Photo01:ViXSの創立者の1人でCEOのSally J.Daub氏

動画トランスコーダを扱うカナダのファブレスベンダであるViXS Systemsは2009年11月30日、カナダ大使館で記者発表会を開催し、同社の最新製品である「XCode 4105/4115」を公開した。

まず挨拶に立ったSally Daub氏(Photo01)が企業動向から過去の採用例までを簡単に紹介(Photo02~05)後、ViXS System Japanの東氏(Photo06)にバトンタッチ、同社が今年9月10日に発表したXCode 4000シリーズの説明に移った。

Photo02:ViXSはマルチメディア、というよりもMPEGフォーマットのトランスコーダに特化したメーカーというのが正確なところだろう

Photo03:同社の顧客は、見て判る通りどちらかというとハイエンド寄りの家電メーカーがメインである

Photo04:国内の場合、日立製作所のWOOOシリーズに搭載されたのが最初であるが、その後主要なメーカーはこぞって同社の製品を搭載した。実のところ、Panasonicのように自社でエンコード/トランスコードエンジンを手がけているメーカー以外はほとんどが同社のチップを採用しているのが現状である

Photo05:今年登場した、同社製品搭載の製品例。これはあくまでも国内での例を示したもの

Photo06:ViXS System Japan カントリーマネージャーの東正次氏

今回発表されたのは「XCode-4115」(Photo07)と「XCode-4105」(Phoot08)の2製品。基本的なトランスコード機能そのものに変化は無いが、従来は1ストリームのみだったトランスコードを同時に2ストリームまでトランスコードできるようになったのが一番大きな違いである(Photo09)。もっとも2ストリームのトランスコードが可能なのは4115のみである(Photo10)。この機能を生かして、2番組同時録画のPVRを構成したり(Photo11)、DLNAネットワークに入る形でのNAS/PVRといった構成も可能である(Photo12)。

こうしたネットワークアプライアンスとしての用途を重視しているためか、XCode-4000シリーズではさまざまな標準に対応したミドルウェアが提供される予定だ(Photo13)。4115のもう1つの使い方は、同時に複数フォーマットのトランスコードを行うというもの。例えばTV録画の際には、同時に携帯機器向けのフォーマットにも変換しておけば、「録画だけしておき、視聴は通勤途中に」なんて使い方が広がることになる(Photo14)。

Photo07:XCode-4115は従来と同じ大きさのパッケージのハイエンド品

Photo08:XCode-4105は若干パッケージが小さくなった

Photo09:#3の「CPUを内蔵」というのは、厳密には若干ニュアンスが異なるが、そのあたりは後述

Photo10:XCode-4115の主要な機能。細かいところでは、EthernetがGbEになったとか、XCode-3xxxシリーズはUSB 2.0 Hostの機能は入っていたがDeviceの機能は入ってなかったとか、細かく改良はある

Photo11:XCode-3xxxだと、再生しながら裏番組録画は可能だった(2ch入力は搭載している)が、2ストリームの同時トランスコードが不可能だった。このため、無理に録画する場合には片方がH.264、片方がMPEG2とか妙な制約がつくことになった

Photo12:内蔵するアプリケーションプロセッサを使ってDLNAやUPnPのサービスも可能になった

Photo13:UPnPはすでにCertificationを取得しており、DLNAやDTCP-IPについてもこうしたCertificationを取得してゆくとの事だった

Photo14:もっともデジタルコンテンツとなると、当然ダビング10の縛りが入るわけだが、その辺りはViXSのみならず機器メーカーのインプリメントも関係してくるから、ViXSだけでどうこうという訳にはいかないのだろう

一方XCode-4105の方は、同時にトランスコードできるストリーム数を1本に制限したもの。ただその代わり、動作時の消費電力は1.1Wに抑えられており、この結果USBバスパワーで動作するトランスコーダ・ドングルが実現できるとされている(Photo15)。

Photo15:ドングルに入れる程度には小さく省電力だが、携帯電話の中に入れるには大きすぎ、消費電力も多いというあたりが微妙な位置づけである。もっとも、NASとかDLNAサーバに2ストリームのトランスコードは不要であって、こうした用途とか低価格PVRなどには手ごろであろう

Photo16:XCode-4115のデモボード。これはDLNAサーバの動作デモを行った

Photo17:こちらはXCode-4105のデモボード。トランスコード能力が半分なので、入力端子も半分になっているのが判る

発表会では同時にデモも行われ、XCode-4115で2つのトランスコードエンジンを使い1ストリームを倍速でエンコードした例(Photo18)やDLNAサーバとして動かした例(Photo19)などが示された。

Photo18:"Time/picture = 15 msec"から、エンコードが66fps程度のスピードで行われている事が判る

Photo19:こちらはPhoto16のボードの先にBuffaloのLink TheaterをEthernetで接続し、Link Theaterからの操作でXCode-4115デモボードに接続されたHDDの内容をトランスコードさせて表示させた例

Photo20:Virage LogicのKaren Parnell氏(Product Marketing Director, Sonic Focus Products)

ところで今回の発表会では、ViXSと一緒にIP ProviderであるVirage LogicのKaren Parnell氏による「Sonic Focus」に関する説明も行われた(Photo20)。Virage LogicはXCode向けにキーとなるIPをいくつか提供しており(Photo21)、この関連もあって一緒に紹介を、ということである。Virage Logic自身はIP Providerで、さまざまな種類のIPを提供しているが、同社はまたさまざまな同業メーカーを買収、そのポートフォリオを充実させていることでも有名である。11月19日にも、NXPからCMOS関連技術を従業員込みで買収したことを発表しているが、有名なのはARC Internationalの買収である。

Photo21:このブロック図はXCode-3000シリーズのものだが、XCode-4000シリーズもほぼ同等の構成だとか

ARCはCustomer ConfigurableなCPUコアで、その意味ではXilinxのMicroBlazeとかAlteraのNEOSなどと近い存在ではあるが、FPGAではなくASICをターゲットにしているとか、より高性能にフォーカスしているという点では、例えばMIPSの様なFull Synthesizableのコアに近い。ただしMIPSや(競合する)ARMコアは命令セットをきちんと定義しており、これを改変するにはアーキテクチャライセンスが必要になるが、ARCはこうした命令の互換性よりも特定アプリケーションへの最適化を重視しており、命令の拡張とか変更も容易である。結果、XCodeの様なある種のアクセラレータにはARCコアを複数搭載し、フルカスタマイズして使うということは珍しくない。事実XCode 3000には都合5つ(うち2つがAudio、2つがVideo、1つがHostとの通信用など)搭載されている。