ソニーは10月8日、VAIO2009年秋モデルのラインナップを刷新。Windows 7を搭載したノートPC9シリーズ、ボードPC2シリーズを発表した。新VAIO発表会では、新たにラインナップに追加された「VAIO X」シリーズ、写真や音楽を管理するメディアプレイヤー「Media Gallery」を紹介した。

VAIOのラインアップに新たに追加された「VAIO Xシリーズ」。薄型軽量なボディに必要十分な機能を備えている

会場ではまず、ソニーマーケティング 執行役員 ITビジネス担当 松原昭博氏が新製品の戦略について説明した。

新製品の戦略について説明するソニーマーケティング 執行役員 ITビジネス担当 松原昭博氏

国内量販店の販売台数のグラフから、販売台数は前年を超えながら金額は前年を下回る、非常に厳しい状況であることを示していることを説明。5月のエコポイントの導入は家電業界を活性化させたが、PC業界には逆風となったと語った。その中でソニーは、業界の活性化のために、モバイル領域に的を当てて、市場の創造と成長を図っていくとした。

国内PCは出荷台数は前年を超えているものの、金額ベースでは前年割れで推移している

1月にはCPUにIntel Atomを搭載しつつもNetbookとは一線を画した「VAIO P」シリーズを発表し、PC需要を喚起。8月には、Netbook市場のニーズを分析し、デザイン性や液晶の解像度にこだわった「VAIO W」シリーズを発売した。そして、この2009年秋モデルにおいて、新モバイルPCを登場させる。それが、年末商戦の最大の話題となるWindows 7の発売に合わせて、圧倒的なモビリティ性能の実現により新規市場を創造する新PC「VAIO X」シリーズである。同時に、画像や音楽などの数多くのコンテンツの中からユーザーの嗜好にあわせて表示できるソフトウェア「Media Gallery」を投入するとした。

「VAIO X」シリーズは、わずか13.9mの薄さ、持ち運びに最適な最軽量時で約655gという軽さ、最大で約20.5時間駆動を実現したロングバッテリーを実現したほか、外部ディスプレイ端子など必要不可欠な端子を装備し、モビリティー性を追求しつつもユーザービリティーを犠牲にしないというポリシーのもと開発を進めたとのこと。1月に登場した「VAIO P」シリーズではコンシューマ用途を考え、8型ウルトラワイド液晶、ポケットスタイルなど、新しい提案を行った。「VAIO X」シリーズでは、大きな画面サイズにより、コンシューマだけでなくビジネス用途でも使える究極のモバイルを作り上げた。 また、「VAIO L」シリーズ、「VAIO C」シリーズに搭載される「Media Gallery」を紹介。各個人のPCの中には、数多くの音楽、写真、動画データが記録されているが、データがあまりにも多いため見直す機会はとても少ない。しかし、「Media Gallery」なら、ユーザーの好みにあわせて、この数多いデータの中から必要と思われるデータをピックアップしてくれる。まさに気が付くメディアプレイヤーが「Media Gallery」となっているのだ。

「VAIO X」は、モバイル市場で「VAIO P」がカバーできなかったビジネス分野でも利用できる

「VAIO C」「VAIO L」には「Media Gallery」を一発起動できるVAIOボタンを装備している

ソニーでは、このような新しいハードウェアとソフトウェアで市場を活性化していきたいと語った。 

続いて、ソニー VAIO事業部 副本部長 赤羽良介氏が「VAIO X」シリーズと「Media Gallery」の概要を紹介した。

「VAIO X」と「Media Gallery」を紹介するソニー VAIO事業部 副本部長 赤羽良介氏

VAIOは、プレミアム製品と普及価格帯製品の両方の強化を目指している。手軽さや親しみやすさを持ちながら、VAIOらしいデザイン、バリエーションを提供し、普及価格帯でもVAIOブランドを拡大する戦略だ。その一方で、「VAIO X」シリーズのような、まさにソニーらしさ、VAIOらしさを感じさせるようなPCを登場させることで、VAIOのブランド価値を向上させるとした。

「VAIO X」シリーズのコンセプトは、"余分はいらない、十分がほしい"。薄くしても使い勝手は犠牲にしないという「VAIO X」プロジェクトを担当したメンバーの信念のもと、オフィスワークにも快適な11.1インチの液晶を採用し、プレゼンテーションに必要となるVGA端子や、ネットワーク端子をも内蔵している。

ここで、赤羽氏は開発秘話を紹介。「VAIO X」シリーズは、販売担当者や企画担当のラインナップ戦略からでてきたマシンではなく、設計とスタッフ部門の若者有志からの企画なのだ。自分達が本当に使いたいものはこういうマシンだと、赤羽氏のもとにモックアップを持ってきたという。当時はビジネス戦略上から不必要とされていたが、モックを見た赤羽氏と、どうしてもやりたいというスタッフの熱意から、開発がスタートした。現在「VAIO X」を試用しているという赤羽氏は、この商品を世に送ることができてよかった、この商品はまさにソニーのDNAが詰まっている商品だ、とした。

VAIOブランドの裾野を拡大しながら価値向上を目指す戦略を推進している

「VAIO X」シリーズは、圧倒的な薄さと軽さ、ロングバッテリーライフを実現するために、CPUにIntel Atom Zシリーズを採用する。Atomではパフォーマンスを気にする人がいるかもしれないが、Atom Z550は2GHzを超える高速なCPUとなっているため性能は十分であり、ロングバッテリーライフに寄与する。システムのパフォーマンスを決める重要なファクターとして、OSに軽快なWindows 7を、ストレージは標準で64GB、オプションで256GBのSSDを搭載。これにより仕事で使えるパフォーマンスとなった。

十分なパフォーマンスを発揮できるように、OSは軽快なWindows 7、CPUは高速なAtom Z550、ストレージはSSDを搭載

軽量で頑丈なボディを実現するために、アルミニウムパームレストなどを採用している

さらに3Gの通信モジュールを内蔵。国内ではNTTドコモのFOMA HIGH-SPEEDが、海外でもパートナーシップを結んだ通信事業者が利用できる。また、直販サイト「ソニースタイル」から購入可能なVAIOオーナーメードモデルでは、WiMAXが選択可能。モバイルに最適な高速なワイヤレス通信に対応している。

「VAIO X」シリーズは薄く軽量なだけでなく、堅牢性について厳しい品質試験をクリアしている。堅牢性は、常に持ち運んで外出先でも安心して利用するためには必要なことだ。このような高品質を実現するため、構造面でも工夫し、パームレストは1枚板のアルミニウムで制作。エッジの部分はリジッドアークデザインを採用し、シャープなデザインにするだけでなく、開けやすく、丈夫な筐体に仕上がっている。天板はハイブリッドカーボンを使用。4層のカーボンの間に特殊なプラスチックフィルムを挟むことで強度を向上させた。

設計、製造、サプライチェーンの拠点であるソニーEMCS長野テックで生産。製造や品質保証のメンバーが設計の早い段階から参加し、高度な物づくりと高い品質を実現した。このような付加価値の高い商品を立ち上げて、得たノウハウを普及価格帯の製品に展開する体制を構築しているとした。

薄さについては、限界に近づいているとしながらも努力は続けるとした。ただし、本体自体は薄くできそうだが、本体サイドに配置している端子のサイズが変えられない限り、これ以上の薄さの実現は難しそうではあるが。

モバイルマシンについては、もっとさまざまなニーズが存在すると考えていて、ユーザーの利用シーンにあわせて、さらに選べるようにしていきたいとした。

引き続き、オリジナルソフトウェア「Media Gallery」を紹介した。このソフトウェアはひとことでいうと、ユーザーに新たな発見をもたらしてくれるメディアプレイヤーだとした。楽しくなるようなユーザーインタフェースを採用しているほか、Windows 7のタッチ機能と組み合わせることで、さらに使いやすくなる。

ホーム画面には「Media Gallery」が選んだ画像などが表示される。たとえば、ちょうど1年前の今日の日付に撮影した写真、最近よく聞いている音楽や、関連したYouTubeのサムネイルの表示ができる。ジャンル別に音楽を探すことも可能だ。PC内だけでなくインターネット上のコンテンツも探せる。

「Media Gallery」はあるコンテンツを選ぶと、それに関連するコンテンツを集めてくれる。さらに、行動履歴から、好みにあったコンテンツを自動的に探してくれる

この機能は、音の解析やユーザーの嗜好の解析といったソニーのさまざまな解析エンジンなどで実現している。このような機能によって、ユーザーの好みに合わせたコンテンツをカンタンに見つけられるようにしたのだ。インターネット上に多くのコンテンツがあるが、その中から必要なものをスマートに見つけ出すことに価値があり、「Media Gallery」はそのためのツール第1弾となるとした。

「Media Gallery」は「VAIO C」「VAIO L」シリーズにプリンストールされて提供される。このほかの新機種、既存ユーザーへの提供はいまのところ予定がない。今後、ユーザーのニーズが高ければ検討するとのこと。実際は、かなり高機能なソフトウェアのため、モバイルPCでよく用いられているAtomで快適に動くとは限らない。Atomで動かすにはソフトウェアの改善も視野にいれなければならないとのことだった。

「VAIO X」の分解モデル。小型ファンを搭載し、メモリーは基盤に直づけ。ソニースタイルモデルでは、バッテリーは2セル、4セル(写真)、8セルから選べる

ディスプレイの分解モデル。上部右側が3G、左が無線LANのアンテナとなっている

カラフルなカラーリングで並べられていた「VAIO C」シリーズ

会場内の「VAIO L」では、小型ゲーム機「PSP go」との連携や、オリジナルメディアプレイヤー「Media Gallery」のデモが行われた