ダイエットのためであったり、健康のためであったりとストイックなイメージの強い「断食」。そんな断食をホテルで優雅に楽しもうというプランが密かに人気を集めている。東京タワーのお膝元にある高層ホテル「ザ・プリンス パークタワー東京」が提供している「週末断食 2泊3日」を体験してきた。

同プランは、金曜日の午後から日曜までの2泊3日間を同ホテルに滞在し、高輪メディカルクリニックの監修のもと、食事制限やホテル施設でのアクティビティ、講習などを通して生活習慣の改善を図ることを目的としたもの。1回につき10名限定の定員で、既に3月末までは予約が埋まっている盛況ぶりだという。

地上33階建ての「ザ・プリンス パークタワー東京」内スーペリアフロアのツインルーム。19階より上の客室専用エレベーターで宿泊ルームへ

人気の秘密は、何と言っても「スーペリアフロア」と呼ばれる19~27階の従来1泊5万2,000円(2名1室)のダブルルーム、ツインルームが2泊3日で1名1室4万5,000円、2名1室で1名3万円で宿泊できる点(ただし、3名1室の場合は3~18階の1泊4万5,000円のデラックスツインを2泊3日で1名2万5,000円で利用)。これだけでも十分お得だが、宿泊中計5回分の食事とセミナー参加料が含まれ、ホテル内のスパ&フィットネス施設を滞在中フリーで利用できる他、客室内のテレビでオンデマンドビデオを無料で視聴できる。

提供される食事。食物繊維たっぷりのジュースやタピオカ入りの抹茶ミルクなど、噛むことで少量でも満足感を得られるように工夫されている

とはいえ、断食プランの名が示すように食事は従来とは趣を異にする。最終日の朝食を除いては、「健康ドリンク・スープ」が基本。いわば流動食のようなメニューだが、高輪メディカルクリニックが監修し、ホテルのシェフが調理しているという特別メニューだ。今回の取材で用意されたのは、2日目の昼食として出される「野菜・果物ジュース」(低脂肪ヨーグルト入り)と、夕食用の「ブロッコリーのスープ ホタテのピューレを添えて」の2種類でそれぞれ約220キロカロリーと約200キロカロリー。

豪華な客室や施設、配膳などに目を奪われて断食プランであることをすっかり忘れてしまっていると、思わず「えっ、これだけ? 1食分でも足りないよ!」と思わずこぼしてしまいそうなほど質素で少量な食事だ。しかし、秀逸なのが食器類。たとえ流動食であっても、洗練された盛り付けで、小さめのスプーンでお上品にすくって時間をかけて食べることにより、意外に満腹中枢は満たされるものなのだ。

野菜・果物ジュース(約220kcal)。ティースプーンほどの大きさのカトラリーで、ゆっくりといただく

ブロッコリーのスープ ホタテピューレを添えて(約200kcal)。"見た目を重視した"というだけあって食器だけでも"ホテル気分"。低カロリー高蛋白質のホタテをピューレ状にして加えることで味に変化を出しているという

もちろん、栄養面にも配慮され、カロリーを抑えながらもビタミンやミネラルなど不足しがちな栄養素がしっかり含まれている。何より高層階から東京湾や大都会のパノラミックな景色を眺めるという、それだけでも結構お腹はいっぱいになるものだ。また、繊維質が多く含まれているので、ついつい水が飲みたくなり、それでもまたお腹が満たされる。

食事は高輪メディカルクリニックのドクターと一緒にいただく。部屋のバルコニーからの眺めは高層ホテルならでは

その他、初日にはオリエンテーション、2日目にはウォーキングレッスンとセミナーが開催され、高輪メディカルクリニックのドクターらによる生活習慣病予防のための講義などを受講できる。

スパ&フィットネス。フィットネスルームでヨガレッスンなどを受講することもできる

フリーで利用できるジムやプールなどを熱心に活用する参加者多数

それ以外のフリータイムは、ホテル内外で自由に過ごすことができるが、十分な食事ができないにもかかわらず、プランの参加者はスパ&フィットネス施設で汗を流す人が多いとのこと。というのも、同ホテルのスパ&フィットネス施設を利用できるのは、入会金約200万円の会員もしくは宿泊客のみ。しかも、宿泊客の場合でもジムやプール、天然温泉、ジャグジー、サウナなど全施設を利用する場合で4,000円の料金。これが断食プランの利用者は滞在中フリーで利用できるのだ。「皆さん意識の高い方ばかりで、食べてなくても意外に走ったり運動されていますよ」と同ホテル広報担当の橋本綾香さん。

ホテル内のプリンス芝公園で東京タワーを間近に感じながら散歩も。周辺のジョギングコースマップも用意される

一方、体力に自信のない場合は、従来有料のオンデマンドビデオもフリーで視聴できるので、部屋でのんびりと過ごすこともできる。ちなみに当然だが、客室に備え付けの冷蔵庫やスナックカウンターには、ミネラルウォーター以外の飲料やお菓子類はすべて排除されている。

ところで、"ホテル"と"断食"という一見かけ離れた2つのキーワード。今回のプランを企画した理由について訊ねてみると「日常生活では成功しづらい"断食"を非日常の空間で体験することで、達成に近づける環境を整えること。また、シティホテルで週末に断食ができるという手軽さも魅力のひとつだと考えました」(橋本さん)。参加者は9割を女性が占め、年代は20代から高齢者まで幅広い年齢層にまたがるといい、「体質改善や生活習慣の改善のきっかけづくりとして来られる方も多いですね」(同)とのことだ。

また、体験した参加者からは「気分がリフレッシュされた」「体がリラックスして、良好」「ドクターの話やウォーキングレッスンはとても楽しく、勉強になった」といった感想が寄せられているそうだ。

グランドプリンスホテル新高輪の使用客室と「サウナ&ジャグジー」

なお、同プランはザ・プリンス パークタワー東京の他に、グランドプリンスホテル新高輪でも実施。4月からはプログラムや食事メニューの内容をリニューアルしたプランを提供していく予定だという。今後の開催スケジュールなどの詳細は、「週末断食プラン」特設ページにて順次公開される。