スーパーコンピュータ(スパコン)関係で最大の学会+展示会である「SC09」は、今年はオレゴン州のポートランドのオレゴン コンベンションセンターでの開催である。オフィシャルな開催期間は11月14日から20日までであるが、14~16日はチュートリアルやワークショップで、16日の夜のOpening Gala(展示会場のあちこちに食べ物や飲み物のブースを置き、参加者はビールなどを片手に展示ブースを廻る)が前夜祭、そして17日からが本会議というスケジュールである。

会場のオレゴン コンベンションセンター

レジストレーション風景(月曜の昼前という中途半端な時間なので比較的閑散としている)

そして、本会議はSC09委員長の開会の辞とそれに続くIntelのCTOであるJustin Rattner氏のオープニング講演で幕を開ける。学会としては20のセッションが開催され、261件の投稿の中から選ばれた58件の論文の発表が行われる。これに加えてMasterworksという企業からの8件の発表、8つのパネルディスカッションが行われる。また、出展している主要企業が行うExhibitor Forumという発表もあり、同じ時間に多くの発表が並行して行われるので、興味のある発表が重なってしまうことも多い。

さらに、スパコン関係では最高の栄誉であるSeymour Cray賞やSydney Fernbach賞の授賞式、高い計算性能を達成した論文に与えられるGordon Bell賞の授与などが行われる。そして、LinpackベンチマークによるスパコンのランキングであるTop500やGreen500の発表も恒例の行事である。

今年のSC09の目玉の1つは、アル ゴア元副大統領による19日のキーノート講演である。同氏は地球温暖化に対する活動でも有名で、An Inconvenient Truthの著者でもある。SCでは、登録した報道関係者は、会議の邪魔にならない範囲で、写真を撮ったり、録音を行ったりすることが許されているのであるが、このゴア氏のキーノートだけは、撮影、録音が禁止されている。

日本としての、もう1つの目玉は、国立情報学研究所の三浦謙一教授のSeymour Cray賞の受賞とその記念講演が行われることである。三浦教授はイリノイ大学で伝説のスパコンである「ILLIAC IV」の開発にも参加され、その後、富士通に入って同社のスパコンの開発に携わり、モンテカルロ法による輻射輸送問題のベクトル化解法を考案するなど、数値解法の開発と、それらを効率よく実行するスパコンハードウェアの開発をリードしたことが受賞理由である。なお、2006年に理研の次世代スーパーコンピュータ開発本部の渡辺貞氏が受賞しており、日本人としては2人目のSeymour Cray賞の受賞となる。

日本では、行政刷新会議の事業仕分けで次世代スパコンの予算が凍結判定になり、次世代スパコン開発の遅延が懸念される事態になっているが、今回のSC09では10PFLOPSのBlueWatersの利用に関するセッションが開かれるなど、米国のスパコンの開発と利用は着々と進んでいるという感じである。