日産ブースのキーワードは「ゼロ・エミッション」。すでに来年に電気自動車であるリーフを発売することを発表しているが、その派生車種というべきEVのコンセプトカーがランドグライダー。もちろんワールドプレミアだ。
注目のランドグライダー
スタイルを見てもらうとわかるが、じつにコンパクトでナロー。それものはずでなんとバイクと同じように前後に人が座る、タンデムのシートレイアウトなのだ。日産ではランドグライダーをゼロ・エミッションが実現する都市型モビリティの新提案だとしている。機動性と環境性能に優れたEVというわけだが、このクルマの最大の魅力は走りだ。EVを推進している日産は、シティコミューターであってもドライビングの楽しさを追求している。その形がバイクのようにボディを傾けてコーナリングする走りだ。コーナリング時の遠心力に打ち勝つためにボディを傾けるというのはある意味理想的。乗用車でもアクティブサスなどはこうした効果も狙ったものだが、ボディそのものを傾けてしまうというのがランドグライダーの特徴。もちろんリーフ譲りのリチウムイオンバッテリーやモーターでリヤタイヤを駆動する。モーター位置がリヤにあるためRRということになるらしい。
ボディを傾けてコーナリングするため、サスペンション全体が動くようになっているのがとてもユニーク。そのためランドグライダーのフェンダーもボディの傾きに合わせて可動するようになっている。このような複雑な動きをするとリヤタイヤの駆動方法が気になるが、やはりドライブシャフトを使っていない。なんとここもバイクと同じチェーンドライブとなっている。リヤタイヤ左右がスイングアームのようになっているわけで、これならば自由にボディを傾けられるわけだ。
全長は3100mm、全幅1100mm、全高1415mm、ホイールベース2180mmというのが現在明らかにされているスペック。モーター出力や航続距離などは公表されていないが、シティコミューター的なところを狙っているようなので、重いバッテリーをたくさん積んではいないだろう。そのため航続距離はそれほど長くはないはずだ。動画を見てもらうとスムーズにコーナリングしているのがよくわかるが、このとき試乗していた女性ドライバー(インテリアカラーの開発などが本職)に聞くと、最初に乗った時も違和感なく簡単にドライブできたという。聞くと彼女は普段からバイクに乗っているそうで、コーナリングでのリーンウイズには慣れているようだ。ステアリングは航空機のようなタイプで、左右の縦型のグリップを握って操作する。アクセルやブレーキは通常と同じで、ペダルを足で操作する。将来EVが普及すると、次のフェーズは確実にドライビングの楽しさの追求。それを日産はバイクのような操縦で、EVの新感覚を提案している。市販されればゼロ・エミッションという環境性能だけではなく、走りの楽しさでも大いに注目を浴びるはずだ。
ついに日産も量産ハイブリッドカーを投入
日産には苦い経験がある。トヨタと同時期にハイブリッドカーを開発し、さらにはハイパーミニのEVでの実証実験まで行っていたことがある。経営不振に陥る前までの日産は、先進技術でトヨタや海外メーカーと遜色ない技術力を持っていた。ところが経営不振でそれまでの技術開発は一時中断。ティーノハイブリッドはリチウムイオンバッテリーを搭載する先進的なハイブリッドカーだったが、100台限定での生産となった。開発陣に直前まで知らさなかった限定車としての発売が決まったのは、当時の東京モーターショーのときだった。あれからずいぶんと月日が流れたが、ついに日産ハイブリッドカーの全貌が明らかになった。搭載車は以前から発表されていた新型フーガだ。北米ではフーガは、プレミアムセダンとして人気が高いインフィニティMとして発売されている。注目はそのメカニズムだ。1モーター、2クラッチのFRのレイアウトを取っている。日産が上級車に展開する縦置きエンジンのFR車に幅広く展開できるハイブリッドシステムということができる。まず搭載するのはフーガだが、FRプラットフォームを使うクルマには多少手直しするだけで搭載可能なハイブリッドシステムだ。
ハイブリッドフーガの発売は正式に2010年の秋とアナウンスされた。3.5LのV6エンジンにモーターを組み合わせるというパッケージング。クラッチはエンジン直後とミッションの後に搭載され、エンジンを切り離してモータードライブであるEV走行ができるようにしている。回生時もエンジン直後のクラッチを切ることで高効率の回生ができるようになっているわけだ。パラレルハイブリッドというわけで、バッテリーはハイブリッド用のリチウムイオンを採用するとしている。EVのリーフと違うのは、回生など短時間に大電流を充放電しやすいリチウムイオンバッテリーにしているようだ。現在開発中だがもっとも苦労しているのはクラッチの制御だという。燃費を向上させるため、走行中もアクセルオフなどでは積極的にエンジンを制止させる制御にしているというが、エンジンを再始動させたときエンジン直後のクラッチを無造作につなぐとショックが出てしまう。プレミアムサルーンに搭載するシステムだけに、この辺のショックやドライバーが感じ取れるトルク変動をなくすことが難しいという。まだこうしたフィール面でのチューニングはあるが、2010年秋の発売のスケジュールは問題なく、順調に開発を続けているという。
カザーナが東京モーターショーに登場する意味は
コンセプトカーのようなこのクルマは、今年3月のジュネーブショーですでに発表されているカザーナ。5ドアの小型クロスオーバーカーだ。全長4060mm、全幅1780mm、全高1570mm、ホイールベース2530mmというサイズから、デュアリスやエクストレイルよりも小さなクルマであることがわかる。じつはすでにアナウンスされているが、イギリス工場で生産することが決定しているのだ。改めて東京モーターショーに展示する意味は、日本での発売を示唆しているのではないだろうか。このデザインのままで量産化するのは難しいが、近未来的なデザインのクロスオーバーカーが市販されることは確実。スリットグラスルーフやフロントのヘッドライトのように見えるフォグランプが実現するかが見ものだ。ヘッドライトはフェンダー上にマウントされている小型のもので、こうした装備や設計が各国の保安基準をクリアできるか興味がある。もちろんデザインはクリアできる可能性があるものだが、生産性やコストなどを含めてこのスタイルをどこまで現実化できるかが、カザーナの成功を左右する。
米仕様のリーフとルークス
リーフはすでに発表し、来年には市販されるクルマだが、今回の東京モーターショーでは北米仕様が初めて公開される。もちろん左ハンドルで、ヘッドライト横のリフレクターやディフューザーに組み込まれたバックフォグランプ、ルームミラー、リヤヘッドレストなどが日本仕様と異なっている点だ。
ルークスはスズキ・パレットのOEM車。エルグランドやセレナで人気のハイウエイスターもルークスに設定される。もちろん軽自動車初のハイウエイスターの誕生だ。日産とジヤトコが共同開発し、スズキもパレットに搭載した副変速機付きCVTも搭載している。次期マーチはタイに生産が移管されるが、これに搭載されるCVTを協力関係にあるスズキに先行搭載させたというわけだ。
NV200バネットをベースにしたタクシーも展示される。これはユニバーサルデザインを追求したタクシーで、車イスの人でも高齢者でも安心して乗車できるように工夫されている。過疎地はバスなどの交通機関が崩壊しているため、バスとタクシーの間を埋める公共交通機関としての役目も狙ったタクシー。架装部分が少ないため低コストで生産できるというのもメリット。従来の特装車と比べると価格を安くできるため、過疎地の自治体でも導入しやすくなる。地方だけではなく、都会でも乗降が楽で旅行時などはスーツケースも楽に持ち込めるこうしたタクシーは、人気を集めるはずだ。