12月6日まで、東京・原宿のTOKYO HIPSTERS CLUBにて開催されている「ネガティブ・アフターイメージ」展。これは、元ザ・ストーン・ローゼズのギタリストとして活躍し、現在はイギリスを拠点にアーティストとして活動するジョン・スクワイア氏による初の海外の個展だ。

ジョン・スクワイア個展「Negative Afterimages(ネガティブ・アフターイメージ)」

今回の展示において、氏は素材にキャンバスやカーディ紙を利用。タイトルにもなっている陰性残像をメインモチーフとし、繰り返しによって生まれる強度、また意味が変化する面白さを表現したという。焼き付けと式面を駆使したグラフィカルな構成は、ロシア・アヴァンギャルド的空間認識やアメリカ抽象表現主義的ミニマリズム要素などを内包しているかのよう。しかし、その一方で現代的な軽やかさも感じさせ、まさに「ジョン・スクワイアならでは」の作品を作り上げている。

このたびマイコミジャーナルでは、開催に合わせて来日中だった氏にインタビューを敢行。作品のテーマや制作のきっかけなどを聞いた。

ジョン・スクワイア John Squire
1962年イギリス・マンチェスター生まれ。幼なじみのイアン・ブラウンとともにThe Stone Roses(ザ・ストーンローゼズ)を結成。'96年の解散にいたるまで、マンチェスター・ムーヴメントの立役者としてUKロックシーンを牽引。解散後は、『Time Changes Everything』、『Marshall's House』などソロ作を発表する一方、ICA Londonで回顧展を開催するなど、現代アーティストとしても活躍する。写真はお気に入りだという作品「plain view」(2009)とともに
http://www.johnsquire.com/

「ネガティブ・アフターイメージ」=陰性残像の表現

――日本での初展覧会、おめでとうございます。今、どんなお気持ちですか?

「イギリス国外では初めての個展なので嬉しいですね。日本に来る時は長い旅路ですが、いつも旅行のように楽しいんです。ヨーロッパの国々とはまったく違う文化に浸れるので、新鮮な気持ちになれるんですよね。実は、音楽を辞めてからは海外に出る機会がなくなるかもしれない、と思っていただけに、再び来日することができて本当に光栄です」

――そんな日本での開催ということで、見せ方や作品選択に何か工夫などはしましたか?

「大きな違いはありませんが、イギリスで個展を行ったギャラリーに比べて今回は空間が狭いので、たくさんの作品を一気に展示する感じになったかもしれません。距離や時差もあったので、打ち合わせはかなり大変でした。しかも、イギリス国内の展示だと、普通は開催日ギリギリまで制作しているんですが、今回は設営の問題もあったのでかなり前に仕上げなければならなかったんです。でもやっぱりギリギリまでできなくて(苦笑)。しかも、時間がないにも関わらず、作品輸送のトラックが3日も遅れたり、ロンドンの空港で待ちぼうけをくらったり……。ただ、そのお陰で、途中で梱包を開けて作品に手を加えたりもしました」

作品にはすべて価格が設定されており、希望者は購入が可能。また、作品「jet」などをモチーフにしたオリジナルTシャツ3種やポストカードセットなど、ファン垂涎のアイテムも販売するという。ぜひ、この機会を逃さずにゲットしてほしい。左は「repetition with red」(2009)/(c)John Squire」、右は「jet」(2009)/(c)John Squire

――今回の展覧会名にもなった「ネガティブ・アフターイメージ(Negative Afterimages)」とは何を表しているのでしょうか。

「陰性残像のことです。物体を長く見て突然目を閉じたりすると、目の奥に残像が残りますよね。その感覚を、レイヤーを何層も重ねるような描写を使って、視覚的に表現したんです」

――どうしてそれを描こうとしたのですか。何かの出来事がきっかけになったとか……。

「イギリスで行った前回の展覧会から生まれてきたテーマと言えばいいでしょうか。その時は、消費社会へのメッセージを扱う中で、商品パッケージの引っかけ部を何層にも重ねて作品を制作したんです。それが、視覚的に面白い表現になると気づいたことが最初です。ですから、最初に完成した作品「untitled」(2009)が、今回のすべてのベースになっているんです(パッケージ穴を型抜きしている)。同じモチーフを繰り返すことで、独特の力や変化が生まれることが面白いなと。例えば、椅子をモチーフとした「sit」(2009)では、世の中の人々が働きすぎて人生を無駄にしている様子を、一見モチーフには邪魔に見える線を加えて表現したりね」

今回の展覧会のベースになっているという「untitled」(2009)/(c)John Squire

「sit」(2009)/(c)John Squire

――なるほど。今回は手漉きの再生紙を使われていますが、それも前回の「消費社会へのメッセージ」から閃いたのですか。

「とても興味深い指摘ですが、そういう理由ではカーディ紙を使ってはいないです。リサイクルペーパーなので、一つ一つに個性がある点が面白いから、という感じです」

――日本にもそのカーディ紙と似た工程を辿る"和紙"があるんです。ご存知でしたか?

「ローゼズ時代にファンからもらった手紙で、そういった見たことのないようなペーパーはありましたけどね。詳しくは知らないんですが……。この辺にいろんな紙が置いてあるところ知っていたら教えてほしいです(笑)」

「gravity」(2009)/(c)John Squire

「divided composition」(2009)/(c)John Squire