NTT 代表取締役社長 三浦惺氏

「ICTは経済成長を支えるだけでなく、社会にも大きく貢献する」スイス・ジュネーブで開催された「ITU Telecom World 09」でNTTの社長兼CEO 三浦惺氏が、米国やカナダの政府関係者らと出席したパネルで語った。

三浦氏が出席したフォーラムは、"インフラのインフラ"としてのICTをテーマとしたもの。三浦氏はここで、ICTが経済と社会に与えるメリットについて見解を披露した。

経済成長では、「日本では、ICTはGDP成長の3分の1を占めている。それだけでなく、他の産業にも肯定的なインパクトを与えている」と三浦氏は述べる。ICTは日常生活に不可欠で、あらゆる産業や公共機関が利用しており、「新しいICTサービスの構築は世界経済の回復と成長において重要だ」とした。

社会面でのメリットは、ICTが推進する変換だ。「(人々の生活や企業活動は)これまで、時間、場所、情報などに縛られていたが、ICTが縛りを緩和した」と三浦氏。モバイルバンキングなどの革新的なサービスが生まれており、社会インフラ、社会環境でも重要かつ不可欠になっている。そして、テレワーク、TV会議、ホームICTサービスなどの可能性やメリットに触れた。

環境については、鳩山首相が掲げているCO2排出目標(2020年までに1990年比25%を削減する)で、「ICTはとても重要な役割を果たす」と述べた。だが、「ICTとCO2については、ICTによる削減とICTによる増加の2つの側面を考える必要がある」と三浦氏は述べる。TV会議やテレワークにより旅行が減る一方で、動画コンテンツによる需要に応じるために増設したデータセンターはCO2の排出を増やす。NTTグループとしては、「削減する部分に力を入れ、増えている部分は対策を講じる」と三浦氏、後者では具体的には、光ルータなどの新技術、空調の効率化、仮想化技術の導入などの対策を挙げた。そうした上で、「トータルでみるとCO2削減効果の方が上回っている。3%減という試算もある」と述べた。

「ICTは単に効率化の手段や便利さを提供するものではなくなった。戦略的なもので、企業にとってみれば経営戦略そのものだ。行政サービスにとっては、それなしではありえない」と語る。

NTTグループでは現在、NGNとして、固定では光ファイバ、モバイルではLTEを進めている。「2010年末にはIPベースのネットワークの準備が整う」と三浦氏。そこで、IPTVやビデオサービスなど、NGNの上で提供するユビキタスサービスの開発作業を進めているとした。

「グループとして、サービス創造グループを目指している」と三浦氏。「ネットワークキャリアとしての従来の仕事、高品質なネットワークの構築は、LTEを含むNGNを中心に進めている。同時に、これからはコンテンツだ。上位レイヤが成長する。これにより新しいサービスが生まれると考える」と述べた。たとえば携帯電話の例では、2006年には携帯電話と関連サービスの市場が8兆円だったのが、2010年には10兆円になるという試算もあるという。

新しいサービスが開発されると、ネットワークの信頼性が重要になる。プライバシーやセキュリティ保護の問題もある。ここでは、他社と協力して進めていくとした。

「今後はオープンとコラボレーションがキーワード」と三浦氏は述べ、サービス分野の開拓を進めていく意向を示した。