ヤマハは、アート界の第一線で国際的に活躍しているメディアアーティスト・岩井俊雄氏と共同開発した、21世紀の音楽インタフェース「TENORI-ON」シリーズのスタンダードモデル「TNR-O」の新製品発表会、および様々な演奏や用途に対応した高品位音源内蔵のオールインワンドラムパッド「DTX-MULTI 12」の新製品説明会を開催した。同会場内には、米NAMM首脳陣などのゲストも出席しており、その注目度の高さを伺わせるものとなった。

メディアアーティストとして意欲的に作品を発表し、数多くの賞を受賞している岩井氏のアイデアと、同社電子楽器技術のコラボレーションにより生み出された初代TENORI-ON「TNR-W」。同製品は、各国・各界のアーティストからも高い評価を得ており、国内では平成20年度(第12回)の文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門で大賞を受賞しているほか、海外ではアメリカ・ニューヨーク近代美術館(ミュージアム・オブ・モダン・アート:MoMA)の建築・デザイン部門のパーマネントコレクションに選定されている。

同社PA・DMI事業部DMIマーケティング部部長・武永伸一氏は、スタンダードモデル「TNR-O」(写真右)の発売に際し、これまで以上の幅広いユーザー層への「TENORI-ON」普及への期待や意義などを語った

今回発表されたTNR-Oは、従来機であるTNR-Wと比較し、作曲/演奏に用いる16×16個のLEDボタンに、鮮やかなオレンジ色を採用したことが大きな特徴だ。また、ボディーフレームの素材についても、マグネシウム合金から軽量な白色のプラスチックへと変更され、さらに本体背面にも備えられていた16×16個のLEDや、電池駆動を省略するなど、使いやすさとコストパフォーマンスを追求したモデルとなっている。

同製品では、同社の誇る高音質AWM音源による253種もの音色を搭載し、サンプリングしたオリジナルの音色データ(WAVEまたはAIFFフォーマット)を、本体内蔵のSDメモリーカードスロットを介してユーザーボイスに追加することも可能となっている。シーケンサー部には、Score、Random、Draw、Bounce、Push、Soloといった6種類の演奏モードを備え、用途やシチュエーションに合わせて切り替えたり掛け合わせることで、TNR-O1台で感覚的に多彩なパフォーマンスを行える。垂直方向が音階、水平方向が時間(音階の演奏順)を表し、押した音のボタンが光り、長押しするとその音階が自動演奏される。また音色や発音の長さ、演奏スピード、テンポ、音量等の調節はフレーム部のファンクションボタンで変更できるなどの基本操作・コンセプトは、TENORI-ONシリーズ共通とのこと。

TNR-Oの解説では、DJ unkTKによるTENORI-ONに搭載された6つの演奏モードなどの詳細な説明が行われた。また、同製品を使ったデモンストレーションも披露され、これまでのアンビエントな雰囲気のTENORI-ONサウンドとは違った、ハウスミュージック風な演奏が繰り広げられた

発表会には、自らをTENORI-ONアーティストと名乗るほどの英国シンガーソングライター「Little Boots」によるコメントも寄せられた。なお、これらのインタビュー映像は、同社Webサイトでも視聴することができる

TNR-Oは、2009年12月1日に発売される予定となっており、価格はオープンプライス。市場予想価格は7万円前後。これまでのTNR-Wは同社オンラインストア限定での販売となっていたが、今後は楽器店などでの展示・販売も実施されるという。また、TNR-Oの発売に合わせ、TNR-Wについても店頭での入手が可能となるため、より身近にTENORI-Oを体験する機会も増すだろう。

続いて、本発表会では、先日先行して発表されたばかりのエレクトロニックパーカッションパッド「DTX-MULTI 12」(価格9万4,500円/2009年11月25日発売予定)についての説明が行われた。同製品は、345(W)mm×319(D)mm×96(H)mm 、約3.3kgのコンパクトなボディーに、「MULTI-LEVEL」, 「MULTI-PLAY」, 「MULTI-PURPOSE」といった3つのコンセプトを実現する12個のパッド(打面)と高品位音源を内蔵したプロフェッショナルユースにも対応する電子パーカッション/ドラムパッド。同社フラッグシップシンセサイザー「MOTIF」シリーズから移植した多彩な音色に加え、新規サンプリングした打楽器音色やエスニック民族打楽器、即戦力の効果音など合計1,277音色が搭載されており、さまざまな演奏や用途に活用することができる。

ZAK BOND氏によるデモンストレーションは、同氏の日本語による軽妙なトークと相まって、DTX-MULTI 12のエンターテイメント性を十分に感じられるステージとなった。アコースティックドラムやパーカッションなどとの組合わせはもちろん、単体でのコンパクトなドラムキットとしても利用して欲しいとのこと

また、本体パッドの演奏は、ドラムスティックでの演奏に最適化した「スティックモード」、手で叩く演奏を想定し微妙な表現にも対応した「ハンドモード」、指での極めて繊細な演奏表現を可能にした「フィンガーモード」など、ドラム奏法から打楽器奏法まで幅広く選択することが可能となっている。さらに、別のパッドを押さえながら叩くことで、音をミュートしたり別の音に切り替えたりすることができる「ミュート奏法」などにも対応する。会場では、DTX-MULTI 12のデモンストレーターとして、伝統的なドラム・コーをショーアップした全く新しいエンターテインメントステージ「ブラスト!」などにも参加するドラマー/パフォーマー、ZAK BOND氏による華麗な演奏も披露された。同社Webサイトでは、同氏による解説ビデオの視聴も行える。

同社EKB・LM営業部営業推進室・室長である大村一弘氏は、「今回発表された2製品はいずれも、特別な鍛錬や知識を必要とせずに音楽を気軽に楽しめるものとなってる。こうした直感的に操作できる楽器を入り口に、楽器・音楽制作ユーザーのみならず、その裾野をさらに大きく広げ、より多くの音楽愛好者に対して製品をアピールしていきたい」と語った