愛媛県は瀬戸内工業地域に属し、新居浜市には石油コンビナートがあり、今治市は造船業で知られる。

また、夏目漱石の著書『坊っちゃん』の舞台として有名な松山市も忘れてはならない。同市には、坊っちゃんでも触れている、日本最古の温泉とされる「道後温泉」がある。そして、道後温泉の共同湯である道後温泉本館は、宮崎駿の映画「千と千尋の神隠し」に登場する「油屋」のモデルになったと言われている。

道後温泉本館

今回は、そんな仕事と温泉の両方を楽しめそうな愛媛県を、四国の"出張土産第2弾"として紹介することにしよう(第1弾は香川県)。

由緒正しき素朴なお餅 - 「醤油餅」

トップバッターは「醤油餅」だ。このお餅は特定のメーカーが開発して販売しているお菓子ではなく、昔から松山市に伝えられているものだ。したがって、色や形もさまざまらしい。

調べたところ、元禄時代に松山藩主が子孫繁栄を願い、桃の節句に作らせて家臣に分け与えたのが、醤油餅の始まりだという。なかなか由緒正しきお菓子である。

米粉、醤油、砂糖、生姜などから作られていて、柔らかくてもちっとしている。餅というよりは、ゆべしを柔らかくしたような食感だ。味はやや甘辛く、懐かしい感じである。

素朴な甘さが魅力の醤油餅。緑、白、ピンクなどもあるらしい

タルトという名のロールケーキ - 「一六タルト」

「タルト」と聞いて、まず思い浮かぶのはパイやビスケットの円形の生地に果物やクリームを盛り付けた焼き菓子ではないだろうか? まさか、タルトといって、餡を巻いたロールケーキが出てくるとは思わないだろう。

しかし、愛媛県では、薄く焼いた白いスポンジで餡を巻いて作ったロールケーキのことタルトというのだ。このことを初めて知った時は軽く驚いた。

中の餡は、四国特産の柚子の風味が利いている。小豆餡と柚子のコンビネーションということで、甘さの中にも爽やかさがあり、さっぱりとしている。

一六タルトの歴史もまた古く、醤油餅に負けていない。江戸時代、松山藩主の松平定行が長崎から伝えたそうだ。

会社に買っていくお土産の場合、カステラなど1本物のケーキは包丁で切らなければならない点で敬遠されがちだが、一六タルトは切られた状態で販売されている。また、個別包装の商品も別に用意されており、会社用として便利だ。

柚子のさわやかな風味が特徴の餡。すでにカットされているので包丁いらずだ