映画やドラマの演出なら、テーブルをひっくり返したり、家具を倒したりなんていうのは地味な部類だが、実生活では皿を割っただけでも大騒ぎだ。しかし、人間が感じられる快感の1つに「破壊の爽快感」があるのは間違いない。とはいえ、非常に体験しにくい種類の快感であることも事実。今回レビューするスパイクからリリースされた『Red Faction: Guerrilla (レッドファクション:ゲリラ)』は、このタイプの快感を表現するのに特化したゲームとなっている。

スパイクから8月6日にリリースされたPS3/Xbox 360『Red Faction: Guerrilla』

「レッドファクション」シリーズとは?

今作『Red Faction: Guerrilla (レッドファクション:ゲリラ)』(以下、RFG)は、「レッドファクション3」とも称される作品だ。シリーズ三作目と言うことだが、今作は前2作と世界観が一緒というだけで、ストーリー展開は独立しているので、今作からプレイしてもまったく問題がない。そのためか今作では『3』というナンバリングが行われていない。

『RFG』の開発元は米Volition社。同社はPC用3Dゲーム黎明期の名作『Descent』を開発したParallax Entertainmentが前身であり、今は300人規模の社員を抱えるTHQ傘下では最大手のスタジオとなっている。シリーズ3作目とはいえ、日本での知名度はあまり高くないと思われるので、この「レッドファクション」シリーズを簡単に振り返っておこう。

今作の舞台はふたたび火星に。そしてテーマは「ゲリラ戦」と「破壊」に!

一作目の『レッドファクション(RED FACTION)』(2001)はPS2用に発売された作品だった。21世紀後半、火星を惑星改造(テラフォーミング)して人が住める星にした人類は、新天地・火星に向けて移住を進めることになる。ただ、この火星開発に大きく貢献した「アルター・コーポレーション」が権力を持つことになり、いつのまにか火星はアルター・コーポレーションによる独裁政治が敷かれるようになってしまう。これに反発した入植者たちは反乱軍を組織し、自らの自由を勝ち取るためにアルター・コーポレーションに独立戦争を挑む。

二作目の『レッドファクションII(RED FACTION II』(2002)もPS2用タイトルで、舞台は地球へと変わり、地球防衛軍(EDF:EARTH DEFENCE FORCE)のスーパーソルジャーたちとテロ組織との戦いを描いた外伝として登場した。PS2時代から「レッドファクション」シリーズは、地形や壁が破壊できる独自の破壊システム「GEO-MOD」エンジンの上に成り立っており、その「破壊のカタルシス」が前面に押し出されていたゲームだった。

いわば「3」となる『RFG』では、ゲーム起動時の画面に「GEO-MODE2.0」のロゴが見て取れることからもわかるように、この「GEO-MOD」システムが「2.0」へとバージョンアップしており、さらに極まった破壊システムを実現している。そう、『RFG』が世界中のゲームファンから期待されているのは、この「GEO-MODE」システムによる今世代ゲームでもっとも先進的なノンリニア破壊システムの部分なのだ。

かつては救世主。しかし、今や新たな支配層となった「EDF」

なお、三作目の今作では、舞台はふたたび火星に戻るが、アルター・コーポレーションとの戦いから50年が過ぎた22世紀の世界となっている。「EDF」は、火星入植者たちをアルター・コーポレーションの圧政から救ったが、ふたたび特定企業の独裁が起こらないようにと、今度は「EDF」の集中管理政策が施行され、結果的に火星は「EDF」の支配下となってしまう。今作の主人公アレック・メイソンは爆破技師で、火星に先行入植していた兄のダンに導かれて、火星復興の仕事を請け負うために火星を訪れる。

主人公のアレック。爆破技師。ある意味リアル・ボンバーマン

実は兄ダンは火星解放を目的としたゲリラ組織「レッドファクション」のメンバーであり、アレックの爆破技師の能力がほしくて火星に呼び寄せたのであった。自分の爆破技術の能力をテロリズムまがいに活用されることをよく思わないアレックは、たとえ兄の頼みであっても協力を拒否する。しかし、ある日、「EDF」のゲリラ狩りで、兄ダンが目前で処刑され、さらにアレック自身もゲリラであると認定されて追われる身となってしまってからは、否が応にも「レッドファクション」に参加せざるをえない状況となる。

ゲリラと認定されてしまうアレック

火星はふたたび争乱の世界へ


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