Xilinxの日本の法人であるザイリンクスは9月17日、都内にて同社FPGAを使用するカスタマや開発者、代理店などに向けたイベント「Xilinx Developer Conferrence 2009 ~最先端FPGAでASIC/ASSPを凌駕!!~」を開催した。

ザイリンクスの代表取締役社長のSam Rogan氏

同イベントの冒頭、ザイリンクスの代表取締役社長のSam Rogan氏が挨拶を行い、現状の半導体市場を取り巻く環境の説明を行った。半導体市場も2008年秋から始まった世界同時不況のあおりを受け、市場の冷え込みが生じたが、各社の決算の様子や米SIA(Semiconductor Industry Association)のレポートでは、2009年2月をボトムに市場は緩やかな回復期に入ったと見られ、現在は市場全体では前年同期比で17%減程度まで戻ってきているという。

「そうした厳しい状況にあってXilinxの売上額は2008会計年度と2009会計年度を比較すると約1%程度の下落で押しとどまった。これはこの不況でシステムメーカー側の考え方が変わったためと見ている」(同)とRogan氏は説明する。そしてそれは、ASIC/ASSPとFPGAの関係に変化が生じたことを意味すると指摘する。

ハイテク産業にかかわる企業を国籍別にまとめ、利益の推移を見ると、日本は90年代ころを皮切りに右肩下がりとなっている。一方、中国は逆に右肩上がりに成長してきているという。「80年代、90年代まではほとんどの民生機器を日本が牽引してきていた。しかし、今はそうではないことが影響している」(同)とし、その理由として半導体の微細化に伴うコストの増大がポイントとなっているとする。

「かつて、0.25μmや0.35μmというプロセスの時代、デバイス1つあたりの開発コストは1000万円程度で済んでいた。そのため、多種多様なデバイスを開発し、その中からいくつものヒットが生み出されるという方式が出来上がった。しかし、65nm、45nmとプロセスが微細化した現在、開発コストは数億、場合によっては数十億円規模となったため、複数のデバイスを開発する余裕がなくなった。結果的に、失敗ができなくなり、上手く開発できたとしても、ヒットの数も少なくなってしまうという結果になっている」(同)と指摘する。確かに、ASICの量産コストはその生産規模に応じて下げることができ、価格競争力を出すことが可能だが、開発(NRE)コストまで勘案すれば、相当な負担がのしかかることとなる。

しかも日本には民生から航空/宇宙、産業機器、HPCなどコンピュータが関わるすべての市場が存在するため、それぞれに応じたデバイスを提供しようとすると、その負担は相応のものとなってしまう。

「ASICの開発コストの高騰、ASSPの競合差別化の難しさ、開発期間の短縮という経済性が追求されているほか、鉛フリーや省エネルギーの実現、3Rへの対応といった環境配慮、互換性の向上によるエンジニア数の減少への対応といった課題が半導体産業には突きつけられているが、こうした変革への挑戦に向けた方策が必要となる」(同)と指摘。

そのため、「FPGAという共通のハードウェアを活用することで、開発者はアプリケーションに応じたIPを搭載するだけで、それぞれの市場に対応したシステムを構築することができる。極端な話、基板は同じで、その上で動くアプリを変えるだけで対応が可能となるわけで、開発コストや製造コストなどでのコストメリットを出しやすくなる」(同)と、FPGAが答えの1つになるのではないかとし、「1年前に比べて半導体の市場には大きな変化が生じている。この動きに対して、システムとしていかに付加価値を高めながら、トータルコストの低減を実現するか、Xilinxがその手助けをしていければ」(同)とFPGAがより多くの分野で適用されるような取り組みを行っていくとした。