Salesforce.comは、クラウドコンピューティング上でアプリケーションを稼働させるためのプラットフォームとして、「Force.com」を提供している。Force.com上では、同社の「Salesforce CRM」が利用できるほか、ISVや顧客企業が開発したアプリケーションを利用することも可能だ。これまで、ISVが開発したForce.comで利用可能なアプリケーションは800を超える。

ユーザー&デベロッパーカンファレンス「Dreamforce '09」(11月17日~11月20日開催)の2日目の基調講演にて、同社の会長兼CEOを務めるMarc Benioff氏は、「これまで多くのISVがForce.com上でアプリケーションを開発してくれたが、フォーチュン100に入るような企業にもForce.comに参加してもらいたかった。今、それが叶った」と、やや興奮気味に話した。

ヘルプデスク向けソフトを開発したBMC

「今回紹介するのは、皆さんもよく知っている2つの会社だ。まずは1社目を紹介したい」と述べたBenioff氏に導かれて登場したのは、BMC SoftwareのCEOであるBob Beauchamp氏だった。

Salesforce.com会長兼CEO Marc Benioff氏(左)とBMC Software CEO Bob Beauchamp氏(右)

Beauchamp氏は、「システムのインフラ部分は下に追いやって見えないようにしてサービスを提供することが大切だ。サービスデスクとは、いいサービスを提供するための場所であり、また、サービスのライフサイクル全体を管理する場所」と、ITサービスについて説明した。

続けて、同氏は同社がヘルプデスク向けソフトウェアをForce.comで2ヵ月もかけずに開発したことを明かし、同ソフトを披露した。

同ソフトでは、ヘルプデスク内の共通の問題を検索すること、アラートを一斉に流すこと、ダッシュボードを見ることなどができる。

また、ユーザーから電話を受けた際、トラブルが発生しているPCがどんなインフラに接続しているかを図示することも可能だ。

BMCの技術者は、「Force.comを用いたことで、インフラを気にせずに、アプリケーションの開発に専念できた」と話した。

BMC Softwareが開発したヘルプデスク向けソフトウェア「BMC Service Desk Express on Force.com」。リリースは来年の予定

アジャイル開発管理ツールを開発したCA

今回、Force.comに参加を表明したもう1つのビックベンダーはCAだ。同社のCEO、John Swainson氏も壇上に登場した。

Marc Benioff氏(左)とCA CEO John Swainson氏(右)

同氏は、「現在、大きな変化が起こっている。その変化は、"クラウド前"、"クラウド後"と表すことができる。当社もクラウドコンピューティングに取り組んでいる。PCはオフィスのデスクトップにあろうと、データセンターにあろうと、クラウドにあろうと、関係なく稼働できなければならない。また、クラウドコンピューティングによって、基本的な経済性が変わるだろう。これからは"共存する時代"になり、"ITはすべてクラウドに行くことになる」と、クラウドに対する見解を述べた。

こうしたなか、ベンダーはITの複雑性の管理をサポートしていかなければならないという。

Benioff氏は、Swainson氏がアジャイル開発に取り組んでいると説明した。「1992年にアジャイル開発のことを知ったが、実に素晴らしいツールだ。細かく処理できる点がよい。当社のアジャイル開発管理ツールも、小さな単位に分けることで管理しやすくしている」(Swainson氏)

CAは「CA Agile Planner」というアジャイル開発管理ツールをForce.com上でネーティブで提供する。リリースは来年前半を予定している。

CAが開発したアジャイル開発管理ツール「CA Agile Planner」。リリースは来年の予定

BMCとCAがForce.comに参入する企業を後押しするか?

基調講演とは別に、Salesforce.comのProducts and Marketing担当Executive Vice Presidentを務めるGeorge Hu氏に、BMCとCAによるForce.comへの参入について聞いてみた。

同氏は、「BMC、CAという大きな企業がForce.com上で各社の製品を提供するということは、Force.comが"技術的に成熟してきたこと"、"信頼できるプラットフォームであること"を示す」と述べた。また、これは同社の差別化を図る要因にもなるという。

そして、「クラウドコンピューティングに参入したいけれども、まだしてないベンダーはたくさんあり、2社の姿を見て、クラウドベンダーが増えることが期待される」と、同氏はBMCとCAによるクラウドコンピューティングの拡大を示唆した。