【レポート】
企業経営を推進させる新たな武器として、ここ数年とみに注目を集めているBusiness Inteligence(以下、BI)。うまく活用すれば多大な効果をもたらしてくれる同技術だが、使いこなすにはそれなりのスキルとビジョンが必要。導入してみたものの、その効果は今ひとつ、という企業も多いのではないだろうか。
そうした経営者を救うべく、本稿では、SAP社内におけるBI活用事例をご紹介する。執筆は、SAP ジャパン 営業統括本部 インサイドセールス部 部長の金田博之氏。自社のBI製品「SAP BusinessObjects」を使いこなして営業活動の効率化を達成した本事例は、BIによる経営革新を遂げるうえでの1つの指針となるはずだ。
執筆者紹介
金田 博之(Hiroyuki Kaneda)
- SAP ジャパン 営業統括本部 インサイドセールス部 部長
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大学を卒業後、1998年にSAPジャパンに入社。マーケティング本部、金融・公共営業本部の事業企画、副社長(営業統括本部長)補佐を担当し、2006年8月から、SAPグローバルでの新営業組織「インサイドセールス」の立ち上げ責任者に抜擢。大手向けに提供していたERPを電話で中堅市場にセリングすると同時に、過去のSAPにない新しい営業モデルを短期間で開発し効果を出す、というチャレンジを任される。プロジェクトマネジャーとして、ステアリングコミッティーを結成。予算や組織、プロセス設計など6カ月の全プロジェクト工程を3カ月で完了し、この間SAP CRMコールセンターの導入も経験する。
景気の低迷が長期化する中、多くの企業においてビジネス変革の必要性が強く叫ばれるようになっています。そこでは、従来の慣習に捉われることなく、世の中の変化に柔軟に対応することができる新たなビジネスプロセスの構築が求められています。いわゆるビジネスイノベーションの創出です。
ITソリューションベンダーであるSAPもまた、その例外ではありません。その象徴ともいえるのが、グローバルで推進する中期経営計画に基づいて、2006年11月に発足したSAPインサイドセールスという組織です。
インサイドセールスでは、お客様への直接訪問に依存せず、電話やインターネット、電子メールなどのITインフラを駆使した非対面型のアプローチによって、お客様との関係を築いていきます。ただの電話オペレーターやテレアポではなく、プロの「営業」としてお客様への提案活動を行っています。これにより営業組織全体の機動力や生産性、そして市場へのカバレッジが飛躍的に向上します。
SAPインサイドセールスの目標は、大きくわけて2つあります。1つは、ビジネスの拡充計画に伴って営業担当者を増やしていくのではなく、最小限の組織で実践できる新しい営業モデルを確立すること。もう1つは、新たなニーズが生まれつつあるBUP(Business User Platform)という領域に対して、自らがモデル的な戦略を実践することで、市場におけるイニシアチブを高めていくことです。
SAPインサイドセールスには、テレマーケティング、テレセールス、プリセールスという機能があり、14,000社の潜在顧客とコンタクトしながら、従来の営業体制にはなかった膨大な数の企業との継続的な商談を進めています。そのための方法論として、重要な役割を担っているのが積極的なIT活用、なかでも革新的なBI活用の実践です。
SAPインサイドセールスでは、組織の立ち上げに際し、まずSAP CRM(SAP Customer Relationship Management)を導入し、お客様とのコンタクト履歴を蓄積していくとともに、Web ベースのデータ分析ツールであるSAP BusinessObjects Web Intelligenceを社内でいち早く導入。2カ月間という短期導入で要件定義、インストール、ユニバースの作成、レポートの作成、そしてユーザーへの教育を推進。積極的なBI活用に取り組むことで、「SAPでもっとも革新的で、もっとも早く成長するディストリビューションチャネルになる」ためのビジネスモデルを推進しています。
ただし、最新のITを活用しているとはいっても、限られた人的リソースで14,000社にもおよぶ営業活動をカバーしていくことは、決して容易なことではありません。この課題を解決するため、SAPインサイドセールスでは、「仮説型営業アプローチ」という手法を採用しています。
営業活動の精度を向上するための仮説の立案には、そのベースとなるデータが不可欠です。そこで重要な役割を果たすのが、SAP CRMに蓄積されたコンタクト履歴です。
これらをSAP BusinessObjectsと有機的に連携させることによって、たとえば、「景気が悪い中でも、どの業種が比較的堅調であるか」などといったことを即座に把握することができます。また、「すでに意思決定権者とコンタクトができている」案件を抽出することで、お客様に対して最終的な意思決定を促すための情報をタイムリーに提供していくことも可能になります。
もう1つ、SAPインサイドセールスが実践するBI活用のキーワードは、「経験則のモデル化」です。
たとえば、「2カ月間以上放置された滞留案件は、成約に至りにくい」、「5年前にうまくいかなかった商談も、ITのライフサイクルを考えると、再度コンタクトしてみる価値がある」、「キャンペーンなどのアンケートデータは、迅速にフォローしないと、生産性、費用対効果が低下する」など、これまで各営業担当の個人知として蓄えられていた経験則をSAP BusinessObjectsに組み込むことで、現場はBIを意識することなく、自然に過去の経験則を活用できるようになります。(図1、2参照)
また、SAPインサイドセールスでは、「経験則のモデル化」に続く取り組みとして、「予測型BI」の実現にもチャレンジしています。ここでは、ある業種で1,000社の顧客にコンタクトしたら、どれくらいの確率で案件化するかなどを過去データから統計的に分析することで、すでに次の四半期の戦略立案をスタートさせています。
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