今年7月に発表されて以来、ナゾに包まれたままだった「Google Chrome OS」の姿が明らかになった。米Googleは19日(現地時間)、カリフォルニア州マウンテンビューにある本社キャンパスでChrome OSの技術概要を説明し、動作デモを初公開した。また同OSのプロジェクトのオープンソース化(Chromium OS)を明らかにした。

Chrome OSは、GoogleのWebブラウザ「Chrome」のコンセプトを進化させたものと言える。同社は、シンプルなWebページを読むためのツールにとどまっていたWebブラウザを、Webアプリを実行するためのツールに進化させるためにChromeを送り出した。Chrome OSでは「Webアプリをより快適に」という目標の追及をハードウェア・レベルにまで広げる。

Webアプリを快適・安全に利用できる環境を作るChrome OS

イベントでデモに使用されたネットブック

Chrome同様、Chrome OSも「スピード」「シンプル」「安全」の3つを特徴としている。詳細に触れる前に、まずこの日のイベントで明らかになった新情報を整理しておこう。

  • 電源スイッチを押してからChrome OSマシンが使用可能になるまでの時間は、TVをオンにするのと同じぐらいが目標

  • Chrome OSで動作するのはWebアプリのみ

  • Chrome OSで動作するWebアプリは、他のモダンWebブラウザでも動作する

  • データはクラウドで保存・管理

  • システム設定、ネットワーク設定、ブックマークなど、ユーザーデータは暗号化してクラウドに同期

  • Chrome OSマシンが壊れたり紛失しても、新しいChrome OSマシンにデータを同期するだけですぐに元の利用環境を取り戻せる。複数のユーザーによるChrome OSマシンの共有も可能

  • 起動のたびにシステムがチェックされ、自動的にOSのアップデートが行われる。悪意のあるプログラムによる被害が見つかればクリーンインストール

  • Chrome OS搭載製品は2010年ホリデーシーズンに登場予定

  • 最初の製品ターゲットは、フルサイズ・キーボードを備えたネットブック

  • Chrome OSは無料だが、ユーザーがOSイメージをダウンロードして、自身のPCにインストールすることはできない。Chrome OSマシンを購入する必要がある

もっとも議論になるのは「Webアプリのみ」という点だろう。PCユーザーにとってWebブラウザの重要性は増す一方であり、デスクトップソフトを利用しなくても、ブラウザ/Webアプリで日常的なPC利用はまかなえる。それでも、一般的なPCユーザーの利用スタイル全般をカバーできるほどではない。2~3年後は分からないが、今はまだ時期尚早の感がある。

2010年末に登場するChrome OS搭載PCは、従来のPCの代わりになる存在ではない。すでに高機能なPCを所有している人の2台目以降のPCが想定されている。たとえばメールをチェックするためだけにPCを起動するのは面倒だ。しかしスマートフォンでは画面が小さいし、入力しづらい。Chrome OS搭載PCはスマートフォンのようにすばやく起ち上がり、一般的なPCのように快適にWebアプリを利用できる。自分のPC利用を振り返ってみて、WebブラウザとWebアプリを長時間使用している人ならば、Chrome OS搭載PCは検討に値する。1人数台時代のPCである。

また詳細は後述するが、「安全な環境」もChrome OS搭載PCを利用する大きな理由になる。スピードと安全を実現するために、ハードウェアの条件は厳しくなる。たとえばストレージはSSDのみであり、GoogleのChrome OSではユーザーによる自身のPCへのインストールは認められない(Chromium OSプロジェクトを通じて派生OSが利用できる可能性はあり)。