ビジネスでもっともよく使われるソフトウェアと言えば「Microsoft Office」だろう。さらにその中でもよく使われるのがExcelやAccessだ。Excelは簡易的なデータベース機能を備えているが、さらに細かくデータを集積したり、スクリプトを使ってデータを加工したいと思った時にはAccessを使うべきだろう。システム開発を行う部署に頼らずともユーザ自身でデータベースアプリケーションが作れるとあって、企業によっては多くのAccessアプリケーションによって業務が運用されているところも少なくない。だが、そうやって作られたアプリケーションは管理が煩雑になりがちで、新しいシステムへの移行を阻害する要因になりやすい。

「Zoho Creator」のトップページ。利用にはZohoアカウントが必要(またはGoogleアカウントも利用できる)

今のシステム化の流れとして、Webブラウザベースで動作するアプリケーションへと時代は移り変わっている。そんな中、利用OSを限定してしまったりバージョンによって動作しなかったりするのは不便だろう。それを回避できる可能性を感じさせるのが『Zoho Creator』(ゾーホー・クリエーター)。Web版Accessとでも言うべきWebアプリケーションだ。

機能について

ベースになる機能は、テーブルを作成し、そのデータをメンテナンスするためのフォーム作成。フォームにはテキスト/ 数字/ 通貨/ ドロップダウン/ 日付/ 画像/ メモ/ ファイルアップロードなど多数の形式が選べるようになっている。さらに別アプリケーションをはじめ、他のテーブルと連携したデータも選べる。そして出来上がったデータをビューを使って表示するという機能が基本になる。

フォーム作成画面。左側の項目を右側のフォームへドロップしていく

ビュー画面。項の表示/非表示を切り替えたり、フィルタリング設定を行う

一歩深く入ると、スクリプト機能を使いフォームでデータを読み込んだ時や送信時、完了時に自分で開発したアクションを実行することもできる。アクションは独自のSQLや独自の条件式、データアクセス、表示アイテムの操作が可能。外部のWebデータの取得やデータのポストも可能なので、マッシュアップのようにして外部サービスとの連携もできるだろう。

スクリプト画面。条件式を使ったりデータの操作をして独自のアクションを定義する

入力画面。日付フィールドを定義すれば自動的にカレンダーが表示されるようになる

テーマ機能。見た目の変更ができる

共有機能について

Webアプリケーションでよく見られる外部との共有、公開機能ももちろん備わっている。利用者や開発者として共有したり、その中でもアクセスできるフォームやビューを限定することもできる。社内に限らず取引先やパートナーとのデータ共有にも利用できるだろう。

アクセス権限設定。メールアドレスで共有相手を指定し、さらにアクセスできるテーブルやビューを指定できる

レポート

ユーザベースのデータベースアプリケーションの多くは、データを管理し、その結果をレポートにして出力するのが目的だ。Zoho Creatorではまだレポートの機能は備わっていない。だが、同じZohoが提供する「Zoho Reports」と連携させることができる。データエクスポート機能を使い、CSVデータとして出力するURLをZoho Reportsで随時取り込む形式だ。まだシームレスな連携というわけではないが、高度にカスタマイズされたレポートを出力できるようになっている。

データのエクスポートを使ってCSV出力を行う。その時のURLを指定すればデータが自動更新できるようになる

「Zoho Reports」の画面。取り込んだCSVを使ってレポートを定義する

他システムへのインポート/エクスポート

とくに重要なのが、これまで使ってきたMicrosoft AccessからZoho Creatorにいかに乗り換えるかだろう。Zohoでは、Access用Zohoプラグインを用意している。Windows上で動作するもので、Accessのファイルを選択してZoho Creatorへの移行を自動化するソフトウェアだ。

Windows向けに提供されているZoho Creatorへの移行ツール。日本語は使えないようだ

移行するのは、テーブルとそのデータをメンテナンスするためのビュー、元々登録してあったデータなので、マクロや独自に作り込まれた部分(フォーム/ クエリー/ マクロなど)は作り直さざるを得ない。また、レポートはZoho Reportsへエクスポートすることができるが、こちらも調整が必要になるはずだ。だが、すべてイチから構築し直すのにくらべると、大幅に工数は削減されるだろう。

さらにユニークなのが「Google App Engine」へのエクスポート機能があることだ。一部の機能に制限はされるものの、Zoho Creator上で作成したWebアプリケーションがそのままGoogle App Engine上で動作する。つまりZoho CreatorがGoogle App EngineのIDEとして動くようになるのだ。データベースを使ってWebアプリケーションを構築するうえで、そのベースになるものをグラフィカルに設計できるというのはとても面白い。

Google App Engineへ移行したサンプル。画面はほぼそのまま

マーケットプレイス

最後に重要なのがZoho Creator向けのアプリケーションマーケットプレイスの存在だ。Accessが多数の企業で使われていることからも、データベースアプリケーションへのニーズは高いのは分かるだろう。たとえば、CRM/ プロジェクト管理/ ToDo/ 社員管理など様々なWebアプリケーションが考えられる。それを開発し、提供、販売ができるプラットフォームが用意されている。すでに無料と有料のタイプを合わせて240件近く登録されている。iPhoneやAndroidのマーケットプレイスと同様に、自分で作ったWebアプリケーションをZoho上で販売し、収益を得ることができるのだ。これは開発者にとって興味深いプラットフォームではないだろうか。

Zoho Creator向けのマーケットプレイス。有料無料、様々なWebアプリケーションが登録されている

まとめ

現状ではMicrosoft Accessをそのまま入れ替えるのは難しいと言えるだろう。だがZoho Creatorは日々進化しており、Google App Engineのような新しい技術とも積極的に連携している。さらにZoho自身が提供する多数のWebアプリケーションとも連携し、利便性が高まっている。Webブラウザベースで動作すれば、プラットフォームやネットワークの縛りを越えて連携できるようになる。ぜひ一度体感し、その魅力を知っていただきたい。