レノボは、2008年12月より、F1のボーダフォン・マクラーレン・メルセデスとパートナー関係を結んでいる。以来、同提携に基づき、レノボのノートブックPCとデスクトップPCが、レーストラックおよびチーム本社のミッションクリティカルなコンピュータ・システム向けとして提供されている。

ボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのF1マシン (※写真はレノボ提供)

マクラーレンは昨季のチャンピオンチームであり、今季も、序盤こそ出遅れたものの、シーズン後半にかけては調子を上げてきている。そして2009年10月4日、三重県の鈴鹿サーキットでF1日本グランプリが開催された。結果は、1位がレッドブル・レーシングのセバスチャン・ベッテル、2位がパナソニック・トヨタ・レーシングのヤルノ・トゥルーリ、3位がボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのルイス・ハミルトンというもの。

当日はあいにくの雨模様も、熱心なファンが訪れていた

レノボ・ジャパンは、同グランプリの開幕直前、各チームがテスト走行などを行っている鈴鹿サーキットにプレスを招き、レーストラックにてマクラーレンが実際に運用中の同社コンピュータシステムを披露した。今回は、その模様をレポートしたい。

2台のマシンが調整中のピットの中では、多くのエンジニアが忙しそうに作業しており、その手元にはレノボのThinkPad。筆者が見た感じだと、ThinkPad T400やThinkPad X301を使っているエンジニアが多い。テスト走行の真っ只中という状況なので、マシンの細かな設定や走行のチェックなどに利用されているようだ。マクラーレンのドライバーであるルイス・ハミルトンやヘイキ・コバライエンも、ThinkPadのモニタを覗き込みながらスタッフと意見を交換していた。

なお、フォーミュラーカー1台につき、20人程度のエンジニアが担当おり、ピット内の2台であわせて40人程度のエンジニアが作業していることになるという。1人で複数のThinkPadを使うエンジニアもいるそうで、ピット全体で運用されているThinkPadの総数はおよそ80台にものぼるとされた。

ピット内ではThinkPadを携えたエンジニアがせわしなく作業中 (※写真はレノボ提供)

ハミルトンもThinkPadを覗き込みながら調整中 (※写真はレノボ提供)

ちなみに、今回のイベントには、レノボ・ジャパンの取締役副社長で、"ThinkPadの父"とも言われる内藤在正氏も同席していたのだが、同氏が、ハミルトン担当のチーフエンジニアにThinkPadの評価を聞いてみたところ、「私はT400と一緒に世界中を回っている。これは最高のマシン」という感想が返ってきていた。提携があるだけに、マクラーレンがThinkPadを使っているのは当然なのだが、実は今回、他のチームのピットでもThinkPadを結構な頻度で見かけた。プロ向けコンピュータとしての評価が高いのは間違いなさそうだ。

ピットの奥にはちょっと大掛かりなマシンルームも組んであった。大量のThinkVisionモニタを用意。様々な走行データをリアルタイムで確認できるようになっている (※写真はレノボ提供)

さて、レノボのコンピュータが導入されているのは、上記のようなレーストラックの中だけではない。前述したように、チーム本社でも導入進んでいる。マクラーレンはPCのインフラストラクチャを全てレノボに総入れ替えする方針だそうだが、まずはミッションクリティカル部分からということで、本社のCAD/設計エンジニアのために、現在、123台のThinkStation S20が稼動しているという。また、エンジニアの自宅作業なども考慮し、80台のThinkPad W500、ほか、200台のThinkVisionモニタもあわせて導入済みという説明があった。

マクラーレンによれば、当初、以前までの他社ワークステーションからの切り替えで、2.5%ほどの生産性向上を試算していたそうだが、実際に運用を始めてみたところ、「概算値のおよそ10倍の生産性向上」が実現できたそうだ。また、コンピュータ・システムの省電力性も向上したそうで、コスト削減の意味でもメリットがあったという。さらに、システムの切り替えプロセスそのものも、満足できる短いスケジュールで、非常にスムーズに進んだそうだ。

マクラーレンの現在までのレース結果を見ると、昨季の終盤までチャンピオン争いが影響し、今季の新マシンの開発が遅れた……等が要因として言われているが、前半戦はあまり結果がふるわなかった。しかし後半は徐々に復調し、第14戦のシンガポールGPではハミルトンが優勝し、今回の第15戦の日本GPでも3位に食い込んでいる。

この追い上げには、コンピュータ・システムの切り替えによる開発スピードの向上も少なからず影響している面があるだろう。ドライバーのコバライエンは、「パートナー(レノボ)とチームスタッフに助けられて、後半戦はペース上げていくことができた」とコメントしている。マクラーレンによれば、開幕のオーストラリアGPのころと比べると、日本GPで走るマシンは、まったく別物と言っていいほど新しい設計になっているそうだ。次の第16戦のブラジルGPでは、さらにパフォーマンスアップしたマクラーレンを見ることができるだろう。