまだまだあるものの、すでにジオパークの名前を掲げたことによる効果も見られるようだ。探究心の強い熟年層旅行者、恐竜好きの子どもたちなどをターゲットにしたツアーも実施され始めている。中国や韓国などからの観光客もだいぶ増えてきたという。

糸魚川ジオパークの拠点施設「フォッサマグナミュージアム」。珍しい恐竜のウンコの化石やヒスイの原石などが展示されている。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

ジオパークとは、いわばひとつのブランド。世界遺産に登録された町や地域が、これだけ注目され、旅行者が訪ねるようになったのも、世界遺産というブランドがつけられたからにほかならない。ジオパークの認知度が高まれば、同様の現象が起こることは想像できる。ジオパークという言葉が頻繁に聞かれるようになり、世界遺産同様の注目を浴びるのは、もう間もなくのことかもしれない。

日本最初の世界ジオパークはどんなところ?

実際に日本のジオパークはどのようなところなのだろうか。詳しくは、各地のサイトを見ていただきたいが、ここではごく簡単にご紹介しよう。

●糸魚川 - 日本を東西に分けるフォッサマグナ

フォッサマグナという言葉、学校の授業で習い、覚えている人も多いのではないだろうか。「大きな溝」を意味するラテン語で、日本の東と西を分けるこの地質学的な溝が糸魚川ジオパークの大きな特徴だ。

高浪の池と明星山の風景。小滝川ヒスイ峡を含む一帯は、白馬山麓国民休養地に指定されていて、憩いの場となっている。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

天然のヒスイも見つかるといわれる青海海岸。珍しい石も多い。また美しい夕陽が見られるスポットとしても人気がある。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

テーマの異なる24の見どころが点在しているが、まずは拠点施設である「フォッサマグナミュージアム」で、全体像をつかみたい。糸魚川周辺では、縄文時代からヒスイ文化が始まっていた。小滝川ヒスイ峡は日本最大のヒスイ原産地であり、その一帯は高浪の池など見どころが集まっている。日本海の青海ヒスイ海岸も美しい石や絶景に恵まれていて、観光スポットとなっている。

日本海と言えば、やはりカニは外せない。ベニズワイガニは、アンコウ、甘エビなどとともに糸魚川の名物だ。実はこれら魚介類の生息も、フォッサマグナと大きく関係しているという。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

水や米も地形によって育まれたもの。新潟でも最も歴史のある酒造「加賀の井」は、江戸時代の慶安3(1650)年創業の老舗。参勤交代の際、加賀藩の本陣が置かれたことが酒銘の由来とされる。写真提供:糸魚川ジオパーク協議会

●洞爺湖有珠山 - 変動する大地

約11万年前にできたカルデラ湖の洞爺湖、約2万年前に誕生し、2000年の噴火も記憶に新しい有珠山。その名の通り、昭和に誕生した昭和新山など、洞爺湖有珠山ジオパークでは、まさに変動する大地を知ることができる。

洞爺湖有珠山ジオパーク。空から見ると、その雄大さがよくわかる。フットパスなどもあり、大自然を体感することができる。写真提供:壮瞥町エコミュージアム推進室

有珠山の勇姿。洞爺湖有珠山地域は、数10年に1度の割合で激しい変動を見せてきた。写真提供:壮瞥町エコミュージアム推進室

●島原半島 - 火山と人間が共存

洞爺湖有珠山ジオパーク同様、火山と深くかかわるジオパークとして世界的にも珍しいのが島原半島ジオパークである。日本で一番新しい平成新山、溶岩ドームの崩壊跡や断層地形など、ダイナミックな景観が広がっている。

約220年前に大崩壊を起こした眉山と崩れた土砂によってできた九十九島。写真提供:島原市商工観光課ジオパーク推進室

雲仙温泉のジオツアー。ふだんとは違った角度から温泉を知ることができる。写真提供:島原市商工観光課ジオパーク推進室室