既報の通り、KDDIが23日に発表した2010年3月期の上期(4-9月期)の連結決算は、売上高にあたる営業収益が前年同期比1.4%減、営業利益は同4.5%減の減収減益だった。だが、同社の小野寺正社長兼会長は、「通期では(前期比で)増益になる」と自信を示した。

小野寺正社長兼会長は、「通期では(前期比で)減収増益になる」との見通しを示した

事業別に見ると、移動通信事業では、営業収益が前年同期比1.7%減の1兆3,378億円、営業利益が同5.5%減の2,720億円となり、減収減益だった。携帯端末の販売台数は同14%減の477万台、9月末時点での端末在庫は83万台に減少した。9月末のau携帯電話の契約数は3,123万で、累計シェアは28.5%となった。

売上高にあたる営業収益が前年同期比1.4%減、営業利益は同4.5%減の減収減益だった

2010年3月期の第二四半期(7-9月)の販売手数料は、前年同期比80億円増の1,120億円。「7月と8月は2つの新しい定額サービス(指定通話定額・ダブル定額スーパーライト)導入に併せて、販売手数料を短期集中的に投入し、一般端末の拡販を展開した」(KDDI)ことが、増加の要因になった。9月単月では、販売手数料の平均単価は、7・8月の両月に比べて低下したという。

固定通信事業は、営業収益が前年同期比2.0%減の4,148億円、営業損失は223億円だった。9月末の固定系アクセス回線は570万、うちFTTHは132万だった。

KDDIでは、2010年3月期の下期(10-3月)の課題について、販売手数料に関しては、「端末調達コストの低減」「端末在庫のコントロール(適正化)」「機種変更促進によるリテンション強化」を図り、「販売手数料平均単価の低減を目指す」としている。具体的には、上期に41,000円だった端末調達コストを、下期には36,000円にまで低減することを目指している。

また固定通信事業においては、「メトロネットワーク」と「コアネットワーク」からなるネットワークのスリム化による固定費の削減を目指す。現在約250局ある局舎、約26,000キロメートルあるネットワークを、2016年3月期には局舎を約140局、伝送路を約22,000キロメートルまでにスリム化する。これによる2010年3月期下期への業績の影響については、減損損失約300億円を含む400億円のコストを見込んでいる。

現在約250局ある局舎、約26,000キロメートルあるネットワークを、2016年3月期には局舎を約140局、伝送路を約22,000キロメートルまでにスリム化する

23日に東京都千代田区のKDDI大手町ビルで開かれた決算発表会において、小野寺正社長兼会長は、2010年3月期通期について、「通期では(前期比で)減収増益になる」との見通しを示した上で、営業収益3兆4,800億円、営業利益4,700億円の従来予想を据え置いた。

端末出荷台数については、「努力すればなんとかやっていけるのではないか」と話し、1,000万台との当初予想を据え置いた。

UQコミュニケーションズが展開する高速モバイル通信「UQ WiMAX」の契約数が2万件にとどまっていることに関しては、「エリアの整備が当初の計画より遅れている」ことが原因とし、この結果、「現状ではエリアが不十分なため、(ユーザーが)使いたいところで使えない」状況に陥っていると指摘した。その上で、「(UQの最大株主として)契約数そのものに満足しているわけではない」とし、「早くエリアを整備し、使いたい所で使えるのが最も重要」と述べた。

また、携帯端末のプラットフォームに関する記者の質問に対しては、LTEやAndroid端末導入に触れながら、「携帯のプラットフォームが何か一つなることはないと思うが、主流のプラットフォームを何にするかは慎重に検討している」と述べた。

携帯端末の2009年の秋冬モデルが昨年度と同等のモデルが多いとの記者からの指摘には、「12メガのカメラや連写機能など、スペックアップはいろいろやっており、今後も継続してやっていく。機能は(多くは)いらないというユーザーからハイエンドのユーザーまでいろんなユーザーがいる中で、ミドルレンジのユーザーが圧倒的に多いので、ユーザーの要望に沿った形で(端末を)提供していく」と述べた。

小野寺氏が会長を務める電気通信事業者協会(TCA)が発表している携帯電話の純増数に関する統計の取り方についての質問には、「統計を利用している人の使い方によるのではないか。もっといい方法があれば提案してほしい」と見直す可能性について含みを持たせていた。